この時期、日本の住宅企業人はよくドイツやスイスといった
「環境先進国」への見学に行かれることが多い。
それは省エネとか、断熱基準のレベルの高さなどの情報が周知している結果。
ただし、ショーウィンドウとしての新しい住宅では
たしかに高性能な住宅ができつつあるけれど、
圧倒的な量の既存住宅では、劣悪な性能の住宅ばかりというのが現実。
その乖離があまりにも大きいと言われます。
その意味では住宅のおおむね半数が、Q値的に省エネ基準を満たしているという
北海道の現実は、世界的にも特異的な地域であるのかも知れません。
そういうなか、希望を持って、ドイツのエネルギー政策を見ていますが、
やはり理想と現実の間で、大きな問題になってきているようです。
自然エネルギーの利活用ということでは、
誰もがそれを望んでいると思います。
ことばで「再生可能エネルギー」と聞けば、だれもがいいと自然に思う。
しかし、太陽エネルギーをそのままで利用するということは
ことばやイメージで受け取るほどに単純ではない。
それは、国家戦略にもまさに直結する大テーマであって
単純なヒューマニズムで結論を出せる問題ではもちろんない。
日本の住宅でも、太陽エネルギーを熱エネルギーとして「集熱」して
それを土間に送り込んで、家中の暖房を賄おうという
太陽熱利用のソーラーハウスの発想はいろいろに試されてきたけれど、
結局、天気のいい日はいいとしても、そうでない日の暖房装置として
ソーラーシステムを補完する通常の温熱システムが別途必要になる。
まぁまるでパラドックスなんですが、それが現実です。
そうだとすると、システムとしてはムダということになる。
結局300万円くらいする装置は、理念だけのお飾りになる。
その「エネルギー供給の不安定さ」が、どうしても避けられなくて
理念はいいけれど、なかなか一般化にはならなかった。
太陽エネルギーに頼るエネルギー政策は、その実現がきわめて難しい。
ドイツでは、太陽光発電設置に補助金を出して普及に努め
原発を超えるようなレベルに達したけれど、
それ以上に、国民・企業負担の電気料金の値上がりが急激で、
とくに企業経営のコスト上昇から、産業界は悲鳴を上げている。
理念はだれもが納得するけれど、
現実にそれを実現していく困難は計り知れない。
太陽光発電によるパネル需要はやすいコストの中国製が席巻し、
国民全体が、中国経済に奉仕させられているような状況になっている。
そのうえ、こうしたドイツの政策は、電力が足りなくて困ったときに
安定的な電力を融通してくれる原発大国フランスを隣国に持ち
国家関係がきわめて安定しているということも大きい。
フランスの安定的な原発があってはじめてドイツの挑戦はあるといえる。
ひるがえって考えれば、日本を取り巻く環境の中で
日本が電力不足に陥ったとき、どこの国が助けてくれるのだろう。
いや、そもそもそういうインフラ整備ができている国はなかなかないのだ。
そういった現実も見極めなければならない。
そうではあるけれど、これだけの経済大国で
その方向に舵を切ってきていることには、ある希望を持つ。
なんとか、この政策が離陸して成功を収められるかどうか、
世界中が、それこそ固唾をのんで見続けていると思う。
しかし、やはり気になるのは、そうした技術大国・ドイツですら
ここまで自然エネルギー開発に国を挙げて投資してきていて、なお、
有望な自然エネルギー開発に行き当たってこない現実。
言葉で言う理念と、現実にする、出来ると言うことの間には
かくも巨大な溝が存在しているのだと思う。
Posted on 2月 13th, 2014 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
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