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少ない家族数の家って?

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おとといの続きで、家と家族数の話です。
さて家族数の減少は、どんな変化を家にもたらすのでしょうか?
この問いで思い出されるのが、たったひとりのために建てられた小樽市銭函の、海の見える高台に建てられた家。この家は、仕事に明け暮れてきた自分の人生を振り返り、最後は思い通りの生き方をしたい、と設計者と一緒に考えてたどりついたもの。
建て主さんはべつに独身ではなく、夫婦が暮らす家・日常を暮らす家は小1時間ほど離れた、以前から住んでいる札幌にそのまま建っているのです。
ようするに、個人の思い通りに好きな家を建てたが、建ててみたら奥さんは一緒には住んでくれなかった、というような家なんですね、これが。
家としてはたいへん明快なプランでして、「海を眺め、その表情の変化をくらしのなかで存分に楽しむ家」ということで、そのこと自体は、1/fのゆらぎ、って一時期よくいわれた「自然のリズム」と同化したいという欲求を満足させるプランなわけです。
ものすごく「豊かな」家づくりですよね。
しかし決定的に重要なのは、団塊の世代でたぶん進行している、夫婦の価値観のずれゆき、というポイント。奥さんは、きっと自分なりのくらしを楽しむ生活ネットワークが存在して、それから切り離されるくらしは考えられないのだと思うのです。
一方でご主人は、一生掛けて(好きなことを我慢して)会社勤めしてきて、ようやく念願かなったような暮らし方を実現できた、のです。
この「ずれゆき」は、別に愛情うんぬんという問題とは関係がないだろうと思えます。
これからの「注文住宅」を考えたとき、どうも限りなく「個」の方向が強まってくるのかなぁと。
さてさて、住宅のつくられようは、どの方向に向かっていくのでしょうか。
<写真提供/安達治>

立ち去りがたかった家

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その家に行くには、最後は徒歩になった。
ひとあしごとの足下からは、ビクビクとした生命感そのものの虫たちがいっせいに飛び上がる。
十勝ツーバイフォー協会という建築工務店メンバーが札幌で住宅見学を希望したので、この建築家・平尾稔幸さんの週末の家、っていうかロシアの「ダーチャ」と呼んだ方がふさわしそうな建物を訪れたわけです。
舗装道路から約200mくらい歩いてようやくたどりついた。
しばし、メンバーの間から声が出ない。およそ、住宅というイメージとはすべてにおいて違う。
冬期間の雪を考えて主たる居住スペースは2階。
眺望を優先して、間口は1間なのに奥行きが長いウナギの寝床のような平面計画。そこから突き出すように寝室だけが出っ張っている。ベッドのうえは低い三角屋根なりの窓が開けられていて、開け放てば満天の星空の下で眠るかのようだ。
設計者の平尾さんが長靴姿で迎えてくれた。ここにくるとややしばらくは草むしりに追われるのだと、笑っている。
居間コーナーとおぼしきあたりで、平尾さんが座り話し始めるが、訪問者はどこにすわるべきか、所在なげに立っている。
案内人ではあっても、自身もはじめて訪れるわけで、わたしも勝手がわからない。
どうも窓に面した側に、ベンチのようなものが見られる。それに腰掛けるのだそうだ。
座ってからの眺望は、まるで列車の窓からの眺めのようで、いったん腰を下ろしてしまえば、過不足のない空間的な充足感に満たされてくるから不思議なものだ。
だんだん話がディープになってくる。
こういう空間では、建前っぽい話はでてこない。
「あはは、これでいいんだ」
誰かがいうと、どっと笑いが沸き起こる。
でも、一見破天荒な建築に見えて、2重構造の屋根・壁、通気の考えなど、まさに理にかなっている。
見学の予定時間におされているのだけれど、立ち去りがたい場の魅力に足が動かない。
ふりむき、振り向きしながら、ようやくその家をあとにした。
暑かった夏の日の住宅見学でした。
<写真提供/安達治>

夫婦ふたり働らいている家

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最近思うのですが、近頃建てられている住宅って、たとえば100年も超えて建っている住宅の作られようとはまったく違う。
どんなことが違うんだろう、と考えて思い当たったのですが、っていうか当たり前なんですが、住む人の数と、用途がまったくちがうってこと。
そのなかでも昔はほとんどあり得なかっただろうと思われるのが、夫婦ふたり働らいている家(いわゆるダブルインカム)でしょう。
昔の家って、残り続けてくるプロセスでたぶん多様な使われ方をしたに違いないのです。あるときは親子3代が同居もしたし、それ以上のこともあったかも知れない。家には、そうした状況の変化への対応性が求められていただろうと思います。
少子化・高齢化社会の到来で、家の住み手も変化してきています。
ちょっと前なら、公団住宅の間取りプラン(夫婦と子供2人を基本とした)が、ごく当たり前に多くの人に受け入れられていた。
そのことが作る側にも大きく作用していわゆる「規格化」された、「商品型住宅」を生み出していたといえるのでしょう。でもいまやたとえば札幌市の平均世帯人数は2を切っているというような現状。必然的に、そういう住宅が検討される必要がありますね。その場合、案外広さは変わらないのが、どうも一般的だと感じます。とうぜん間取りは変わってくるのだけれど、やっぱり一番変化してきたのは、家に雰囲気を求め始めているなぁ、という点。
おっと、長くなりそうなので、今日はここまで。
でもこのテーマ、いまいちばんレアな部分なんだろうと思いますね。
写真は、ちょうどいいのがないので当社屋の夕景写真を。

秋田・雄物川の家

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東北は秋田、雄物川で取材してきました。
今回取材したのは、リプランが東北版を出してからすぐに読者になってくれて、そのなかで掲載されている「五蔵舎」さんで家を新築したお宅です。
わたしたちが東北で出会ったビルダーの中でも屈指の存在である五蔵舎さん。
いつも丹念で、こだわりに満ちた設計・施工で、本物の「注文住宅」のすばらしさを表現しています。
ややもすれば家本体だけしか考えない住宅会社が多い中で、住宅と庭のデザインもトータルに考えてつくっています。
そのためこの家も昨年末には完成引き渡ししていたのに、外構工事が完璧におわった8月終わりまで取材撮影を待っていたのです。
ダブルインカムのご夫婦のために駐車が2台分必要でしたが、ごらんのような木の表情豊かなエントランス・駐車スペースにまとめ、豊かな植栽で雰囲気のあるたたずまいを早くも醸し出しています。
一転して室内は、まさに秋田的な感性、たとえていえば角館の武家屋敷群のインテリアのような、まさに陰影に満ちた奥行きのある空間が展開しています。
もちろんプロのカメラマンの撮影で、その「空気感」をリプラン東北版誌面では感じていただけますが、わたしのデジカメでは室内の表現は、ちょっと無理。
とても素敵な家なので、ぜひリプラン東北版でごらんください。10月15日東北全域の有名書店・コンビニで発売します。
また、 当社HP でも、通販でご購読いただけます。
って、宣伝ですが、許してください。(笑)
でもほんと、うっとりとする雰囲気のある家ですので、ごらんになって損はありません。
こういう家を見て目の保養、そして空気感を体験した人は、ぜったいいい家を建てられますよ!

空間のバランス・陰影のある家

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塗り壁の写真は、先週土曜日、仙台での取材先の様子です。
以前、ある建築家の建てた住宅を取材していて、「最近の家って、こどもがひとりっきりで泣けるような場所、ないじゃないですか」と、語ってくれたのを印象的に覚えています。わたしたちの年代では、親に叱られて押入の中や、土間の隅、小屋裏など暗い場所ででさめざめと泣いていた、という記憶がある。また、古民家を取材していて、とにかく安心するのは、古い木材がもつ暗い質感。どっしりとしていてざらついた木の表情を見ているだけで、人間のこころのひだにうるおいがよみがえるような感覚にとらわれます。
そうなんですよ。
いまの家が昔の家と決定的に違うのは、この陰影感のなさなんです。モダン志向でやってきた日本。なんでも開放的にあかるく、という家が多かったのですが、それはちょっと違うと思うんです。
うれしいことに最近、無表情でのっぺりとしたビニールクロスの壁仕上げがあきられてきて、塗り壁のざらついた表情を愛するユーザーが増えてきました。やっぱりみんな同じ思いを持っているようですね。
明るい空間と、すこしダークな空間のバランス。そんなことが無意識のうちに求められてきているのだと思います。

見学にきてくれた学生さんたち

当社のオープンスペースに展示している学生の匠作品、けっこう見にきています。
応募した学生さんの場合は、思い入れもあるからか、じっくり腰を据えて見ていきますね。
ちょうど社に戻ったら、「優秀賞」受賞の北海道職業能力開発大学校のチーム2人がいました。
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左の二人がチームを組んで応募したそうです。結局、自分たちの作品の前で、くったくなくうれしそうにしていました。
若い学生さんたちにとって、このコンクール応募の体験がどんなかたちで残っていくのか、まだわかりませんが、少なくともこうして展示された作品に触れられることは、無駄にはならないと思います。
きっと自分の作品と、ほかのひとの作品と比べながら、頭の中であれやこれや、まだプランニングの体験が継続しているのではないかと想像します。
そういうのが、いちばん何かの時に役に立つんじゃないかと思えるのです。
昨年、JRN大賞を受賞したひとは、札幌でも元気いっぱいの店舗系の設計プランニング会社にことし就職しています。
この「学生の匠」が、わかい人たちのジャンプボードになってくれたら、すばらしいなぁと思います。
歳食ってるおじさんたちは、そのためにもがんばらにゃなりませんね。
右側の写真は別のグループで来られた女子学生さんたちです。

学生の匠より〜8

さて学生の匠プラン紹介の最終回
準優秀賞作 室蘭工業大学・今 知亮君チームの作品です。
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このプランでは、玄関の位置が庭に面した居間の奥に変更され、しかも床面積の4分の1ほどの大きな土間になっています。この土間と一体化した居間というオープンな構成の1階です。台所はあえて従来の玄関奥に配置して、独立型キッチンとしています。方向を変えた階段横には左右に黒く塗られた壁の中に冷蔵庫や収納装置がぎっしり詰め込まれた「生活維持装置」が入れ込まれています。トイレや洗面・浴室も考えとしてはこのなかの一部という考え。
2階もこうした「黒い生活ボックス」とのんびりと使える「セカンドリビング」に明確に仕分けされています。
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たいへん若々しい、才能を感じさせるプランでした。惜しむらくは、提案の明快さ・おもしろさに比べて、それをわかりやすく表現するポイントで、やや伝わりにくかった点。 でも、将来がとてもたのしみな若い感性です。
さてこれで入賞した作品はすべてご紹介いたしました。 今後は受賞した作品に基づいて工事が始まっていきます。
ここでもお伝えしていきたいと思います。

学生の匠より〜7

準優秀賞作  札幌市立高等専門学校・梶谷万里巴さんの作品
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女性らしい優美さが感じられた作品。階段を円形のらせん階段に変えて、その円弧をインテリア空間全体にも活かしています。デザインエレメントとして円弧をたたみコーナーにも採用しています。
2階は真ん中に吹き抜けを配置して、左右に夫婦の趣味的なコーナーにしています。互いの壁は、目線を遮る程度の斜めのスリットのみとして、集中も出来るし、お互いの気配も感じられる空間にしています。
広く使う1階と、個の空間として使う2階のメリハリがきいていて、また吹き抜けの意味もよくわかるプランですね。
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学生の匠より〜6

学生の匠・準優秀作 北海道工業大学大学院・ケセランパサランチーム
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つきつめて思い切った生活提案だったのが、このプラン。「趣味に生きる、楽しんで暮らす家」という明快なコンセプトで、なんと1階は夫婦の趣味を楽しむこととパブリックな機能だけにしたワンルーム的な空間に。
土間で来客をもてなすこともでき、奥さんの布折りの趣味や、ご主人のためのアウトドアとのアクセスにも配慮しています。
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イメージとしてはこういう暮らし方。2階もほとんど間仕切りのないオープンな作りで、壁に沿って必要な生活装置が配置されているシンプルなプランです。
若い人が考えたにふさわしい提案内容だなぁ、という印象でした。
かえって若い人の、それもダブルインカムの夫婦の新築住宅に似合いそうなプランかも知れませんね。

学生の匠より〜5

準優秀賞作「赤秋を過ごす家」〜北海道職業能力開発大学校・りんごぐみ
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赤秋というのは、青春の対語ということで、子供も巣立ったあとの暮らしを表現している。
夫婦二人だけのくらしに対して、建築的にもゾーニングの仕分けでパブリック・プライベートを「緑の廊下」という装置的な仕掛けをもちこむことで、自然環境とのつながりを意識させ、豊かさを演出するものです。
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玄関を入ると土間空間が広がり、壁に沿っていくと縁側〜庭にいたる「緑の廊下」があります。ここの天井は吹き抜けていて、家の中の明確な区切り目になっています。
その奥は1〜2階ともプライベートなゾーンが集中されています。手前側は土間や居間などといったややパブリックなスペースに仕分けられています。(明確なのはいいのですが、2階では吹き抜けに通路がなく、玄関側の2階に行くには飛んでいかなければならない・・というご愛敬な設計ミスもあります)
提案のユニークさで、審査の目にとまった作品です。