日頃から、家の中での「癒やし」について考えることが多い。
住宅のことを考えると、その目的には子育てという人類的なテーマが
そこには根源的にあるのだと思う。
そのテーマ追求の中から、家族関係の創造という人間的な営為が生起し、
家の基本的なテーマとして、癒やしが求められたのだと思う。
そんなことを考えながら、この時期毎年見る大好きな光景がある。
それは夏休みの時期になると、ラジオ体操の場になる北海道神宮境内で
ボランティアのみなさんが、集まる子どもたちのために
神宮の水場のそば、林間のたたずまいのなかで行っている本の読み聞かせ。
なぜか、水場の屋根だけの東屋に向かって読み聞かせの人が立ち、
その光景を多くの子どもたちが集中して聞いている。
朝の爽やかな空気の中で、
想像力を刺激する紙芝居的な絵と、人の声に耳を傾けている。
声の調子の微妙な抑揚を聞き漏らすまいと瞳を輝かせている。
また読み聞かせる人は、慈愛を込めて子どもの心に語りかけていく。
そして背景としての神宮の森、シンプルな切妻の屋根形状。
北国としてはいちばん気温が高く、相対湿度も高いなかで、
独特の「いごこちのいい空間」がそこに現出する。
きっと杉の木立のまっすぐな様子と切妻の屋根の風景が
戸外なんだけれど、なかば家の中のような雰囲気を醸し出している。
読み聞かせの抑揚とともに、ゆれ動く物語の展開に
子どもたちの想像力が自由に羽根を得て、
このいごこちのいい空間に、まるでたゆとうているかのよう。
その光景を見、その場の雰囲気に浸るのが大好きになっています。
どうも、ひとが家に求めている原初的な空気感が
こういった光景の中にあるように思われてなりません。
Posted on 8月 11th, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 日本社会・文化研究
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