最近、札幌での観光ということに関心が向くことがあります。
地元の人間なので、自分自身はあんまり関心を持つことがないテーマだけれど
他の地域から札幌に来る人の目線で考えてみると
札幌のいまの環境の厳しさがひしひしと感じられて、
危機感を持ってしまう。
それでなくても、今の市長さんになってから、建築の世界では
新たな魅力的な都市再開発プロジェクトが
ほとんどストップさせられているので
震災以降、活気にあふれ魅力的な再開発がすすむ仙台と比較して
都市の魅力で、相当の開きが出てきていると感じています。
残念ながら、いまの市長さんからは
都市経営のビジョンが見えてきません。
きのう、用事があって、札幌の中心部に出掛けてきて
札幌観光の目玉でありながら、長く「がっかり度」ナンバーワン
と言われ続けている
「時計台」周辺を歩かざるを得ず、見てきました。
時計台自体は、いろいろな見方があろうかと思いますが、
日本の木造建築の世界に「洋風建築」という領域を切り開き、
住宅建築の世界で大きなシンボル的な存在であり続けたものとして、
本来その価値は高いと思います。
先年の修復作業もきちんとされているので好もしく思っています。
問題なのは、こういった大きな資産のみにただ頼って、
その価値観をつねに再評価させるような、いわば「文化的な仕掛け」を
怠り続けてきた、「文化活動の不在」にこそあるのではないか。
そういった弊害は、時計台を囲む周辺環境に如実に表れていると思う。
いま行ってみても、周辺には
時計台の文化性を持ったテーマ的なものはほとんど見られない。
西側に隣接しているのはふつうの商業ビルだけれど、
特段の関連施設は見られない。
せっかくの時計台だけれど、それをどう活かしたらいいのか、
発想の痕跡すら見いだせない。
北側には、その名も「時計台ビル」というビルがあり、地下も含めて
時計台とのアクセスを意識した設計にはなっているけれど、
こちらも、これをどう活かすべきかについて、
やや諦めの気分が感じられる。
きのうは、日曜日の午後に行ってみたのですが、
オープンカフェすら営業していなかった。
東側に至っては最悪で、「札幌商工会議所」のビルがあるけれど、
時計台に向かって隣接しているのに、
駐車場の入り口になっているに過ぎない。
その隣には個性的な「北地蔵」というカフェがあったのだけれど、
それも廃業してしまって、まことに殺風景そのものになっています。
このような周辺環境では、少なくとも滞留的な要素、
賑わいの要素が感じられない。
まぁたぶん、これまでさまざまに取り組んできた結果ではあるのでしょうが、
このまま推移すると、ある日突然、
観光客が誰も来なくなってしまうのではないか。
端的に、「時計台の魅力の再設計」が必要なのではないでしょうか?
そもそも時計台の価値とはなんなのか、
最初に定義したような趣旨に沿って、
札幌の重要な観光資源の分析をして、
そこからどのような文化的資産を磨き上げていくのか、
そういった「戦略的見直し」が不可欠に求められているといえるでしょう。
残念ながら、現状を打開する発想は感じられない。
日々、空白が広がって行きつつあるように感じられてなりません。
惜しい、もったいない、という気持ちが強い。
Posted on 10月 15th, 2012 by replanmin
Filed under: 「都市の快適」研究