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5.25 新住協総会イン室蘭工大

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先週の土曜日には室蘭で新住協の総会が開かれました。
新住協(新木造住宅技術研究協議会)は、室蘭工大の鎌田紀彦教授が
在来木造住宅に対して、建築システム工学の立場から、
現場の施工技術を詳細に解析し、その熱環境の欠陥を科学的に解明したことから
北海道の工務店グループが、実践的手法を求めて結集し始めたことから始まりました。
日本の戦後の木造構法の期間である、いわゆる「在来工法」という概念の特定にも
深く関与されていた東大工学部の出身者として、
その欠陥のスタートが、壁の作られようにあることに注目したことが
始まりだったのだと思います。
「在来工法」という言葉は、わたしたち一般人からすると、
その字句通り、「日本古来の」というイメージを持たせるけれど、
そうではなく、大量に住宅供給をしなければならない、
という社会の要請の中で、国の立場から概念特定が行われた。
柱と梁で架構を構成するけれど、
壁の作り方については、それまでの主流であった「土壁」を省略させ
それを不用にする新建材、プラスターボード張りに置換させることを
ほぼ「標準的工法」として押し出してきた結果できあがった
「新たな工法」だったのです。
その結果、生まれてくる壁のなかの空間については、
そこを空気が流動することで
構造の柱・梁の乾燥を維持させるということで、
むしろ、積極的な役割を与えて「「在来工法」とネーミングしたのです。
建築システム工学の立場からすると、
この壁体内空間について、十分な検討は行われてこなかったことが
明らかであった、というように聞いています。
北海道では、この壁体内に断熱材を充填させて
「断熱」に利用することが始まったけれど、
目に見えない湿度と温度変化によって、さまざまな現象が生起せざるを得なかった。
いわゆる壁体内結露。構造木材の腐朽が結果して、
あたたかくもならず、健康被害をもたらす悲惨な状況になった。
一時期の北海道では木造住宅に絶望して、建設ブームにもなっていたマンションに
多くの道民がなだれ込んでいった。
そういう状況の中で、室蘭工大の鎌田紀彦教授がこのような発表を行ったのですね。

その室蘭工大から
来年3月に鎌田先生は退官を迎えられることになりました。
すでに20年を超える時間が経過したわけですが、
全国から250名を超える会員が、ことしの室蘭工大での総会に集まってきました。
いわば「原点回帰」を新たなスタートの場所に選んだと言うことなのだと思います。
北方で生まれたこの「新在来工法」という技術が
いまや、南方の温暖地・蒸暑地の住宅における夏の熱的ふるまいを解析し、
むしろそうした地域の木造住宅の作り手たちに
大きな広がりを獲得しつつある。
今回の総会では、そうした技術の発信が行われたと思います。
そしてその手法は、研究者である鎌田先生を中心にして
全国の作り手・工務店の現場が最大の実験場になっている。
この強い「現場力」が、新住協の真髄なんだということも、再確認できました。
下町の町工場と並ぶ「地域の製造業」という
日本の持つ技術資産の実体をまざまざと体感した次第です。

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