さて今週はReplan北海道版の次号6月28日発売号の進行ピーク。
来週の下版を控えて、もろもろ準備してきたことが
一気にラッシュの作業になって来ます。
やはりどうしても、ものづくりには、作業のヤマというのがつきもの。
ということですが、わたしのブログでも、
「日本人の財産、住宅の価値」というテーマなどで、
たくさんの方から反響をいただきました。
わたしは日経の3月4月に掲載の記事を初見以来、考えていたのですが、
思いの他の反響だったので、ふたたび、資料などを集めて
もうちょっと考察を深めてみたいと考えた次第であります。
日経の記事にしても、もと資料はどうやら、
国土交通省が「中古住宅流通促進」という目的に向かって
諮問機関会議などに提起した資料だったようで、
そのなかでも象徴的なのが、上に掲載した資料のようです。
これは、確かにインパクト抜群の表だと思います。
単純に言って、アメリカ人は住宅投資がそのまま「資産」になっていくのに
日本人は、負債になってしまっている現実であります。
で、国としても、こうした資料を作成し発表した以上、
政策誘導として、アメリカの住宅市場を目標にしていこうと、
そのような志向が伝わってくる次第です。
わたし自身も、この不均衡ぶりには、今後考えていく大きなテーマだと
強い思いを持たざるを得ません。
これは民族的な義憤に駆られざるを得ない。
アメリカ人は、自分が働いて入手した住宅資産が、ほぼそのまま
それを信じられるのに対して、日本人は半減以下になるのが現実。
あるいは、結局残る資産は土地だけであって、
建築にはもともと、資産価値はないという事態が放置されてきたともいえる。
1980年前後くらいまでは、投資と資産価値に乖離が少ないのは
戦後の「土地価格の上昇」が与っているように見えます。
その後の「資産価値」のみごとな停滞ぶりは、
同時に土地価格の停滞の実態を表していると見えるのです。
しかし、日本の住宅建築を取材し続けてきた人間として
建築された住宅に価値がないワケはない、という強い思いがある。
問題の基本は住宅が金融資産として機能していないマーケット構造にある。
逆に言えば、その問題点を明確にして、
市場の構造に対して、経済合理性や経済民主主義の概念を
反映させていくルールや慣習を作って行けばいい。
日本人はこうした大テーマが明瞭になると
しかし、その克服に全力で立ち向かって行く民族性も持っている。
坂の上に色鮮やかな雲が見えてくれば、
必ずその高見に上がっていこうとするのだと信じたい。
そんな思いを持って、どうすべきか、ということを
知恵を絞っていきたいと思っています。
日本人の生きる「シアワセ」のために、大きな意味がある営為だと。
追記:
読者の方から、表には「土地コストは含まないのでは?」
という疑問が寄せられました。
きょうは確認の術と時間がないのですが、
国道交通省発表の、図表についての「解説部分」がありましたので、
追記します。
日米の住宅投資額累計と住宅資産額
○ 日本の住宅ストック額(国民経済計算上の額)は、建物価値の減価や早期に除却される実態に即して累積。投資額に比して500兆円程度損なわれている計算。このギャップを埋めるためには、中古住宅における建物評価の適正化、リフォーム投資等による質の向上等が必要。
アメリカ ●ストック額が投資額を上回る理由
資産評価:減耗のある再調達原価で設定
・市場の実勢を反映し、法人税法上の償却(27.5年で償却)よりも、遙かに低い減耗率を使用
・大規模なリフォーム投資も資産額に反映
投資がストックとして、少ない減耗で積み上がっているため、
好景気などにより再調達原価が上昇すると、評価額が投資額を上回る。
日本 ●ストック額が投資額を大きく下回る理由
資産評価:減耗のある再調達原価で設定
・我が国住宅の実態を反映し、築年数の経過で急速に減耗する計算
・価値の減耗、統計の未整備等により、リフォーム投資も資産額に織り込まれ難い。
投資額累計に対し、資産額が500兆円程度下回る。
引用以上
まぁ要するに、アメリカと日本で、住宅の「減耗率」のとらえ方が
まったく違いがあるようです。アメリカでは法定減価償却年数を
27年とみる法人税法上の会計基準があるけれど、
それとはまったく違うように、より資産保護の側に立って
住宅資産を査定するのに対して、
日本では、法人を対象とした国の会計基準そのままに、
それも日本の住宅の一般的な劣化速度を勘案して
22年と短く耐用年数を決めて、その「減耗率」を設定しているという。
極言すれば「不動産業」の業としての未成熟が引き起こしている
民族的損失である可能性が高い。
Posted on 5月 30th, 2015 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅取材&ウラ話
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