きのうは、このブログでも1月にご案内のエコハウス講演会が札幌で開催。
一昨年訪問見学した宮古島エコハウスの設計者・伊志嶺敏子さんが来札。
旧交を温め、じっくりと設計思想をうかがうことができました。
沖縄は省エネ基準では8地域で、蒸暑地域とされている。
北海道とは気候性・歴史風土性がまったく異なっている。
独立したての頃に吉村順三さんの名作住宅と近似したプランを
宮古島の建て主さんに提案したところ、
まったく受け入れられなかったところから解題されていました。
氏が気付いたのが、下の図のような集落調査での「南面開放型間取り」という
沖縄の人のDNAにまで深く刻み込まれてきたような建築常識。
沖縄の風土性としての住宅への典型的意識が反映されている。
地域の住宅を代表する「中村家住宅」を見てみると、
街から住居を区切る塀やフクギの植え込みがあり門があって、その先に
ヒンプンと呼ばれる自立壁があり、それを回り込んで「中庭」空間がある。
沖縄ではいわゆる住まいというのは、この塀から内側のすべてを含む概念。
そのなかに個別棟が場合によって複数存在するけれど、
このように区切られる全空間が「住宅」という認識だと知られるのですね。
たしかに年間の気温推移を見ればこの1−2月の最寒期ですら、
曇天でも20度程度の最高気温であり、陽射しが出れば26度程度の
気温上昇が見られる(伊志嶺さん談)という外気温状況のなかでは、
人間居住環境において、ウチとソトの概念でもバッファー的な
中間領域の占める割合が大きくなってくるのは自然でしょう。
外界との熱環境制御で、建築と衣類というものの役割の差が接近してくる。
この「南面開放型間取り」とその先に広がる中庭は、
沖縄のみなさんにとってあらゆる生活シーンの背景ステージとして、
生活伝統に深く根ざしているのだろうと想像できる。
さらに街並みという視点では、写真の琉球石灰石がまことに特徴的。
この石は生物化石であり組成分析でもまことに不定形の組織構造を
持っているけれど、さらにこうした塀として形成されても、
そのカタチは直線的ではなく、曲がりくねり「生物」的な道になっている。
これらが台風に対してその威力を「いなす」工夫であろうことも
生活実感としても理解されるし、事実その通りなのだろうだと思います。
そのように丹念に地域性風土性の探求・最適化の姿勢を持って取り組んできた
そうした仕事ぶりを紹介されていました。
わたしは、沖縄が大好きで
その住宅地景観、住まいのありように強い興味を持ち続けてきました。
ただ、沖縄の設計者とはなかなか対話する機会は持てませんでした。
温熱や人のいごこちに関する手法作法は、またかたちを変えて存在する。
さらに氏の、公営住宅での仕事について、
現地視察時に気付いたけれど、質問対話まではできなかったことについても、
今回お話しすることができてたいへん興味深かった。
それについては、明日以降。
Posted on 2月 15th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅取材&ウラ話
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