さてニッポンのいちばん古い家、神戸市近郊の箱木家住宅3回目です。
写真は「離れ」で江戸時代中期、いまから300年くらい前の建築。
われわれから見ればこちらも十分に「古民家」ですが、
母屋の1000年以上から見れば、こちらは「新しい家」でしょう。
たいへん開口部が多い造作で、
屋根だけは重厚な茅葺きで断熱されているけれど、
あとは「通風」重視の住宅になっているといえますね。
そういえば、母屋もまるで竪穴を思わせる巨大な屋根と土間から
一部が大きく開口され、南面に開放されている。
そこに大きな「縁側空間」が造作されて、そこから離れに向かって
縁を通って新造の空間に至るように構成されています。
まるで古代から、近代に向かっての住宅の歩みを見せているかのよう。
ちょうど、すぐ上の写真で見えるように、
土間から縁側の高さレベルに移行した様子が明瞭。
この縁側は同時に土間から母屋の主室の床の高さとも一致する。
そこから離れの縁側まで、茅葺きの屋根で覆われた
中間的領域がここちよく連続している。
たぶん、現日本人にいたる日本人的感受性を
こうした縁側空間こそがいちばん育んだに違いない空間だと思う。
そして、離れの内部にいたって、障子建具が主役になる空間が現出する。
通風重視の開放空間とは、同時に格子状のデザインを
日本人の心象風景にかなり決定的な空間認識としてもたらした。
まさに千年家、いろいろな日本人の情感を思い知らせてくれる。
こういう豊かな情念的空間に比較して現代のわれわれの空間のありようは、
さて、大きく「進化」していると言えるのだろうか?
Posted on 9月 3rd, 2016 by 三木 奎吾
Filed under: 古民家シリーズ, 日本社会・文化研究
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