きのうの続きであります。
「人類史のなかの定住革命」に教えられたことです。
まさか、人類史の学術的な本を読んでいて、
こういった根源的な問いかけへの回答があろうとは思いもよらず
こうしたアプローチが論旨としてはじめられたあたりでは、
まさに知的興奮が最高潮に達しました。
著者である前筑波大学教授である西田正規氏も、この章を書き出すに当たって
きちんとこれは推論であり、証明しうる科学的根拠の提示は難しいこと、
この推論よりも合理的な論証があれば、撤回するに躊躇しないことなどと
科学者としての良心をかけて述べられています。
しかし、人類史の専門研究者として、こうした推論を持たずに
断片としての事実痕跡だけを調査研究するのであれば、
それはおよそ、人類史研究とは言えないとも語られている。
まことに清々しい態度だと思いました。
で、きのうの「火を扱って武装した」上で、樹上生活から地上生活に降り立った
およそ300万年とも500万年ともいわれる以前のわたしたちの祖先は、
楽園である森を、より樹上生活に適合した種であるオナガザルの群に追われ、
手に棒や、相手に対して致命的打撃を加える石を持つことになった結果、
それらが、獲物の動物だけに向けられず、
自分たちの「社会」構成員同士でも、こうした攻撃がありえる危機に直面した。
つねに危険な武器を持っていることが、自分たち社会をも脅かした。
そのときの主要な「社会危機」の内実は、性と食の問題。
とくにほかの霊長類と違って、発情期がほぼ常態的になった人類では
性の問題こそが、いちばんの安全保障上の大問題になった。
それが解決される手段として、性を特定の男女間で制約するというタブーを
社会が共有するということだったとされています。
夫婦という概念の誕生。
近縁種であるチンパンジーなどの社会では、抜けがたく乱婚的であったのに対し
人類は、この選択を初めにしたのだという推論です。
これが、武器を持っていた人類個体間での社会的安全保障体制を構築した。
そしてこのワンペアの男女関係を基軸にして
血縁関係という、DNAレベルでの共感をベースにした
「家族」という組織が人類社会の基本構成因子として成立した。
さらに西田氏は、この安全保障体制のもう一つのモノとして
「言語」の発生を推論されています。
社会成員相互の間で頻繁に起こりうる緊張関係をやわらげる機能装置として
融和的な雰囲気を形成するのに、言葉が必要になったと。
そうであるとすると、
家族の愛情とは、まさに「育てる」ものであるのは、自明ですね。
住宅も、こうした「家族」のかたちを入れるイレモノだと。
しかし、現代の知の世界というのはすばらしい。
Posted on 8月 31st, 2015 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅性能・設備
コメントを投稿
「※誹謗中傷や、悪意のある書き込み、営利目的などのコメントを防ぐために、投稿された全てのコメントは一時的に保留されますのでご了承ください。」
You must be logged in to post a comment.