わたしは京都などに行くと、寺の苔に惹かれるタイプであります。
東京世田谷の「近代和風」住宅を見学したときに、
「京都の苔」を再生させようとした庭を見学したことがあります。
そのとき聞いたお話しでは、苔というのは優れて「地域的」なものだそうで、
同じように見えても、イヌで言えば秋田犬とブルドッグみたいな生物的差異がある、
ということなのだそうです。その難しさにひそかに職人的挑戦をしている
庭師としての心性に打たれたことがある。
写真は新事務所&わが家の天然スレート板外皮の様子です。
この位置はRを描く2階壁面から雨が落ちて、そのR面が影響してか、
水分がスレート板に痕跡を残し、なんとも複雑微妙な痕跡を残している。
床面は煉瓦を敷き込んでいて、時期によっては緑の苔が生えていたりします。
方位的には北西方向にこの面はあるので、
苔のような植物にとってある種の条件を満たしているように思われます。
京都の苔のような生物とはまったく違うだろうけれど、
北海道でも、そのような植物・生物の様相はあり得るだろうし、
意図的にそれをデザイン化したい、とは考えていました。
地面の方の苔は目に美しい緑ですが、年によって繁茂に振幅がある。
一方、スレート板外壁側の「黒い影」の方ですが、
R壁との関係で言えば、雨水が煉瓦地面に落ちて泥を跳ねあげる
その距離がそのままR壁なりに泥はねとして造形しているのかも。
あるいは相互関係でそうして付着した泥土に
なんらかの生物・コケ類が寄生しているのかも知れない。
泥はねだけであれば、煉瓦外壁側のつながり部分の造形がありえないのでは?
しかしいずれにしても、わたし的にはこの影にある種のアートを感じている。
自然と時間だけが作れる人工物への痕跡ではないかと。
で、今回のリノベで多くのみなさんと接触して、この外壁面の様子について
さまざまな「意見・感想」をお話しいただいた。
まぁ多くは「シミですよ」とムゲもない反応。
で、なにか塗装でもしましょう、という話が出たりするけれど、
自然的に発生したので、たぶんどう被覆しても同じことが繰り返すだろう。
色の要素が加わって、より悲惨な結果も想定できる。
であれば、正直でありたいと思っています。
まぁ人間のアイシャドウのようなもので、陰影感ともいえるのではないか。
ポジティブすぎるシンキング、どうでしょうか?
Posted on 5月 6th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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