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【淡路島の瓦ルーバー 中間領域デザインの可能性】


先日、新建築住宅特集最新4月号について触れました。
2年前の経緯があったので、注目して読み進めていたのですが、
どうも今回はギラギラとした部分が感じられなかった。
前回は挑発的な部分が感じられたのですが、やや静かな印象。
またこれまでは気付かなかったけれど、建築詳細に
Ua値表示が見られる点は、わかりやすい建築の共通言語化努力ですね。
やはりあるレベルは確保した上での特殊解的デザインが論に足る。

全体を見て、寒冷地サイドの住宅は常識的な内容だと思ったのですが、
やはり温暖地域の建築がどうなっていくのかが気に掛かるところ。
その意味では表紙にもなっていた末光弘和氏の淡路島の住宅が特徴的。
Ua値が0,42とあるので、ダブルスキン内側の本体は了解可能な範囲。
この家の特徴としては、外皮側の特注瓦のデザインと環境的効用でしょう。
「地球の声」拡大委員会での氏の説明をわたしは聞いていますが、
同席されていた発表者の方から「あまりにもポルシェ的な仕様であって、
一般解として論ずるにはふさわしくない」という意見も出ていました。
たしかにこの住宅はたいへんコストを掛けた住宅だそうで、
この「瓦」も特注で鋳型製作までして作ってもらったということ。
その「環境的」効果、人間感受性的な感覚領域での「体感」がどうか。
今回誌面では、ウッドデッキテラスでの床面温度が
シミュレーションでは30度になるところ、25度に抑えられたとしていた。
ちょうど日射遮蔽ルーバーのように瓦を使ってみたということですね。
海風の冷却効果、夏場で4度程度の気温との差があるので、
その冷風をクールダウンとして利用している。
氏の「論考」では寒冷地型住宅を「閉鎖系」温暖地型住宅を「開放系」とされていた。
いわゆる「環境要素」として断熱が基軸であることは了解しながら、
「開放系」では、いわゆる中間領域こそが本質だとされている。
この瓦によるルーバー活用というものも、
「環境エンジニアリングによって緩やかに制御された」中間領域というチャレンジ。
ただし、氏自身もこうした試みは世界的にもまだ確立されていないし、
今後どこまで汎用性をもって広まるかわからない、と書かれている。
瓦が熱環境的にどのように「ふるまう」か、それが一般解として
どのように普遍化できるか、まだ結論が出ていないと読み込めました。
この「中間領域」という概念は、都市的密集環境では
「近接する建物との関係」にまで想像力を広げてとらえている。
そういった領域に「デザイン」の大きな可能性を考えているように思われます。

氏は開放系の特徴というように言われていたけれど、
中間領域は寒冷地建築でもカタチは違っても多くの実践が行われてきている。
どうも気になるのは「閉鎖と開放」って、コトバの使い方に於いて
すでにハンディキャップがありすぎだと思う(笑)。
政治論議でのコトバによるレッテルで「保守と革新」という仕分けにも似ている。
まだしも保守には成熟した人間として肯定的部分もあるけれど、
閉鎖という言葉に優越性を感じる人間というのはほぼいないと考えれば、
100-0くらいに不均衡な論の立て方ではないでしょうか(笑)。
ただ、こうした志向性自体は当然ありだと思います。
中間領域の豊かさの追究は、古来からの民族的郷愁でもある
「縁側」が住宅から消えてしまった寒冷地住宅のいまの大テーマ。
温暖地も寒冷地もなく、大いにテーマとして追求すべきだと思われました。

<写真は新建築住宅特集4月号表紙一部と高知県桂浜の海>

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