先日、ユーザー向けの住宅講演をしました。
どっちかというと、プロ向けの方が回数は多い。
やはりこの対象の違いというのは、こちらのプレゼン内容に
大きな影響を与えます。
結局、ユーザー目線では「住宅を持つ意味」の価値感への訴求が大きい。
高いお金を掛けて家を建てる以上、
そこにどんな目的があるのかを「見える化」したい。
よく言われることですが、
住宅というのは「日常」そのものの空間ですが、
しかし、住宅を建てる・購入する営為は「非日常」そのものだと。
たぶん家を考え始めるとき、住宅関係の業界知識のようなものは
ふつうの人間には想像もつかないことだと思います。
親の保護を脱して自立して職業を選択し、伴侶を得る。
子どもが生まれて「家庭」を現実体験し始める。
その段階くらいでようやく「家」というものを意識しはじめる。
そうですね、やはり「家族」という存在が先行する。
人類学の先端知識でも人類と一夫一婦制というのは、
かなり起源的な「選択」だったそうなので、
家族というありようは、きわめて自然なことがらなのでしょう。
そして家というのは、その家族関係そのものの「表現」なのだけれど、
そういう「空間」について学ぶ機会というのは
それまでの人間形成の過程ではほとんどない、というのが現実。
そこで、急に「非日常」的に情報を求めはじめる。
住宅雑誌や、モデルハウスから情報を得ようとするけれど
なかなか自分の本然の「家族のありよう」というものは見出しにくい。
写真は1号前の東北版の表紙を飾った家です。
子育てに直面することになって、初めて家づくりを意識し、
いろいろモデルハウスなどを行脚して、ある設計者と出会い
ようやく「腑に落ちた」感じをもって、
出来上がった居間でくつろぐ母子の様子を写真に収めたもの。
この舞台装置としては、大きな吹き抜け空間で天井がやわらかく傾斜している。
そしてハイサイドライトから陽光が室内に取り込まれ、
天井の大きなホワイトが反射光効果も持って、
全体として「おおらかでのびやか、明るい」という
家全体の基本旋律を奏でている印象です。
こういった「雰囲気」は建て主さんの「こう暮らしたい」が
具体的な建築装置、くらしの舞台背景として選択されたものでしょう。
言うまでもなく、こちらの家づくりでは、
家族関係はこうありたい、という願いがこのワンシーンからも見えてくる。
やがては、ご夫妻のご両親も同居の予定があるということ。
そこで営まれる大きな「家族関係」の背景として
この建築的装置・住宅はほほえましくその雰囲気を奏でている。
結局、家族のありようを最大限に「表現する」ことが、
家づくりのもっとも核心なのだと気付かされると思います。
Replanは家を建てる前も、そして不思議と家を建てた後も
3年間くらいは読み続けていただける、と言われてきました。
非日常ではなく、家族の日常という価値感の気付きに役立ちたいと思います。
Posted on 6月 26th, 2019 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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