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戦時的危機管理能力

菅直人さんという人は、今のこの情勢の中で、
日本の危機管理の責任者ということになるのだけれど、
わたしたちは、そういった自覚を持ってこの方を選んだのだろうか?
まぁ、一義的には、民主党の党首選挙によって
かれは鳩山さんの後を追って現職に就いた。
鳩山さんは、明確に「政権交代」という目標を掲げて民意を問い、
正統性を持って権力を奪取した。
その後のトップの交代については、民意を経ているとは言えない。
代議的に、民主党党首選挙が行われ、
その正統性に於いて、かれはいま、政権の座に就いている。
交代の経緯から言えば、政治とお金の問題で
直接的には鳩山政権は行き詰まったのであり、
菅直人さんというのは、
そういった側面から押し上げられてなったということだろう。
その後の小沢一郎との代表選挙でも、基本的には
そういった側面から支持されたようだ。
かれは、市民運動家出身であり、
折に触れて、故・市川房枝さんの墓に詣でるパフォーマンスを見せる。
菅直人という政治家の資質とはそういうものだと思う。

そういった平成的な政治的価値観世界から、
かれは総理大臣になったのだけれど、
いま、未曾有の大震災のただ中にわたしたち社会はいる。
戦争による大量破壊にも似た状況を呈している東北太平洋岸地域があり、
進行的危機として、福島原発の問題がカタストロフ的にある。
繰り返し語られる言葉に、戦後の焼け野原と同様の、
というフレーズ通りの光景が、今進行している事態なのだと思う。
戦争と違いがあるのは、一方にほとんど被災しなかった、
平成的平和を維持し続けている日本社会が同時に存在しているということ。
戦争的な危機管理対応が求められている一方で、
それへの対応が、平時的なマニュアル管理に基づいて進行している。
どうも、現在進行している「危機」の本質はここにあるように思われる。
民主的な国家の政治は、そのトップの選び方は
まぁこれはこれで、やむを得ないとは思うけれど、
これから、日本は復興させていかなければならないときになる。
いまの菅直人政権というのは、基本的には
平時における社会調整型の権力であり、そういう意味では、
本来、いま日本が必要としている資質に於いて選択されていない。
誰がやっても、基本的には同じような対応になる部分では
今の権力構造でいいとは思うけれど、
戦時並みの危機管理が要求されている、という価値判断に於いて、
早急に権力の選択を行って欲しいと思う。
その結果がもう一度、菅直人になってもいい。
そのような価値尺度に於いての選択という明示が必要だ。

戦時的危機管理能力なんて、日本の政治家で歴史的に言って、
どういう人物か、といっても、ちょっと想像力が浮かんでこない。
日露戦争時の桂太郎内閣というようなことになるのだろうか。
日英同盟の締結を基礎にして、圧倒的軍事力を誇ったロシアを破った意味では
成功したとも言えるけれど、
その後の、賠償交渉で国民の不評を買って退陣した。
それ以前と言うことになれば、
それこそ、徳川家康くらいまでさかのぼることになるけれど、
あれは、国内政治の延長としての国内戦争であって
国民国家時代になっての戦争指導など、
日本の政治は、まともに経験したことがない。
しかし、これからは、「危機管理」ということが
大いに問題になってこざるを得ないのは、明らかだと思う。
戦後の安定した社会は、たまたま日本列島が地震に於いて静穏期だったからだ、
という説が大きくなってきている。
これから、連鎖的に各地で地震的災害は頻発すると覚悟すべきだと思われる。

<写真は縄文的平和社会・三内丸山のジオラマ>

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