本文へジャンプ

【手業にこだわる左官業者の住宅建築】



先日の住宅見学、アース21旭川例会からのもの。
この住宅は本業が左官業であるプラスター高野さんが建設も手掛けた住宅。
写真のように随所に職人仕事が目立っておりました。

左官業という職種はいまの住宅建築では
だんだんとその領域が狭くなってきている分野だと思います。
外壁仕上げはいまや基本的にはサイディングに替わってきていて、
一世を風靡した「モルタル」仕上げは激減した。
また、室内の壁仕上げも基本はクロス仕上げになっている。
お風呂もほとんどがユニットバスになって、タイル風呂はまったく見られなくなった。
本州西部地域などでは、本格的な竹小舞+土塗り壁という需要が
まだまだ生き残っていますが、現代的な家づくりでは仕事が減っている。
そういった業界全体の風潮の中で、
それも高断熱高気密住宅の最発展地域である北海道旭川地区で
職人仕事を復興すべく、最先端技術のなかで頑張っているのが高野さん。
モルタル壁の復興や、室内仕上げでも塗り壁仕上げが、
旭川でも最先端の高断熱住宅でこそむしろ増えてきている。
そういう職人仕事が生き残っていくために、努力されていると思います。
旧来型の職種として、殻に閉じこもるのではなく、
むしろ積極的に業界進化の過程の先端に参画し、その胎動の中で
自らの事業領域発展の方向を発見しようという姿勢には共感できます。
本州の伝統職人さんたちが既存の技術伝承世界の中だけに閉じこもって
革新を拒む姿勢をとっているなかで、住宅技術革新が必然である寒冷地域で
発展の方向で自分自身も革新しようという姿勢は正しいと思います。

今回の住宅では、写真のような手業をみることができた。
一見、タイル仕上げの上から塗装したのかと思った台所の壁面。
こちらでは、塗り壁に目地を型押しして変化を作ったということ。
どうしても平滑でのっぺらぼうになりやすいクロス仕上げのなかで、
こういう手業の平面が、そこに暮らす人にどのように精神的投影を与えるか、
たとえば微妙な凹凸感が、そこにあたる光を屈折させたり変化をつくることで
繊細な気付きを与えるきっかけになっていくと思う。
同様に、外壁のコーナー部分にも手業でしか作れない陰影、凹凸感を
造作していた。
たぶん長い年月を経ると、そこに時間がいろいろな変化を加える。
その光景が、住み暮らす周辺のひとに独特の印象をもたらす。
さらに、室内の階段コーナー柱にも、手業での土塗りを施している。
たぶん相当に手での接触頻度が高い部位で、
ざらついた質感をもたらすに違いない手ざわりを感じて欲しい、
そんな作り手の思いをそこに感じさせられました。
毎日の接触痕跡が、やがて家族の記憶に潜在していく、
そんなイメージを持った次第です。

コメントを投稿

「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」

You must be logged in to post a comment.