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初期の「田園調布の家」

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関東の住宅シリーズ、その2です。
今、高級住宅の代名詞になっているのは、やっぱ地名。
そのなかでも「田園調布」っていうのは、わかりやすい高級住宅地。
その初期に建てられた住宅がこれ。
関東大震災で密集した街並みの結果、類焼した経験から
復興期に、「田園住宅」という発想が生まれ、アメリカの郊外型住宅をコンセプトに
ゾーン開発された、という経緯が説明書きに書かれています。
平屋で、屋根の連なりでデザインがまとめられ、
たっぷりの庭に対して開かれた間取り計画。
内部は、当時考えられた「欧米住宅」のエッセンスが凝縮されていて
和室もありません。調度や壁紙のデザイン、
水回りの設備、ガラスの多用などなど、
今日に連なってくる日本のモダニズムというものが理解できる。
ここから、こうしたものへの強いあこがれから
日本の現代社会文化は始まったんだ、というように感じられます。
建てられた当時は、きっとたいへん異国的で、
目指すべき近未来の日本人の暮らし方の形を明瞭に示していたのでしょうね。
司馬遼太郎さんの本を読むと、
日本はずっと、こういう「博覧会的な都市・建築」を目指すべき形として
社会に目標が与えられてきたのだ、といわれます。
たとえば、仏教と統一国家という当時の東アジア国際情勢の中で、
日本が迫られていた実現すべき概念を、明示的に示した「奈良のみやこ」都市。
そのときには、きわめて強烈に「国際的」なことがらを
わかりやすく移築して持ってくる、というワケですね。
それも日本社会の伝統のようなものなのでしょう。
この田園都市住宅、というコンセプト型住宅からもそれが強く感じられます。
今日、あまりにも一般化されていて、そのことの始まりに
ほとんど注意が向けられていない、そうした社会文化の
ターニングポイントだったのかも知れない、と思います。
だから、長くわたしたちの意識の中に「高級住宅地」というイメージが
変わることなく蓄積されてきたのかも知れない、なぁと。
そんな印象を抱かせられた住宅でした。
単純に美しいし、庭との関係もここちよい
とてもステキにわかりやすい、うっとりする家ですよね。

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