古民家や古建築、とくに本州以南地域のものを見ていて
こういった伝承文化は北海道でどのように伝わっていくのかと、
しばし立ち止まるようなことがあります。
そういうなかでも、ほぼ北海道でいま建てられている住宅で
絶滅しているであろうものに、この「欄間」がある。
たぶん、北海道の若い人に聞いても、欄間という概念自体、
1割も認識がないと思われます。
畳の部屋というものはあったとしても、
それは基本的に「大壁」仕様の居室であり、
床仕上げが畳敷きである、ということに限定されている。
一応念のために概念規定をしておくと、
天井と、鴨居(かもい)または長押(なげし)との間に、
通風・採光のため格子(こうし)や透かし彫りが取り付けてある所。
ということになるけれど、鴨居・長押の概念規定がさらに必要になる(笑)。
まぁ、写真のようなものですね。
で、この欄間には木工芸の嵌めものが装置されるのが一般的。
外光がこの欄間を通して入ってくるときに
その情景に彩りを添えるように、彫り物が施されている。
たぶん、シルエットとしての影絵のような美観を
室内から楽しむデザイン装置であったのでしょう。
いまの北海道現代住宅では、工法的にも
構造の柱・梁がそのまま露出する「真壁」はほとんど採用されず、
そういう意味では構造は大壁という「壁」の構造下地という考えから
クロスなどで壁に仕上げてしまうことが一般的。
こういった欄間のような箇所はできるけれど、
ほとんど壁面に仕上げてしまうのですね。
このことは、北海道に限らず、大量生産志向の木造住宅でも
一般的に全国で同様であろうかと思います。
合理性で言えば、通風・採光という機能を和風建築工法のなかで
この欄間装置は果たしながら、一方で
花鳥風月的な日本人的心象構築に与ってもきたに違いない。
そういった機能は必要性が薄らいだけれど、
では現代風の住宅づくりにおいて、現代人に心象構築的に
働きかけてくるような建築要素を、わたしたちは創り出し得ているのか、
そういう部分まで、文化としての住宅づくりは考えていくべきでは。
そういった妄想を抱いております。
Posted on 3月 30th, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅取材&ウラ話
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