写真は宮城県大崎市内での新築住宅事例から。
県産の杉で柱梁が構成された木質たっぷりの家でしたが、
なんと、写真のように丸太の柱の1本には
ごらんのように縄が巻き上げられていた。
施主さんは大工職の方で、各所でモノづくりマインドが感じられたのですが、
そのなかでもまことに驚かされた光景でした。
実はわが家でも新築した28年前、
1階から3階までの「螺旋階段」を鉄製で作って玄関吹き抜けに立てた。
1階部分は踏み板はなくて、2−3階部分を上下させる機能。
で、1階部分には鉄の柱が剥き出しにあらわれることになる。
他はコンクリートブロックと木質内装なので、
ややハードな印象をあたえることに配慮して、
その鉄柱の印象を緩和させる意味で「縄で巻き上げた」。
このプランを提案された設計者からは
「アルバー・アアルトの作品でこういうのがありまして・・・」
ということだったけれど、
そのときは、アアルトさんって日本趣味が相当強いんだと思った。
アアルトは北欧フィンランドの代表的建築家としてとくに北海道では
なかば神話のような作り手として伝承されてきている。
そういう欧米文化圏の人間にとって、
こういった縄を柱に巻き上げるという営為の根源的動機が不明だと思った。
日本人であれば注連縄文化があり、縄になにか仮託する精神性が存在する。
だから、アアルトは同時代かちょっと前の芸術家たちが
大きく日本文化に傾倒していた流れから、いわば憧憬から
こういった柱への縄被覆を思い至ったのではないかと想像したのです。
最近、絵画の鑑賞をしてきて西洋社会の日本文化への衝撃は
相当のことだったことを知るようになったのですね。
たぶんメンタルとしては日本人の縄というものへの精神性にリスペクトし
インスピレーションとして空間に配置してみたくなったのではないでしょうか。
日本はロシアの軍事力に圧迫され続けてきた北欧人には
日露戦争でロシアを叩き潰した事実から親日の気分があるとも言われます。
そんなことどもが、宮城県北部の住宅取材時に
一気にアタマのなかで再生されていた(笑)。
ここでは柱は県産の野太いスギ材であり、素材同士の馴染みもいい。
ただし、愛ネコたちがじゃれつくらしく、ところどころほころんでもいる。
そういう風情も、しかしなかなか心に伝わる空間の個性になっている。
縄って、視覚に入ってくると「手ざわり感」がハンパなく伝わる。
空間を「引き締める」効果がたしかに強い。
先人たちが神聖空間に対して縄でデザインしてきたのには
強い郷愁感がそこにあるということなのでしょうか?
縄は人類が自然に手を掛けて作り出した原初的素材でもある。
わたしたちには縄文という燦然と輝く文化伝統もある。
作り手のメンタルを持った施主さんと会話が弾んでいました。・・・
Posted on 3月 12th, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
コメントを投稿
「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」
You must be logged in to post a comment.