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エネルギーと経常収支〜東大・前真之先生講演より

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上の図は世界の経済・統計 情報サイトhttp://ecodb.net/から、
「世界の経常収支ランキング」の年次比較。上が2014年で、下が2010年のもの。

一昨日のリンナイさんの札幌新社屋での講演会。
東大の前真之准教授の講演であります。
先生のお話は、話題展開とプレゼン画像とに一体感があり
非常に強い説得力があるのですが、
国の「エネルギー」関連の施策や動向について
その知見が求められている様子がつねに垣間見えて、
そういった部分が毎回、聞いていて注意を引き立てられます。
今回のプレゼンでも、ドイツと日本の再生可能エネルギー施策について
対比的に触れられていました。
太陽光発電装置PVの普及について、
そのコストはすべての電気利用者が公平に電気料金として負担している。
今の日本では、そのコストが1世帯あたり2700円。
一方でドイツでは30000円にもなっているということ。
日本ではまだ、このレベルなので大騒ぎにはなっていないけれど、
しかし負担の公平原則から言えば、受益者と一般人との不公平は
これから無視できないと思われる。
ドイツでは、それまでと較べて2倍にもなったという電気代が問題になり
いまやその「売電価格」は、買う電気代よりも低く抑えられているとのこと。
そうして太陽光発電が国を挙げて推進されているけれど、
一方でCO2排出量は一向に下がって来ていないそうです。
自然エネルギー発電はなんといっても「不安定」であり、
常に「バックアップ電源」を確保する必要に迫られていて
発電しないけれど、大量の化石燃料を燃やして、いつでも発電できるように
待機していなければならないのですね。
さらには、万が一の場合には陸続きの隣国には電発大国のフランスがあって、
両国は友好関係にあるので、いつでも融通してもらえる環境。

そういうなかで、こういう電気代の高騰について
それが可能になっているのは、なんといっても経済が好調だからとされる。
ギリシャの債務問題がクローズアップされているけれど、
その反対側では、ユーロ圏諸国間での経済格差の進展があるという。
統一通貨ユーロが、ドイツにとっては輸出競争力の源泉になっている。
経済的実力が過小評価され、輸出が絶好調になっている。
ギリシャ危機の裏側で、世界経済でのドイツのひとり勝ちが放置されてきている。
それに対して日本は、海を隔ててきわめて「反日」的な国々に囲まれ、
エネルギー問題でみてもアメリカとしか協調できない国際関係。
日本は、エネルギーのなかで原発をベース電源と位置づけて
エネルギー安全保障を考えてきたけれど、その構図が破綻したまま、
経常収支がどんどん悪化してしまっているのが現実。
CO2削減についても一時休止で、いま生きていくために化石燃料を大量輸入し、
その購入コストが、国の経常収支を端的に圧迫している。
ドイツがやっているように通貨をレベルダウンさせることで輸出競争力の破綻を
かろうじて食い止めているというところなのですね。

こういった冷厳な現実をしっかり見据えながら、
わたしたちは今後のことを考えていかなければならない。
ドイツと日本は、あまりにも条件が違いすぎるし、
また、いまのドイツのような立ち位置が、今後とも続いていくかも不透明。
経済ひとり勝ちのドイツへの批判は、国際政治的にも
放置できなくなっていくと思われます。
このような国家的な視点が、前真之先生の講演ではいつも開示されています。
巨視的なエネルギー安全保障視点が、凡百にはきわめて納得できました。

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