北海道にはあんまり、雨樋の文化はありません。
冬の間中、屋根からの落雪の危険性が高く、
開拓初期に建てられた建物では瓦も雪といっしょに落下した。
軒先はつららの形態的温床とされて、固くなった雪庇といっしょに
雪が落ちていくときに軒自体も破損を繰り返してきた。
軒とか、庇の類、そして雨樋などの日本的建築要素について
北国住宅ではその必要性よりも、危険性回避の方向に向かった。
雨樋はそういった流れの中で、設置してもどうせ壊れるという
「合理性」から省略されるのが一般的になった。
現代では屋根の勾配すらなくして、雨水はどこかから落ちるというような
非常にアバウトな手法の方に向かってきている。
屋根からの雨水について、その処理方法をあえて計画しないということ。
こういった傾向が今後どうなっていくのかはまだ見通せないと思っています。
さて、そういう雨樋ですが、
日本文化のある意味では中核である神社建築、
その北海道での代表である北海道神宮で、ごらんのように
雨樋が機能破綻していた。
っていうか、この雨樋については相当以前からその施工不良が
発覚しているのですが、なかなか修繕されません。
想像するに、雨樋端部に雪の塊が衝突して変形し、
通常の雨の誘導方向に変化が生じてしまって、
結果として雨があらぬ方向に落水している。
建築としては、こういうことが起こらないように配慮した上で、
なお、発生する不可抗力的な事態については、
可及的速やかにメンテナンス対応するというのが常識的と思われます。
なお、たくさんの参拝客が訪れる神社建築などでは
伝統的日本建築の守護者的な職業的倫理観を持っているに違いなく
そうであれば、常識的対応をするだろうと思っていたのですが、
この事態、一向に終息に向かっておりません。
どうも、雨樋というものそれ自体についての文化的背景とか、
伝統建築的なメンテナンス理解が不足しているように思われる。
よそ事ながら、この推移を気になりながら見ている次第です。
まぁ北海道の神さまらしく、おおらかに構えられているなぁと
そういった気分でいられるウチに、メンテしていただきたいところであります。
Posted on 4月 16th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 日本社会・文化研究
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