東京の建築関係の方と話す機会が増えてきて
その認識のズレを強く感じるのですが、どういう原因によるモノか、
単純に断熱への理解の欠如がその最大要因だといつも再確認される。
日本の行政機構、建築を統括する国土交通省が、
北海道の住宅性能向上の経験を基にして国の基準を策定してきた
「省エネ基準」の推移と、その基準がどの程度浸透しているか、
ふたつのグラフを参照していて、暗澹たる思いがします。
全国の5000万住宅ストックを調査した国交省の2012年データでも、
ごらんのような状況になっています。
昭和55年基準住宅というのは、旧省エネ基準準拠ということになりますが、
これは北海道ではQ値2.8ということなので、
いまやまともな「ストック」とは言えない住宅性能レベル。
新省エネ基準で、Q値1.8なのでギリギリ居住「可能」というレベル。
そのように見ていくと、ギリギリ「ストック」といえるのは、
全住宅の1/4程度が関の山というのが実態だと言うことになる。
こういう実態からどうやったらゼロエネが実現できるのか?
産業としての「高断熱住宅」の事業チャンスは、
この3/4マーケット、最低3,750万戸程度は広大に広がっている。
それが建て替え新築なのか、性能向上リフォームなのか、
違いはあっても、それくらいの「革新」が起こらなければならない。
以下のように、北海道の建築家山本亜耕さんからもコメント。
〜本気で日本中の建物を断熱化し今後は「断熱化された家を技術標準」
としたいのなら、より地域社会に協力を求める必要があるでしょう。
一部の作り手が研究会に入って技術だけ学べば済む程度の
ことではありません。そのためには地域行政が断熱技術者を養成する、
その地域に合った住宅施策を考案する、作り手から住まい手まで
断熱建物の共通体験者を増やす、
そうやって断熱建物の経験値を共有できないと、
いつまでも話しの噛み合わない状態から抜け出せないと思います。
本州で奮闘している一部の作り手以外、プロであろうと
まだまだ断熱なんて知られてはいないのですから。〜
まったく同感です。
まずは、断熱の常識化がなによりも大前提でしょう。
飛び抜けて原理主義的に、これでどうだ式に迫るのがいいのか、
道筋は、もっと考えられる必要がある。
北海道の基準だけ持って行っても国レベルではなかなか浸透しない。
いわば社会システム的なアプローチが必要だと思われます。
<なお、早稲田大学の高口先生からコメントをいただきました。
で、「市場予測」について詳細な特定をいただきました。以下です。
〜5000万戸には集合住宅も含まれていますね。世帯数は5000万ですが、
建物数は5700万で700万が空家。2050年の世帯数予測は4200万世帯。
つまり更に800万戸が空き家になります。
しかもその内訳は、単身世帯が42.5%、夫婦のみが18.5%と、
戸建に住んでくれそうな世帯候補は「夫婦と子」の17.7%と
「その他」の10.8%くらい。この29%が全て戸建に住んだとしても、
必要戸数は1200万戸。6割程度とすると700万戸程度。
従来の子供のいる家族像を想定すると、需要はこの程度になります。
寿命50年とすると、年間14万棟の新築需要ですね。
もちろん、単身世帯や夫婦のみ、片親世帯も一定量は
戸建住宅に住みますが、どの程度の経済力があるか。
中古住宅の値段が圧倒的に下がっているはず
(何せ空き家だらけですから)なので、
このリノベーション需要をどう取り込むか。ですね。〜
高口洋人先生に感謝であります。>
Posted on 7月 18th, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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