ようやくZEHという施策に対してわたし的に強いプッシュ要素を見た。
今回の函館取材で地域工務店グループ・eハウジングが
今後取り組んでいきたいとしていたのが「リノベZEH」。
主要メンバーの山野内建設さんが取り組みをはじめていた。
購入層のターゲットは人口減少に苦しむローカル市町村居住者。
こうした地域では高収入の職場自体がごく限られている。
そのなかで現代的居住環境をどうやって地域工務店として担保していくか、
そのために国の住宅施策を徹底的に利用して
まだしも存続している「補助金」なども援用しながら、
取得可能な高性能住宅を提供しようという試みでした。
人口減少地域では「空き家」だけは豊富にある。
そうした空き家を「目利き」して再販リフォーム可能な物件を入手する。
あるケースでは、上物付き土地が500万円だったところ、
現代社会が要求する分別解体処理費用が200万円かかる。
そこで差引き300万円で持ち主から購入した。
こうした物件の持ち主にとっても購入需要が少ないローカルで
不動産を現金化出来るメリットは計り知れないと推測される。
ここでのポイントは住宅建築のプロによる既存物件の目利き。
どこにどう手を加えればもっともコスパよく高性能住宅に改変できるか、
そういう優れた知見を持つ地域工務店ならではの強みが活かせる。
この購入物件に対して断熱改修、耐震補強、資金計画などを
ユーザーにオープンに開示してリノベした。
なんとリノベ前の物件もオープンハウスとして公開したという。
改修の概要は以下の通り。
●間取りは以前と変えず、階段など利用可能な部位は既存を活かす。
●断熱気密性能は徹底的にやり直し。外皮はUa値0.26W。
●延べ床面積33坪。断熱性能は年間暖房負荷5,244kWhの試算結果。
●暖房設備は6畳用エアコンを床下に1台設置して、1階床下と軸間、
天井フトコロを暖気が対流する全室暖房方式。
●外気温マイナス4度の日で1階床開口からの吹き出し温度26度。
室温22度。マイナス13度の日でも室温20度を維持したという。
●太陽電池6kW。エアコン暖房+エコキュートで光熱費ゼロZEHをめざす。
<資料は北海道住宅新聞2018.3.5号から参照>
ポイントは、光熱費ゼロということが地域居住にとっての
直接的な大きな支援策になっているということ。
仕事自体が少なく、しかも高収入は望めない地域にそれでも愛着を持ち
住み続けたいという希望を持ってくれる人々に
高性能住宅の技術を持った地域の作り手がその住宅環境を提供できる。
そのような目的のためであれば面倒なZEHの手続きなどの
経験値を高めておくことも必要で、大きな力になる。
ストーリー全体として大きく同意できると思った。山野内さんは
「ローカルでは高性能で取得費負担が少ない住まいのニーズが
いかに強く存在するか、見学会をやってよくわかった。
しかしこれは企業化はむずかしいかも。既存住宅の目利きと
断熱施工のバランスでどのように折り合いを付けていくか、
おのずと経験知に大きく依存する」と話されていました。
しかしこの企画、住み手と作り手、空き家の売り手の三方よし。
さらになんといっても「地域よし」の要素も加わってくる。
今後動向に注目したいと強く感じた「ローカルZEH」の試みです。
Posted on 3月 21st, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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