先日のPHIJPセミナーからのひとこま。
今回はアメリカボストンで断熱改修に取り組んできたBRIAN BUTLERさんの
事例発表がたいへん興味深く、また共感できた。
この住宅はBRIAN BUTLERさんの自宅だそうで、
かれは他の業界から新規参入で工務店を始めたのだそうです。
で、家が寒くてなんとかならないかと、自宅をモデルケースにして改修した。
2枚目の写真などみると、まったく日本の状況と似たようなもののようです。
一気に親近感がわき出したような発表でした。
ボストンは北海道に「寒冷地用住宅」を「教えてくれた」地域ですが、
その先生の地域でも断熱についてはお寒い事情ではあるようです。
日本では現行省エネ基準に適合した住宅というのは5%しかない、
とされていますが、アメリカでも事情は大差がないようです。
たしかに札幌の時計台も近年大規模に改装しましたが、
その状況を見聞きすると寒冷地住宅としてはなかなか厳しいモノがある。
北大の近くにある北米様式の迎賓館、清華亭などを訪れると酷寒ぶりに驚く。
断熱は、やはり近年になって世界同時的に急速に普及した技術なのですね。
写真では、とにかく付加断熱の充実ぶりが目を引きますが、
一番下の「気密が7倍向上した」という説明が印象的。
北米パッシブハウス基準では、断熱の重要性もさることながら、
気密性の向上に非常にセンシティブに取り組んでいるとされていた。
断熱材の厚さを極端に追求するというより、
より重要な技術目標として、建物からの熱の逃げを抑える気密が
明確な数値目標をもたせて業界的に追究していると。
一方で日本では、最近気密性能は性能基準からはずされた。
極端に言うと厚い断熱は確保していても、気密に配慮していない住宅でも
数値的には日本では基準を満たすことが可能になっている。
気密性能数値競争に走りやすい住宅ビジネス環境への反省の意味があるのか?
そうであったとしても、一定の数値化は必要なのではと思わされる。
住宅での内部気候をコントロールするためには
気密レベルがある程度確保されている必要がある。
会場では、この間の基準設定の論議の過程についても討論がありました。
気密についてはその測定の方法についても論議があるけれど、
なんにせよアメリカではいま、こうしたビルダーが既存住宅改修の
ひとつの基準指標として気密性能の数値化に取り組み、
ユーザー説得の大きな材料としてきている現実があるそうです。
Posted on 1月 17th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 住宅取材&ウラ話
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