国立劇場にはときどき見に行きます。
先日も、歌舞伎を見物いたしました。
歌舞伎は、戦国期に出自を持つ大衆芸能ですが、
現代的な工夫が随所にされていて、概ねわかりやすい口語で進行するので
大変わかりやすく、見ていてストーリーに没入できる。
ごく初期に出雲の阿国、というスーパースターが出て
大衆の心を虜にした、まさに日本人的な演劇形式。
ちょうど上演していたのは、「頼朝の死」という
明治期に台本が書かれたという作品。
頼朝の死という、謎に満ちた歴史の断面に着目して
情念と義理、家制度というような
いわば、個人の感情世界と社会的な枠組みとの葛藤をドラマとして紡ぎ上げている。
つい30年前くらいまでの伝統的日本人の葛藤劇、
「義理と人情」の世界がクライマックスに向かって展開していく。
忘れていた、日本的な部分が露わに表現されていると感じます。
いくつかのドラマの糸が、最後の場面では絡み合い、
そして劇的に昇華されていく様は、まことに歌舞伎的で、すばらしい。
日本の伝統演劇では、っていうか、江戸期に盛んになった演劇では、
社会的な桎梏、いわば、家制度と個人の相克が
一番大きなテーマになっていて、その狭間を描き揚げるというのが定番。
予定調和的に感じて、やや突っ込みが、って感じる部分もあるのですが、
日本人としての血が、大きく了解し、共感のここちよい渦の中に
いつしか、没入している自分がいることがわかりますね。
っていうようなことなんですが、
公演後、ちょっと失礼して舞台をパチリ。
観たのは、「天井桟敷」と呼ばれる最上階席。
一番料金が安くて、でも常連さんが多くいるような席です。
観ている間も、「○○屋!」っていうような声を舞台に掛ける常連さんが多かった。
1500円なんですが、5000~6000円のかしこまった1階席なんかよりもはるかにいい。
こういう庶民的な席の声を伝統的に大切にしてきたのが
日本演劇の特徴でもあると思います。
今回は幕間に、緞帳の説明がありまして、
それによると、国立劇場の緞帳は、TOYOTAなど日本の代表的企業が
スポンサーになり、大手デパートがデザイン的打合せをして、
川島織物などのメーカーに発注を出す、というシステムになっているようです。
デザインは、伝統的な日本の造形を踏まえたものであり、
これだけでも、大変な工芸品であることがわかりました。
こういうものを審美するシステムを通って採用されているのは間違いなく、
いわば、日本的なるもの、ということが否応なく洗練されて存在している。
紹介されていたのは3本の緞帳の説明でしたが
あるのも3本だけなのかどうか。
国立劇場ってまぁ、芸術の部分での公共投資材でもあるワケなのですが、
どこまで金を掛けるべきか、というのは論議があるべきでしょうが、
存続させていくこと自体は、絶対に必要な気がしますね。
北のくらしデザインセンター
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Posted on 12月 14th, 2009 by replanmin
Filed under: 出張&旅先にて
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