本文へジャンプ

東大工学部と住宅研究

きのうはある住宅関係団体のセミナーに参加。
そこで、以前から感じていたことを再確認いたしました。
タイトルどおりのことなんですが、
東大工学部という、
日本の建築に対して最高水準の頭脳を供給する機能を持った集団内では、
ある不文律があって、
それは、住宅なんていうものは建築の全体に比較すれば
きわめて国家的価値の低い領域であって、
東大で男子たるものは、もっと国家の進むべき道を照らし出すような
そういう研究をしろ、と言われ続けているという御説。
住宅の研究なんて言うのは「婦女子のなすべきことである」というのですね。
東大に籍を置いた研究者のみなさんから、何度も耳にした経験があります。

東大というところでは、
こういう考え方というのが連綿として伝わってきているのでしょうね。
それが日本の国家発展を支え続けてきたのも事実でしょうから、
ある意味では是認せざるを得ない。
もっと論を突き詰めていくと、
ある東大出身者の方から、戦争末期の学徒動員のときに
日本の再建のためには実学たる工学部学生が必須の存在になるから
学徒出陣の順番を一番最後に回すように考えていたというのですね。
東大生という、国家の中枢を担うべき将来の「タマゴ」たちに
日本国家の意思として、そのような不文律としての強制力が存在するのは
ある意味、理解出来るところだと思います。
そうした種類の「使命感」には、わたし自身は賛同する気持ちがあります。
やはり、だんだんと国に対していろいろに取材を進めてくると
こういったタイプの「国家意志」というものが見えてくるようになる。
市井に暮らし続けてきたわが身にしてみると、
まことにすさまじき世界だなと思い知らされること、頻りであります。

このようなことは、
いい悪いはまったく別にして、
厳然として存在し続けていくだろうというのも
明瞭に理解出来ます。
逆にこういったタイプの「使命感」が喪失したら、と考えたら、
そのことにも、大きな不安感が迫ってくる。
明治以来の、国家意志の実質部分というものを
感じさせてくれる瞬間でありますね。

<写真は,初めて泊まった千歳空港のホテルからの眺望であります>

Comments are closed.