人口減少社会というテーマは、いまの日本の最大のテーマ。
というか、いまの世界情勢の基底でもこのテーマが大きい。
資本主義的発展においては、人口増こそが「市場」概念そのもので、
いわゆる「右肩上がり」というグラフや、「坂の上の雲」という概念にも似て、
明るい未来感そのものを表現していた。
世界の中でもヨーロッパや極東アジアでは少子化が進み、
アメリカでも欧米系人口は減少傾向にあるとされる。
欧米系ではなくヒスパニック系が増加し、そういう人口構成比率の変化が
コアなアメリカという保守概念を刺激してトランプ政権という選択がされた。
反グローバルなアメリカファーストとして結果してきたように思われます。
ヨーロッパは労働市場の開放による恩恵をもっとも受けるドイツ主導で
移民の受け入れを進めたけれど、その社会的な痛みに
耐えきれない各民族の中間層、下層が折からのテロへの忌避・恐怖もあって
「極右化」と錯覚される反乱を起こすようになってきた。
イギリスのEU離脱、各国での自国第一主義勢力の台頭は、
いずれにせよ、こうした資本主義の危機感がその根底にあると思える。
少子高齢化は、日本でもっとも先端的に進展してきている。
他の先進国は移民政策について、ある程度の免疫を持っているのに対して
明治維新で歴史の中で最後に「国民国家」資本主義体制を革命選択し、
さらに、その資本主義市場争奪戦争に敗北して人口をもっとも毀損した国として
「戦後」という人口急増という局面を経て、今度は一気に急減期を迎える。
世界を覆った国民国家思想の最後の参加者で最優等生でもあり、
なお島国でもあるので、単一民族志向がいちばん強いのが日本。
そうすると容易には移民の受け入れには抵抗感が強く、なかなか進まない。
世界最高の健康保険制度のおかげで高齢化は爆発的に進展した。
一方で少子化は、資本主義の進展と同時進行した「個人主義」によって
それまでの地縁血縁社会から、無縁社会化することで加速された。
政治的に、地縁血縁社会的統合にマッチしていた旧自民党支配から
経済成長政策を持たず財務省の増税路線を官僚の言うままに実行しただけで
日本経済にマイナスの影響だけをもたらし
混乱に終わってしまった民主党政権を経て、無縁社会的個人主義を受け入れ
なお、経済成長を追求しようと考える第2次安倍政権の強さは、
若い世代にその支持基盤を持っているとされる。
いまの安倍政権の強さは、日本民族が選択している少子高齢化対応に思える。
いまの野党はこのことにもっとも気付くべきだと思う。
しかし、戦後的価値感で拡散しきった地域資産は無情な現実にさらされている。
建築は、戦後的拡大局面で大量生産として大きな役割を果たしたけれど、
人口縮減期には、そう大きな需要を見込むことはできない。
そういうなかで日本人による地域の集中と選択は容赦なく地方を直撃している。
写真は先日行ってきた北海道愛別町の地域遺産的建築再生事例。
こういった地域が生き延びて行くには、集中と選択そのまま、
「なにを残し、なにを廃棄していくか」が大きなテーマにならざるを得ない。
そのとき非定住だけれどその地域にひとを集める的な、地域が生き残るための
「関係人口」のよすがのような建築の役割は大きくなると推定できる。
そのときの要素条件は、新奇性ではなくノスタルジックな情緒性であることも
ある程度、常識化してきているように思う。
人口減少が生み出す変化に対応していく、地域の中での建築への
そういった要素での気付きが求められてきていると感じています。
Posted on 8月 20th, 2018 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング
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