沖縄で建築現場をみることが出来た今回のツアーでしたが、
印象的だったのは、糸満の建築現場で働いていたベトナム人職人さんたち。
一応いまの立場は「研修生」というものでした。
日本の人口構成が急速に高齢化していくなかで、
暑い日中の屋外労働のようなキツい仕事では人手不足は必然。
そもそも若年層の労働人口が減ってきているので、
こういった趨勢はやむを得ない側面がありますね。
日本でも事実上の労働力の自由化の方向に向かい始めたようです。
議論はあるでしょうが、経済実態から考えれば労働力受け入れは自然。
現実に建築関係では60代でも現役という職人さんが多い。
早晩、そういう職種では人手不足がより深刻にならざるを得ない。
経済を考えていけば、こうした担い手問題は喫緊の課題です。
日本人か外国人かで、出来る仕事に大きな違いがあるわけではないし、
日本社会の「公平性」が問われてくる状況が近未来に見える。
忙しく働いている職人さんにあれこれと聞くわけにも行かなかったのですが、
それでも二言三言、言葉を交わさせてもらった。
屈託ない笑顔を見させてもらって、若々しさがこっちまで伝わってきます。
「研修生」という立場での就労なので単身で働きに来ている。
まだ若く独身だというかれら。
「ニッポンの女性もきれいでしょう?」
と冗談めかして聞いてみた。当然だけれど
「キレイですね(笑)・・・」というような反応。
こういった立場の人たちは、家族を呼ぶことは出来ないとされます。
先日中国での「軸組構法」の建築への本格導入の動きを書きましたが、
とくに日本の建築にとって、この労働問題も含めた将来展望のなか
「国際化」は、避けては通れない問題になっていくでしょう。
中国では古来からの木造伝統建築へのリスペクトは大きいとされ
世界の中で唯一、この建築技術を遺し伝統化させてきた日本は
そういった文化的側面から注目が高まり、影響力を発揮しうる。
その技術を学ぶという中国・アジアからの需要も今後高まる可能性もある。
かれらアジアンたちは、日本語をなんとか話して
日本で働きたいと一生懸命だと感じます。
Facebookのシンガポール人スタッフの方も、IT技術+広告という
きわめて敏感なコミュニケーションの仕事領域ですが
なんとか日本語を使ってコミュニケーションを計ってくれる。
逆のことは、日本の若者にはあんまり考えられない。
世界的に資本主義が席巻する世紀になって、その市場が開放されていくのは
どうしても抗えない趨勢になっていく。
歴史的には日本社会というのはアジアからのエトランゼたちを
旺盛に受け入れ続けてきた時代を持っていると思います。
江戸期の鎖国から明治以降の「国民国家」形成期というのは、
むしろ日本史全体から見ればやや異形の時代だったように思える。
古代ではアジア世界からの移民をきわめて旺盛に受け入れ、
その「先進技術」を導入し続けてきた。
コメ文化の受容、漢字文化の学習、律令国家制度・仏教思想の導入など、
むしろこの列島社会はアジアのフロンティア地域だったのだろうと。
しかし現代は、そういう意味では逆転した立場での「国際化」なのでしょう。
この趨勢を受容しながら、どのように安定した社会環境を構築できるか、
不透明ですが、ニッポン社会が試されていくという予感があります。
Posted on 7月 5th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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