わたしは高校生時代に新左翼系学生運動に没入経験があります。
その後、その思考の呪縛から逃れられたのは、
政治での「革命」よりも人間の生き方を変革することの方が
はるかに意味がある、政治権力闘争で解決できる事なんてたいしたことはない、
っていうように思うようになったからです。
左翼運動政治って突き詰めれば本質は「ヤツは敵である。敵を殺せ」となる。
<埴谷雄高さん言。もちろん政治的抹殺であって肉体的殺人行為ではない>
なんかおかしい。人を変えるという本来の意味がない。
で、革命っていうことのホントの意味合いを考え始めて、
共産主義を理想とする思想からは中途半端な「改革」とされた
明治維新について深く学び、知るようになっていった。
司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」読書なんかもきっかけでしょうか。
そして「北海道住宅始原期への旅」で掘り起こし体験をいま継続中。
この時期の日本人ってすごい。
なんといってもコトバまで改革している。
まぁ日本は何回もこういう「徹底受容」を歴史的に経験してはいる。
弥生の農耕社会文化、漢字文化、律令国家体制、鉄砲文明など・・・。
あらたな「受容」対象を深く学び、それを血肉化させるプロセスです。
コトバって、自分自身の基盤である脳みそを直接「改革」することになる。
明治のニッポンにとって民族の独立と尊厳を守り近代化するには
巨大な文明総体、西洋文明を徹底解析して咀嚼しなければならなかった。
そういう「自己改革」に明治の先人たちは勇敢に立ち向かった。
そもそも共通語が芝居コトバくらいしかなかったのを、東京山手地区で話された
言語をベースにして創造していった。言文一致が叫ばれたとき、
落語などの口語表現が最先進的で多くの文化人たちが寄席に日参した。
二葉亭四迷が『浮雲』を書く際に三遊亭圓朝の落語口演筆記を参考にしたとされ、
明治の言文一致運動にも大きな影響を及ぼした、まさに日本語の祖。
旺盛な欧米文明受容意欲なのでしょうが、既存の「漢字+かな」を駆使して
論理で構成された科学的な西洋文明全体を翻訳コンニャクしている。
よく言われるけれど「中華人民共和国」という国名のうち、
もともとの「漢字熟語」は「中華」しかなくてあとは、
明治のニッポン文化が開発した和製漢字熟語なんだとか。
かつてのわたしのような子供じみた観念だけの左翼かぶれ人間が陥りやすい
政治的レッテル貼り攻撃みたいな無意味な心性からはるかに隔絶している。
<わたしがとくに好きなのは英語の「tic」という接尾語に「的」という
絶妙の翻訳語を考えたヤツ(笑)、ダジャレ感もあるすごいセンスだなぁと。
現代中国でもこの「的」はものすごく頻用されていますね。>
そういう集団的努力があって東アジア漢字圏は西洋世界をまるごと咀嚼できた。
そう、ひとり日本民族だけでなく、漢字文化圏に深甚な変化をもたらした。
中国社会の孫文さんはそういうことに深く気付いていたのでしょう。
その後戦争で日本が敗戦したことでこのことの文明的意義はやむなく
矮小化されていると思いますが・・・まぁ仕方ない。
やはりその基本は漢字+かなという複雑極まりない言語を駆使してきた
民族的「資産」なんだと思います。
難解な英単語もカタカナ表記すれば、単語として憶えてしまえる。便利。
他のアジアや世界の国の人々から日本社会について
ほとんどの西洋的概念を翻訳し自国語で理解していることに驚かれるという。
日本は漢字かな混淆文という複雑な論理思考言語だけれど、
これがもし「かな」だけになったらどうなるかと考えると怖ろしい。
たぶん論理思考が衰退し単純化に流されやすくなるのではと思います。
<ろんりしこうがすいたいしたんじゅんかにながされる>って、よくわかんない(笑)。
残念ながら隣国・韓国は戦後、日本をディスることを「国体」とした。
積弊一掃・反日のため漢字を廃止しカナ文化であるハングルだけにしたことで、
必ずしも論理的ではない国民社会状況があるのではと懸念されます。
読書率が劇的に低いというように言われたりしている。
しかし、別の見方では隣国の漢字廃止は漢字文化圏世界での
壮大な文化的「社会実験」ともいえるので、行く末がどうなっていくのか、
漢字文化圏の広い意味の同胞として注意深く見ていく必要があるでしょう。
やはり論理的・理性的思考の基盤の言語こそがその国民の最大の財産。
明治の先人たちの苦闘に、深く感謝の気持ちが湧いてくる次第。
<写真はNASAの画像で東アジア地域の「夜景」>
Posted on 12月 4th, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 日本社会・文化研究, 歴史探訪
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