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多賀城の災害公営住宅と保育所

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人間社会では、こどもを生み育てるという以上の存続動機要因はない。
換言すれば、人間社会は次の世代に受け渡すことだけが
この社会を共有し構成している最大の要件だと思う。
人間はお金も、財産も地位も、死後に持って行くことは出来ない。
なにごとかをこの世に残せるものがあるとすれば、
それは次の時代を担っていく人間を創り出す、育てることだと思う。
考えてみれば、そもそも家を持つと言うことの
最大の意味合いは、次世代そのものである子どもが、
安全で安心できる環境の中で育っていくことを
現役世代の人間が望むからであると思います。
アイヌの男たちが、結婚と同時に自分で新しい家族のための家を建てる
ために、主要な構造材を一生懸命にヤマから切りだしてくる、
一方新婦は、新しい家族のための生活用具を一生懸命につくる。
そういった生活文化を連綿と伝え続けてきたそうです。

東日本大震災後、多くの「くらし」の喪失があった。
そこから新たな場所での生活が再建される営為が行われている。
この多賀城の災害公営住宅では、160戸の生活のイレモノがつくられた。
無機質なコンクリート多層階住宅だけれど、
その一隅に、というか一番陽当たりも配慮して、かつ低層な建築として
保育所が同時に併設されていた。
メインのエントランス動線、建物への導入動線左側に配置されている。
子どもを持っている世帯ばかりではなく、
ほかの世帯の人たちにも、子どもの息づかい、様子が
伝わってくる配置位置。
その外部壁面には、2枚目の写真のように子どもたちの手作りの
タイルも貼り込まれていた。
人間らしいくらし環境というのは、こうあるべきなのではないだろうか。

コミュニティの再生とか、人間同士の関わり合いとか、
そういったテーマが復興建築では、建築に要請されてきたけれど、
人類社会でスタンダードであることに、
われわれはもっとシンプルであるべきだ。
子どもが元気な社会には、希望がある。
そこから生き甲斐も生まれ、生き抜く力も生まれ出るのだと思う。
ごくシンプルだけれど、共感を持てた建物でした。

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