中国で「統計」というのはたいへん把握が難しいとされる。
主要な経済指標統計ですら公式発表では眉唾なのだとか。
首相の李克強が、そういう統計数字を信じないで物流の動きを
最大の把握指数としていると述べたのは有名な話。
中国での木造軸組構法を建築基本法に加える工程に関与した
日本側技術者の講演でも、「公式発表統計というのは、鵜呑みには
出来ないのですが・・・」と前口上を述べられていたところ。
まぁそうはいっても、経済規模概要がわからなければ想像力の持ちようもない。
ということで示されていたのが、上のグラフでした。
出典は日本木材輸出振興協会という日本の組織。
なので、一定の客観的指標であることは信じられるでしょう。
日本の住宅市場も人口比でみると世界的には
新築棟数が多いマーケットだと思いますが、
この数字としては中国はそれからさらに10倍という巨大マーケット。
この図表には住宅に使われる丸太換算での木材資源量もあわせて
表現されていて、こちらはそれこそ李克強さんばりに、
外国との交易についてのことなのでごまかしようがない、
輸出入統計からの数字とされてたので、
大枠として住宅統計指数にはおおむね合致するとされていた。
中国は世界中の木材資源の最大の購入先市場。
ただ、この950万戸はほとんどがRCや鉄骨構造の集合住宅。
よく言われるゴーストタウンのようなマンション群が住宅の実相。
そして、中国は社会主義なので「土地」を自由に売買できない。
土地を確保しうるのは公共しかあり得ない。
住宅を建てている主体というのはそういった各省、各市などということになる。
それらが公的政策と一体となった住宅デベロッパーを兼ねている。
だからゴーストタウンになっていても巨額債務として表面に出てこない。
上海などでは、立地の優れたマンションはステータスになっていて、
3億とも5億とも値付けされているという。
そこそこのふつうのマンションでも億を超えるのがゴロゴロある。
そういった基盤的不動産市場の中に、あらたに「木造軸組」建築が
市場投入される直前にある、ということなのですね。
中国では文革期に木造軸組の技術がほとんど消えてしまったので、
いま、さかんにこの技術解禁を踏まえた動きが始まってきているようです。
若い大工技術者たちが目を輝かせて蝟集しはじめているとのこと。
ごく少数、富裕層向けに2×4構法の木造住宅はあるようですが、
住文化的には中国人的には軸組木造のほうがはるかに
高級な空間性だという文化意識が根強くDNAに刷り込まれていると。
柱や構造材が表側に表れた空間性というのは、
その母国にあたる国なので、意識に強く残っているということなのでしょう。
金物の接合が当面は主流で動いていくでしょうが、
技術交流では日本の伝統工法の仕口などを見て驚愕して興奮していた
という話題提供もあって、むしろ社寺建築的な
そういった空間性へのはるかなリスペクトが大きいのかも知れませんね。
プレカットの工場などが早くも市場参入を仕掛けているようですが、
企業による直接投資ではなかなか市場開拓が難しいようです。
ハウスメーカーのミサワホームは早々に市場撤退のやむなきに至っている。
動き出す中国での「木造軸組」建築、日本からのアプローチは
どのような対応、想像力が有効なのか、試される領域だと思います。
Posted on 6月 21st, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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