日本の建築って、その美感の根源は屋根のラインにあると思う。
わたしは、日本という歴史時間は縄文からの10000年ではないかと思っています。
で、その歴史時間のなかで展開してきた住宅建築について
いろいろに見続けてきているのだと思います。
縄文は竪穴式住居で、その居住体験をわたしたちはずっと持ち続けていると思う。
竪穴住居はそのプロポーションで考えると
写真のような屋根のなだらかな下降線として残っているのではないか。
で、その内部で煮炊きするようになって、煙出しが必要になり、
写真のような「入母屋」形状になっていったのでしょう。
全体として、自然素材である萱などのなだらかな曲面がDNAに刷り込まれていって
屋根に「ビーナスライン」が欲しくなっていった。
どうもそんなような流れだったのではないかと推測しています。
ところが、わたしは北海道に住んでいる。
北海道の住宅がいちばん初めに日本建築を否定したのは屋根の問題から。
開拓初期、北海道に建てられた住宅は
その家系が永く住んでいたその出身地の伝統的な住宅スタイルだった。
その当時はすでに一般的に屋根には瓦が乗せられていた。
その瓦屋根が積雪・落雪・氷柱などの連鎖から一冬で見るも無惨に剥脱する。
さまざまな要因がそこにはあったのですが、
最初の結論として、屋根は瓦を止めようということになった。
そして変形屋根とかの試行錯誤を経て、
雪を乗せたままにする陸屋根、無落雪屋根が登場して
北海道の住宅風景は一変し、そして固定化されていった。
そこにはフランクロイドライト建築のような、水平ラインの美はありえるけれど、
写真のようなビーナスラインの屋根の美は消えて行ってしまった。
十数年ほど前に建築された札幌ドームでは、
逆ビーナスラインが実現しましたが、そこでもさっそく落雪によって
周辺に駐車したクルマが破損するという事態も出来した。
そういった流れで、北海道には屋根の曲線美というものは消えてしまった。
今日では、そういった北海道住宅の潔さが、
モダンデザインとして、むしろ本州地域でも広がりを持ってきている。
しかし、どうなんだろうか?
これからも行く末を注視しなければならないと思っています。
Posted on 2月 13th, 2013 by replanmin
Filed under: 住宅性能・設備