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目の不自由なひとのための家

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仙台市で、視覚がだんだん衰えていき、全盲も覚悟しなければならない
そういう方のために、住宅はどうあるべきなのか、
こういう問題意識に基づいて建築された住宅を見る機会がありました。
ご存知のように、白内障などの目の病は広く発症するもので、
成人の多くが視覚障害の可能性をもっているのが現実。
しかし、この問題を建築的問題として考えるというのは、
ほとんど聞いたことがありませんでした。
設計にあたった本間総合計画・本間貴史さんに聞くと、
いろいろな文献や、資料などを探してみたけれど、
その範囲では、有効な先人の業績を探し当てることは出来なかった、といいます。
そこで、この家では、福祉の専門家と相談しながら、
有効と考えられる方法を、試行するアプローチを取っています。
建築設計って、表面的なデザインという面がクローズアップされますが、
そのデザインっていうのも、人間の暮らしのためのもの。
暮らしやすい、という本然のかたちを考えれば、
こうしたアプローチこそ、建築設計の核心的なものがあると思います。
しかし、デザインの要素って、やはり基本的には「窓をどう開くか」というのが
与えられた敷地の中に、住宅という装置を作る最大のもの。
そういう意味では、視覚的な要素というのがやはり一番ではあるでしょう。
あらかじめ、そういう手法からアプローチできない中で、
いったいどういう建築的な手法があるのか、
大いに考えさせられる家づくりになりますね。
この住宅作りは、試行しながらのものだったので、
目的に至るための「試みの要素が大きいです」と控えめに語っていましたが、
有効と考えた手法のひとつが、
床材の素材・張り方・仕上げなどの変化の付け方。
基本的には、1階だけでの生活をイメージして、
視覚障害の方が、そのなかで生活が完結できるように考えています。
足の裏からの触覚的な、あるいは温度感知能力などに訴求する方法。
その考えから、間取り的には家の真ん中に動線空間としての廊下を配置し、
そこから左右に各空間を仕分けています。
その空間ごとに、床材が張り替えられています。
実際にスリッパなしで、皮膚感覚を通して感じてみれば、
あまり繊細とは言えないわたしでも、空間認識はできそうな気がいたしました。
主に暮らされる個室は、杉の板が使われ、ほかの材質とは明確な違いを感じます。
暖かさも、杉が一番感じられるのだそうです。
ほかにも居間はパインの無垢材など、微妙な皮膚感覚が
たしかに違いとして認識可能だと思いました。
写真のように、居間には防音壁も設置され、
今度は聴覚からの空間認識へのアプローチも試みていました。
こうした皮膚感覚を、住宅性能面から阻害しないように、
床面が基本的に一体的な温度感覚が得られるように、断熱気密が配慮され、
そのうえ、暖房配置で温度に変化が出ないように
床面一体の温熱環境が得られる「土壌蓄熱型」暖房方式が取り入れられています。
いろいろな人がいて、いろいろな家づくりがある。
その原点のような部分を強く感じさせられた住宅取材でした。

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