十和田市に十和田市現代美術館があるということは
知識として知っていて、気にはなっていたけれど、
どうしても行ってみたいとか、思ったことはなかった。
今回、往路に十和田があったので、立ち寄ってみることにしてみました。
建築設計を担当した西沢立衛さんは、
妹島和世氏とSANAAというユニットを設立されていて、
最近、パリのルーブル美術館のコンペを勝ち抜くなどの
世界的な活躍をされている・・・。
世界的な活躍、と言葉で書いてみるとその印象って
ものすごく強いものがある。
よく「欧米では・・・」という、たぶん明治以降の日本社会に
根深く息づいているコンプレックスを強く刺激する言葉だと思う。
そういう意味もあって、やはり建築は、そこにあるものに触れて
はじめて「感じ取る」ものであるように思うことにしています。
どんなに「欧米で認められた」と言われても、
その地にふさわしくなければ、やはり意味がない、と思うのです。
そんな思いを持ちながら、この美術館を探訪したのですが、
そこで展示されていた「現代アート」との
建築のコラボレーションは、やはり素晴らしかったです。
エントランスや入り口って、美術館建築では最大の見せ場のように
演出されるものだと思うのですが、
「現代芸術」にふさわしく、ごく日常的な周辺住宅街の風景の中から
さりげなく入っていく、それも「え、これ、入り口なの?」
とでも感じられるようなごく自然な導入。
そして素材は現代の工業製品っぽいシンプルな素材の導入動線を
通っていく。これがガラスの開口部と屋根だけの空間。
しかし不思議と馴染む感覚。
目的の空間に行き着くための「縁側」を抜けていく感じに似ている。
で、そこからすでに展示はスタートしている。
「さぁ、ここから芸術を鑑賞しろ」というような強迫感がない。
その通路を抜けてはじめて、入場料を払うゲートがあって、
そこから先は撮影は禁止。
そうするとこの「通路空間」というのは、どういった位置づけになるのか
判断の整理整頓がなかなかむずかしい。
しかも、入場ゲートのボックス空間自体も現代アートの展示空間になっていて
床面いっぱいにカラーテープによる彩色が施されている。
どうも、そのような作品展示の連続で
建築と現代アートのコラボレーションが徹底していると感じます。
美術館というのは、定期的に展示作品を変えていくのが常態でしょうが、
この十和田市現代美術館では、そのようには想定していないのではないか。
あまりにも常設展示空間がハマっている。
天井高も、空間の広さも、照明の取り方も、
すべてが「似合って」しまっている。
美術館というと絵画が主役であって、という概念では
この建築はどうもくくれないような空間だと思いました。
で、最後、レストコーナーもあって休んできましたが、
ここでも天井まで、8mくらいはあって、その大空間に柱1本もない。
大開口のガラスの壁が1面にあって
それ以外は、素材の形がまったく感受できないように
真っ白、ということを相当に施工上意識させられたに違いない壁が
ほか3面を構成している。
採光された外光は、その空間の中でさまざまにバウンドし,反射し、
そのグラデーションが、この場所の自然の息づかいも感じさせる。
っていうような体験をさせていただきました。
あらためて、西沢立衛さんの名前を記憶した次第です。
面白かったです。
Posted on 3月 18th, 2013 by replanmin
Filed under: 住宅取材&ウラ話