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アル中の電気配線工おぢさん

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ってタイトルを書いちゃうと決めつけですね。
事実は、このおぢさんの会社のかたから、そういうように、たぶん冗談交じりとは思うのですが、紹介されたからなんです。
まぁブログなんでそのあたりの真偽の解明まではご容赦いただき、おもしろそうかなぁというノリでご理解ください。
きのう書いたわが事務所の「オール電化」のデザイン表現第2弾です。
で、ご登場いただいたおぢさんは、たいへんな職人技術のまぎれもない継承者。まぁ、写真が出ているから、わかりますよね。要するに、電気配線の専門工なんです。 
ただし、体得している技術が、残念ながら時代にそぐわなくなったのです。
いまは、電気配線というのは、めったなことでは「露出配線」ということは行いません。
インテリア的に邪魔者扱いで、ほとんど壁の中で、必要なところにコンセントボックスや、照明配線として、その一部が現れるくらい。 当然の流れといえましょう。ただ、おぢさんが元気な現役バリバリだったころは、まだ電気をはじめて建物の中に入れるという、初期の電気導入期と同様の「既存建物」への配電工事という需要が存在していたのですね。そういうときには、いかに美しく配線するのか、という「職人芸」が存在していたのですよ。その仕事領域のなかで、このおぢさんは他の追随を許さない方だったということです。
が、いま、そういう需要はついにほぼ消滅。
かれを雇っている会社のなかでも、惜しいけれど腕の振るわせ用がない、戦力になっていたのです。
冗談交じりに「アル中」といって紹介されたのは、そういう背景のなかから出た言葉だったのだと思います。
さて、わたしの事務所建築では、きのうのような「レトロな時代の電気」というデザイン表現を模索していました。でも、外部のデザインで資金も底をついた。まぁ、しょがない、内部での「レトロな時代の電気」表現は、あきらめっか〜 となる寸前だったのです。 そんなときに、電気工事屋さんが、このおぢさんのことを話してくれました。
一気に、プランに灯りがともった!  そうか電気工事か。
そうです、電気の配線も露出にして、むかしの懐かしい配線を美しくみせよう、デザインにしてもらおう、となったのです。そのうえ、電気工事屋さんからは、お金は、その分のアップ分なんかはいりません、といってくれました。 「あのおぢさんに、もいっかい腕を振るわせたい」という会社の方の暖かい心くばりから出たことなんですね。 露出配線の場合は、碍子というセラミック製品が必要になります。 これもほぼ流通していない。それっ、と買い付けてもらいましたが、北海道には在庫がなくて、なんでも横浜の方から取り寄せたとか聞きました。
はじめての工事現場での打合せ。
設計事務所と、電気工事屋さん、わたしの3社打合せに来たおぢさん。
「アル中」などと聞いていたはなしとは、まったく豹変の元気の良さ。なんと工事現場の外部足場を、足取り軽やかに2階にスイスイ上ってきます。 しかも目がキラキラしている!
若い私たちの方が、あぶなっかしいくらい。
あとで聞いたら、現場が近づくにつれむかしの様子を取り戻したんだとか。
露出の配線工事って、時間がかかっても、ひとりで作業するんです。なぜかというと、スイッチとの連絡を計算しながら、仕上がりの美しさ(たわんだりせず、ピンと過不足なく整然と電線が張られる)のには、けっこう複雑な現場的計算が必要であるからなんですね。それと、はじめに決めた配線計画を途中で変更したりしないこと。こうした複雑なおぢさんの頭の中の作業マッピングが、すべて狂っちゃうんだそうです。 でもホントは、1カ所だけ、変更をお願いしました。 おぢさん、親切に「・・大丈夫です!」と言ってくれましたが、よくやってくれたものだと思っています。
時間がかかって、おぢさんに付き添っていてもなにも手出しできない電気工事屋さんのコンビを見ていて、なんともほほえましいなぁ、と思ったりしていました。
電線は、赤と白2種類を用意して、なんとなく電気が入ってくる回路と、出て行く回路、というイメージを表現しましたが、実際はそこまでの厳密性はありません。 しかし、作業が進行していくと、どんどんノリがよくなってきて、当初は壁の中での配線を予定していた場所も、「全部、露出でやってみますから」という申し出をいただいて、結局ほとんどが、美しい碍子による、露出配線となりました。
完成後、多くの北海道電力や東北電力社員のみなさんが来社されましたが、社歴の古いみなさんは一様に、感激の面持ち。 電力社員さんたちは、この露出配線工事が、仕事生活の原点のようなものだったのですね。「いやー、なつかしいなぁ」って、うっとりしたような表情で、見て行かれます。
多くの建築家のみなさんも、この電気配線にいたく感激したようで、「そうか、この手があったか」という言葉が聞かれました。最近はログハウスや、構造素地あらわしの建物も増えてきていますね。そういう建物では、ひとつのデザイン手法に取り入れられるな、ということから、くだんの電気工事屋さんに、「こんど、見積もり欲しいんだけど・・・」という注文もでたりしていました。 なんかこっちもうれしく、誇らしかったです。
いい職人仕事と出会えたら、なんか、気持ちがよくなるものです。
こんな記憶こそが、建物への愛着のよすがになるものなんだなぁって、思い至った次第。
おぢさん、ありがとう。 わが社の電気は元気いっぱい、配線のなかを走り回っていますよ。

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