日本に於いて戸建て住宅、それも諸外国と比較して
圧倒的に多い数の「注文住宅」が建てられているということは、
どういうことをあらわしているのでしょうか?
欧米では一部の高級層を別にして、
ふつう一般的には戸建て住宅とは言っても、圧倒的に「建て売り」が主流。
どうしてこういう違いができてしまったかについては、
いろいろな要因がもちろんあったのでしょう。
戦後の焼け野原からの復興局面でのさまざまな条件が大きかったといわれる。
国にまったくお金がなくて公共住宅を建てることが出来ず、
民間の側でも資本蓄積が十分でなかったので
勢い、住宅は個人が自己努力のみで建てるしかなかった。
なにより材料資源に乏しかったので、当初期間は広さの制限などで、
大量の需要に対応することが優先されざるをえなかった。
その後の戦後経済成長で、住宅持ち家という「夢」は、
地方から都市圏に仕事を求めて大量移動してきた人々への
大きな「勤労意欲」「人生欲望喚起」の象徴になっていった。
そういった過程で、大量生産型の住宅建築市場構造が出来上がり、
戦後すぐには資材市場管理まで行った行政側の「指導」がこの局面ですら
多いに発揮されて、住宅の「大手メーカー」という不思議な業態まで出現した。
当初、いわゆる大手ハウスメーカー出現の「需要」としては、
「ハウス55計画」などに顕著なように規格大量販売が意図されていたけれど、
しかしユーザー動向としては、大都市居住での「夢の実現」要素が大きく反映し、
いわばジャパンドリームとしての「持ち家」、人生ステータス表現に
市場構造・動機欲求の主流が向かっていったのだと思います。
ハウスメーカー住宅がむしろ「高級需要」対応型に転換していったのは、
一時期の「土地価格インフレ」が底流もあってのことだったかも知れない。
家を建てれば土地資産インフレが後押ししてくれるという期待値の高まり。
そうであればと、夢の実現という側面がもっと加速したと思われる。
日本の住宅市場は、こんな大きなトレンドのなかで形成されてきた。
もちろん、基本は企画大量生産型住宅ではあるけれど、
それ以上に「夢の実現」としての欲望刺激・喚起型需要が促されてきた。
そういったなかで、世界的にも珍しい「建築家関与」の戸建て住宅、という
非常に「個性対応消費型」としての戸建て注文住宅要素すら出現した。
住吉の長屋のような、デザイン優先で住み暮らすことに困難なような住宅が
もてはやされるようなユーザーの志向があったことも事実でしょう。
こういったデザイン志向のトレンドはやはり底流に根強くある。
こういった全国的市場構造の中で、しかし北海道はやや独自の進化を見せて
どんなデザイン表現でも基本に地域特性の寒冷対応要因が存在した。
また、きわめて地域特性的であることから「全国ハウスメーカー」の主導性以上に
地域の工務店層の方が、より合理的な対応力を見せて
高断熱高気密という技術をベースにした自由設計住宅市場が生まれ出た。
地域雑誌Replanは基本的にこういった市場背景を出自条件としています。
遅まきながら、大手全国ハウスメーカーの側でも高断熱高気密に
対応した企業もあらわれてきている。
今の局面は、こういった状況が日本の住宅市場構造なのでしょう。
このように発展してきた、高断熱高気密住宅でなおライフスタイル表現的な
家づくりをどのように表現して伝えていくか? このことが
当面する日本の住宅マーケットのテーマになっているのではないか。
その意味で「生き方・暮らし方」への探求ということが、大きな要素になっていく。
写真の住宅は東京から北海道ニセコに移住された方の戸建て住宅ですが、
仕事のIT化の進展と移動の自由の拡大という巨大な現代人の環境変化が、
こういった拡大した「住み暮らす」居住イメージをもたらしてきている。
<ReplanWEBマガジン参照〜ニセコの山々が教えてくれた「ありのままに暮らす」こと>
寒冷という条件が住宅内部ではほぼ完全に克服され、
ITで仕事環境がまったく革新され、移動もワールドワイドで自由が拡大する、
こういった時代の「戸建て住宅」の可能性の拡大もまた現実です。
雑誌制作で培ってきた表現力が多様な暮らし方をとらえ、
それが誌面に豊かに表現され、同時にWEBでリアルタイムで広く拡散される。
現代はステキな生き方の夢が拡大してきている。
「夢の実現」が非常にダイナミックな生き方の発見創造段階に向かってきている。
たいへん大きな住意識変化の時代になってきていると言えるでしょうね。
Posted on 10月 1st, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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