わたしは住宅の雑誌をやっていますが、
基本的には文系の人間であり、建築の素養は仕事を通して得た。
個人としての興味分野としては、歴史の方がより深いものがある。
むしろ、人類史全般の方がよりビッグスパンなので、
巨視的な視点を得るのに適していると思っています。
高断熱高気密住宅について、自分自身なりの見方、考え方を
鮮明に捉える必要に迫られたときに、一番素直に想定できたのは
北海道島の気候風土・人間居住環境について
歴史作家の司馬遼太郎さんが書いた文章群。
氏の「街道を行く」シリーズでの北方圏に関する著述から想像力を巡らせた。
とくに日本史がはじめて本格的に北海道島にめぐり会った
明治期のことについては、そのまま北海道に移住してきた
わが家家系の体験記憶とも重なって、
血肉化している部分があって、そこを原点として捉える感覚が身についた。
北海道における寒冷地住宅の発展は、
明治日本国家がおかれた歴史的要因ともシンボリックに関わっていた。
民族としての日本人がこの未踏の寒冷地で、
いったいどのような室内環境が切実に必要であるかと、
それこそ民族的な住宅開発体験として刻印されてきたものだと思う。
そんなことをベースにしながら、
北海道は日本には学べずに、結局は北欧、北米の住宅技術開発の
豊かな経験知に学ぶことの方が、自然になって行った。
しかし、工法は在来木造構法が日本社会での基本だったので、
その改良・進化が、もっとも主戦場になったのでしょう。
同様にもっと大きな視点として、人類史的な視点というのも
より広範で一般的な視点として持って行くべきだと思い始めています。
現代に至って、知の世界はインターネットなどで大きく拡大して、
より大きな視点というものが比較的に容易に得やすくなっている、
いまは、そういった局面なのではないかと思う次第。
最近は、衣服の起源ということですら、
人間に寄生するシラミのDNA的進化解析を通じて、
およそ7万年前の火山噴火の結果の地球寒冷化が引き金ともいわれる。
以下、Wikipediaより引用。
・・・インドネシア、スマトラ島にあるトバ火山が大噴火を起こして
気候の寒冷化を引き起こし、その後の人類の進化に
大きな影響を与えたトバ・カタストロフ理論に関連づける者もいる。
すなわち、ヒトに寄生するヒトジラミは2つの亜種、すなわち
主に毛髪に寄宿するアタマジラミと、
主に衣服に寄宿するコロモジラミに分けられるが、
近年の遺伝子の研究からこの2亜種が分化したのは
およそ7万年前であることが分かっている。そこでシラミの研究者らは、
トバ火山の噴火とその後の寒冷化した気候を生き抜くために、
ヒトが衣服を着るようになったのではないかと推定している。・・・
こういった巨視的な知の時代、
わたしたちの住宅というものも、より大きな視点で
その「進化」という見方が必要なのではないかと思う次第です。
気候や風土条件の解析が格段に進展し、
また住宅断熱の技術も格段に進歩してきて、
より根源的な人類的住環境進化という視点も必要になってきた。
そんな思いを持ってきています。
<図は東京大学・前真之先生の講演でのもの>
Posted on 1月 29th, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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