きのうからご紹介している山形のお宅の和室外部建具です。
一見すると、ごく自然な建具に見えますが、
断熱性能を考えながら、夏場の大容量通風換気を実現させる装置なんですね。
まずは、ガラスは当然ペアガラス以上の仕様。
確認し忘れたのですが、場合によっては3重ガラスという仕様かも知れません。
ただし、3重ガラス入りで引き戸タイプの建具にしようと考えたら
ちょっと開閉が重くなって仕方ないはずなので、たぶんペアだと思います。
そのガラスをしっかりした木製枠で納めています。
性能面をしっかり担保するには、一定の木の面の幅も確保します。
そのうえで、レールの上を動かすのですが、
ここで決定的なのが、閉めるときの金物の性能。
しっかりと、引き絞るような感覚で閉められるように工夫してあります。
そういった建具を、写真左側のように、戸袋にしまい込んで、全開放させるようになっているのです。
このような大開口部を、風の通り道を考えて2方向に造作して、
ここちよい風の通りを室内に導き入れているわけですね。
そして、すだれや風鈴、といった涼感を刺激するアイテムで、
さらに夏の雰囲気を高めるようにしていました。
というような技術面の説明になるのですが、
しかし、断熱と気密に配慮しながら、このような大開口を実現するのは、
外部建具のディテールで、かなり詳細な検討が必要です。
設計者は、建具屋さんと、サッシメーカーとを協調させながら、
手作りのようにこうした装置を実現させたのです。
とくに、重量のかかる木製ペアガラスで、スムーズな引き違い建具は稀有。
わたしも実際に引き違いの操作をしてみましたが、
若干は重量感は感じますが、日常的な使用にも十分なレベルと感じました。
こういう建具を使って、巨大開口部を造作しながら、
この建物の熱損失は、Q値で1.3レベルということ。
次世代省エネルギー仕様で、北海道でのレベルが1.6ですから、
3地区である山形ということを考えれば、相当なレベルの高断熱高気密といえます。
なので、建具で締め切って、軽い冷房を運転させれば
それのほうが涼しい室内環境は実現できるレベルとは言えます。
しかし、このように「夏らしい暮らし方」を実現させながら、しかも冬も暖かいワケ。
以前、このような引き違い建具で大開口に挑戦して、
しかし、惨憺たる現実に直面していたお宅も実見したことがありました。
そこではほぼ、開口部としての機能が破綻していて、
建具の開閉もままならなくなっていました。もちろん、隙間だらけになって、
冬はたいへんな状況なのだろうなとも推定されました。
そういうことも知っていただけに、
こうした開口部の研究努力・技術力の素晴らしさを実感した次第です。
Posted on 9月 6th, 2007 by replanmin
Filed under: 住宅性能・設備
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