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壁のない家のコンセント

こういうテーマ設定だと読むみなさんはどう思われるでしょうか?
建築を少しでも知っている人だと、
あ、ちょっと批判的に書くつもりなんだなと思われてしまうところですね。
なので、あんまり積極的に書くということにはなれないのですが、
でも今回うかがった民宿では、まったく他意はなく本当にその違いが面白かったのでした。
まぁだからといって、肯定するものでもないのですが、
普段まったく見ることもない建物なので、新鮮に楽しんでいた次第。
住田という町は、気仙地域の木材供給地域で、
たぶん、伝統的に在来の木造技術者、大工の伝統が息づいている。
北海道にいれば、そういった伝統的な作りの家屋には触れたくても
なくなってしまっている。
で、そうした建築では、まごうことなく「柱と梁」だけで建築としている部分があって
壁はなく、4面が障子や襖といった簡易な建具で仕切られているだけ。
したがって「断熱」が施される壁がない、断熱という考え方がないのです。
建築性能的に考えれば、骨だけのテントとそう変わらない。
10月の岩手県南部で、ほぼ外気温と連動する室内気候のなかにいる。
おかげさまで夜の冷え込みはそう厳しくはなく、
たぶん、10℃前後と思われました。
なので、特段の不都合も感じることなく、朝、若干床が冷たくて
スリッパなしでは木の床面を歩くのが差し支えがあった程度。
まぁ、逆にもっとも過ごしやすい時期に体験することが出来たと言えるでしょう。
まず北海道では体験することのない空間で
自然の中で素裸になって過ごしているような爽快感を抱きました(笑)。
まぁ、気持ちいいくらいの断熱無視の建築空間であります。

こういう建築では、思わぬ発見もあったりする。
パソコンやスマホなどで、充電したいとお願いしてOKいただけたので
コンセントを探したのですが、ふつうは壁にあるわけで、
あらら、と、壁がない建物なので、どこに? と思って探しました。
で上の写真です。
ちょっと写真撮影、寄りすぎでしたが、
柱の下部にあったのですね。
細い柱の断面にタテにコンセントが組み込まれている。
家人に聞くと、「そんなの当たり前でしょ」と屈託がない。
壁がない部屋は多いので、電気配線はこういうケースが多いのだとか。
外壁に面していない柱に部屋の裏側から穴を開けて配線するそうです。
裏側までは確認しませんでしたが、この柱と梁と建具で囲まれた和室には
外周に縁側があって、そういう配線が可能なのでしょうね。
北海道の建築で考えれば、構造の柱はなるべく合理的に少なくしたいので
このようにたくさんの柱は使わない。構造柱は外周に沿って
大壁に仕上げて、壁面には断熱材を仕込むことになる。
気密が破綻しやすい電気のコンセントまわりには
専用のプラスチック型枠までも用意されて気密の連続に配慮されている。
同宿したのは、四国と九州の方でしたが、
さすがにその人たちの住まいでも壁はあるようで、コンセントは
壁に仕舞い込まれていて、柱というのはあんまり見たことがないようでした。
ただ、コンセントの位置に注目して建築の違いを知るというのは
あんまり気付かれなかったポイントだと言うこと。
「面白いことをいうヤツだな」とご主人には面白がられて
酒をもっと飲めと盛んに勧められて、やや閉口させられた次第です(笑)。

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