きのうご紹介した住宅のディテールです。
その土地の持つビューポイントをたったひとつに引き絞って、
開口部の意味合いを最高に際だたせているのですが、
同時に、それ以外の部分でも、
シンプルさの中に、デザインマインドを凝集させていました。
日常使っていく住宅の機能のなかでも
階段の占める意味合いはきわめて重要なモノがあります。
わが家の新築の時にも、1階の天井高さを低く抑えて、
しかも階段の段数を普通よりも1段多くした。
その驚くほどの上がりやすさに、
デザインの本質的な意味合いを実感させられたことがあります。
わかりやすいスペース配置のデザインを一通り見終わったら
わたしの場合、いつも通常使いの耐久性デザインについて
すぐに注目が行くのです。
ある意味では、断熱気密に配慮すると同じ感受性から
こういった部分に、「モノをつくる」精神が宿るのだと思っています。
この階段の踏み板(別名・段板、水平板)と蹴込み板(けこみいた・縦板) は
単純に水平垂直ではなく、踏み板の面積が垂直よりも3cm奥に長い。
こうすることで、いわゆる「上りやすさ」が際だってくる。
つま先が蹴込み板に突き当たるようなことがなく、
安心して、ラクに上り下りできるようになる。
人間工学的な「配慮」がされているのですね。
そして、踏み板・蹴込み板は同一の材質から作られていて
その板は側面から見ると
実に薄く5mmに満たないような厚みと見えますが、
本当は、30mmの厚みの材料だと言うこと。
要するに端部をほっそりと見せるようにデザイン処理しているけれど、
実は力強い構造を持っています、ということなんですね。
かたちと見え方、その両面からデザインしていて
なお、使い勝手へのきめ細やかな気配りが込められています。
設計者に聞くと、
「ここはかなりコストをかけて仕上げました」ということ。
シンプルでアキのこないデザインに加えて
バックグラウンドでの重厚な配慮。
こういった部分に、強く住宅の豊かさを感じるようになってきています。
Posted on 3月 24th, 2015 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅取材&ウラ話
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