先週金曜日夕方に札幌帰還。
で、翌日土曜日には案内いただいていた建築家・五十嵐淳さんの
北見でのオープンハウスに行ってきました。
北見は札幌からおよそ300kmですが、
旭川から回っても、十勝から回ってもどうもほとんど変わらない距離。
どっちにせよクルマが便利なので、往復600km超をカミさんと運転シェアで。
北海道の場合は、これくらいの移動距離は結構頻繁に通う範囲。
東京ー名古屋手前、豊橋くらいまでの距離で、
しかも最近はほぼ全線高速道路、もしくは高規格道路なので、
そうは感じない移動距離であります。
五十嵐淳さんは、道北・佐呂間居住の建築家ですが、
最近は札幌にも事務所を構えている。
今回の建物、開口一番「どういったコンセプトで?」
と聞いたら帰ってきた答は、表題のようなあいまい表現(笑)。
施主さんはこの建物を職住一体として使われるそうですが、
「どんな建物か、よくわからないくらいにして欲しい」という要望だったとか。
北海道の建築家の中でもモダンアート的志向の強い五十嵐淳さんに
設計を依頼するだけはあります。
仕事としては酒類販売、それもブランド日本酒専門に扱うお店ということで、
どっちかというと「わざわざ店」といった線を狙っている。
店舗部分は1階で、ごらんのような動線に沿ってカウンター越しに
お店のスタッフと会話しながら、自分のお酒の好みを伝えたりして酒を選んで
奥の冷蔵ケースから自分で好みのお酒をピックアップして
それを持ってこのR状の「店舗空間」に戻って精算して帰っていくという流れ。
一方で店舗側は、冷蔵ケースのとなりにストックヤードがあって、
裏口側から、在庫補給がワンウェイでできるようになっている。
「ちょっと変わっていてなに屋さんかわからない」印象的な外観で
入って見たら、合目的的な「動線」計画に沿った「間取り」になっていて、
その動線通りにスムーズに機能を使い切ることができている。
「まぁ全部が廊下の中にいるようなものですね(笑)」
なんですが、じゃぁ、生活の場である2階は?
こちらのご家族構成は夫婦2人だけ、ということもあって、
もちろんながら、こちらも「ほぼ廊下」。一部開口で膨らんでいる場所に
安楽椅子的な空間があって、ここの対面にテレビの想定位置。
この壁間の距離はおおむね2.7mのスパンと聞きました。
これくらいの距離感があると、居室の壁間とも言える「兼用可能」なスパン。
ほかの空間もこのモジュールで構成されていますが、
どの空間も十分に「用をかなえて」いる。
ただし2階は天井高さが3.6m程度となっているので、
そういったことが人間の空間認識で開放系、プラス方向に働いている。
でも施工は大変そうであります、このR形状。
事実、数社の工務店から断られたのだとか、
構造は木造ですが、このRの曲面を作っていくのは手間も時間も掛かる。
3次元曲線に沿って構造材柱をどのような「向き」に立てていくか、
その柱にどのように「梁」を掛けて行くか、
外壁側でもプラスターボードを曲面加工して貼り合わせている。
さらに2階では住居部分でもあり「付加断熱」分、外壁が1階よりも膨らんでいる。
そういった部分の納めはどうなっているのか、
また、外壁は木を張っていますがそれも「下見板張り」ならぬ
いわば「横見板張り」仕上げ。下地の組み方は?などなど面白い。
・・・まぁ、いろいろアバンギャルドなモダンアート建築なので
どう作っているかについて、興味は尽きませんでした(笑)。
施工は網走市の石川建設さん。五十嵐さんのファンでもあるので、
相当に頑張ってくれた、と五十嵐さんも絶賛されていました。
建物はAEONのほど近くで目抜き通りに面している。
たしかに不思議なモダンアート造形で、「なにさあれ?」と興味は惹かれる。
イマドキの消費者心理として、こういう方が「そそられる」かも。
五十嵐さんの建築、コンセプトから考えるとかなりわかりやすい。
またかれが近作でよくこだわっていた「動線」計画をメインにした建築。
それも、成熟したわかりやすさを持っていると感じました。
Posted on 7月 2nd, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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