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【ZEHが決定的に忘れている「デザイン」視点】

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きのうは前の日のZEHについての東工大・秋元先生の講演を受けた
「分科会」に参加しておりました。
その論議の成り行きを聞いていながら、気付きが膨らんできた。
ZEHについては、人類史的な危機であるCO2排出の削減、
地球環境問題の危機の深まりという角度から
きわめて大きなテーマであることは、間違いが無いと思います。
政府として、この問題に取り組むことは当然なことでしょう。
しかし、経産省が言うZEHのユーザーメリットを見ると暗澹とする。
1 光熱費が削減される
2 防災性が向上する
3 健康・快適性が高まる
ということなのだそうです。
ハッキリ言って、ここまで陳腐とは驚かされる。
まぁ、3に至っては無理矢理数字あわせで付け足しで問題外としても、
1,2にしても、ZEH以上に有効な手段はいくらでもある。
2は、太陽光発電・PVを屋根に載っけてあるから、
それで発電する電気が災害時に有用であるというスジでしょうが、
災害は、ひとつのパターンで考えられるものではない。
ないよりはあった方が少しはマシとでも言える範囲ではないか。
また1の光熱費削減は、断熱の強化をもっと進めた方が有為は明らか。
どうしてもPVで家庭エネルギーをキャンセルさせることが
自己目的化されていると感じられる。
で、政府側は世界に公約したことは実現しても
家を建てるユーザーには、最大のメリットは補助金だとかになってしまう。
いかにもポリシーのない目先の利での、ユーザー釣り上げと思える。
住宅ユーザーという存在をそのように「利用」する視点には
やはり疑問を感じざるを得ない。
正面から、地球温暖化対策として透明性を高めたメリットを訴求する方が
まだしもではないかと思われる。

で、それ以上に問題だと思うのが、
大量のPVを載っけることが日本の住宅のデザインを変化させること。
南面の屋根面を最大化させるように、片流れが採用されることが多い。
経産省の側ではそういった「結果」については
一切責任を取る考えはないと想定できます。
屋根の問題で言えば、北海道は積雪に対してさまざまな地域としての
人々の経験の結果として、無落雪屋根フラットルーフが
多数派として選択されている。
そもそも雪が大量に残留する北国の屋根面にPVを載っけても
発電の効率は期待できない。
経産省の説明では、事実としてのこの問題には
「目をつむる」ことにして、意味が無くても載っけてくれれば良いとしている。
こういう対応が「エコロジー」かと言われれば大いに疑問。
さらにこのような選択の結果、片流れの住宅が増えていくことについて、
日本の住宅デザインが大きく変化することになる。
伝統的には切妻や寄せ棟が主流であり、
北海道では陸屋根がメインで選ばれてきた状況の中で
そのような「日本的美観意識」が形成されている。
それに対して無意識のままに改変が加わっていくことになる。
本当にZEHを推進したいのであれば、補助金ばかりではなく、
日本民族としての美観意識を総動員して、
どういったデザインがZEH住宅にはふさわしいのか、
というように正面からデザイン論議も同時に起こすべきだ。
地球環境を守りながら、どのようなデザイン・美観を獲得すべきか、
国民レベルで検討すべきではないのか、
そんな強い内語を抱えさせられていた次第です。
みなさん、いかがお考えでしょうか?

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