地方にいて、しかも住宅に特化した仕事をしていると、忙しさにかまけて
公共的建築への強い興味を持つことはつい少なくなる。
っていうか、興味はあるし関心もあるけれど、
もうちょっと手ざわりや、それこそ空気の質感といったレベルに興味が向かい、
その余白でしか、公共的建築を認識していない。
そんななかでことし、6月の「日本学術会議」や今月の「安藤忠雄展」で
この「国立新美術館」をはじめは外観だけ、2度目は内観から、
半年ほどの時間スパンの間に体感することができた。
学術会議の時は、それこそ六本木の地下鉄駅から偶然、学術会館までの
通りすがりに「こんなのあったんだ」レベルで見ていた。
しかしこの特徴的な外観はやはり強く印象づけられた。
当然のように「誰が設計したんだろう」という興味は持たされた建築だった。
こういったナショナルな投資が首都にはどうしても集中する。
面白い建築計画は首都になるのはやむを得ない。
で、そしてこうした施設の建設に当たって、才気に満ちた設計者はどうしても必要。
その国に「ふさわしい」建築が求められるのは必然。
建築的な側面から、また文化的歴史的側面から、総体としての
「社会的」判断がそこに加わって、建築計画が固まっていく。
この「新美術館」とは、その最初の遭遇からほぼ半年の経過があって、
ちょうど「安藤忠雄展」が開かれ、その会場ということで、
ちょうどいいなぁと楽しみにしていた再会。
そもそも、この「新美術館」というのはどういった性格の建築なのか?
Wikipediaには以下の記述。
〜国立新美術館(The National Art Center, Tokyo)は、東京・六本木にある
美術館。日本で5館目の国立美術館として2007年(平成19年)1月に開館。
文化庁国立新美術館設立準備室と独立行政法人国立美術館が主体となって
東京大学生産技術研究所跡地(さらに元は旧日本陸軍歩兵第3連隊駐屯地跡地)
に建設された美術館。歴代の館長はすべて文部官僚からの天下り。
国立美術館としては1977年開館した国立国際美術館以来、30年ぶり新設。
延床面積は日本最大で、それまで最大の大塚国際美術館の約1.5倍に及ぶ。
独立行政法人国立美術館に所属している中で唯一コレクションを持たない為、
英語名は収蔵品を持つのが通常のミュージアムではなくアートセンターを用い、
THE NATIONAL ART CENTER-TOKYO」を名乗る。
設立目的を展覧会の開催・情報収集およびその公開・教育普及としている。
日本の芸術文化の育成・国際的な芸術情報発信拠点としての役割が期待された。
黒川紀章設計の美術館としては最後のものとなった。〜
比較的に分野を限定しない幅広い「文化発信」機能を持つようで
今回の「安藤忠雄展」のような催事は、こうした狙いが現実化したもののようです。
そういえば、今回展示は「開館10周年」の周年イベントでもあるとされた。
建築家というひとたちは、「美術館」で展示されることを希求するタイプが多い。
絵画や彫刻とはスケールが違ってプロジェクトが直接社会を巻き込むので、
いわゆる「作家性」は公共性の枠内に閉じ込められざるを得ない。
そのことにある種のコンプレックスに似た心情を持つようなのだ。
またこうした国家プロジェクトをデザイン担当する「納得感」を担保するために
「高名である」ことがどうしても不可欠になることは十分に了解できる。
公共建築が社会的存在である以上、これは無限に続くテーマでしょうね。
日本の場合、こうした建築家としての「社会性認知獲得」のために
住宅もそのひとつの「成り上がり動線」にもなっていることが特徴的であるのかも。
まぁそういったあたりから、住宅のシーンと繋がる興味が存在するのですね。
住宅作家といわれた人が、あるとき巨大プロジェクトを率いたりする。
本日はこういった「公共建築への素描」テーマということで。
少なくともこの新美術館、わたし的には印象的な建物だと思わされました。
Posted on 11月 21st, 2017 by 三木 奎吾
Filed under: 住宅マーケティング, 出張&旅先にて
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