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さて、根雪かなぁ?

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ことしも師走の訪れから、はや6日。
札幌もすっかり冬景色が似合って参りました。
といっても、雪が降り始めてから、まだ1週間程度でしょうか?
北国に住んでいると、雪の降り方がその年ごとに違いがあって、
そういう自然との対話が、みんなの共有する関心事になっていると思います。
それはそうなりますよね、だって何日か地吹雪が続くようなときには
みんながお互いを気遣っていかなければ、過ごせない部分がある。
垣根や塀というようなものがあまり見られないのが
北海道の街並みのひとつの特徴でしたが、
それは、屋根からの落雪を溜めておくスペースがお互いに必要、という
側面が大きかったのです。
道路幅も、本州地域のような狭さでは、雪のことを考えたら
ちょっと降っただけで、すぐに交通がマヒしてしまうことから、
必要に迫られて、そのように都市計画がされたのだと思います。
札幌の何条何丁目、という地割りの地域では、
中通りの道路幅で8m、通常道路でも16mなんていう地割りになっています。
こういう都市計画に現代のわたしたちは感謝しなければなりません。
札幌が、現代都市として、交通インフラの面で他の日本の都市とは
比較にならないくらい車社会に見事に対応できているのは
こういう部分が大きいのですね。
昨年の秋田の大雪などでは、即、大交通マヒが日常化していました。
2車線道路が、そのようにまったく機能していなかった。
片側一車線になってしまえば、都市の機能としては致命的です。
ただまぁ、札幌でも最近はさすがに
中心部への車の集中で、冬場の渋滞が常態化してきてはいますけれど。
今年も余すところ、あと4週間ほど。
結局、いまのこの雪が根雪になりそうな雰囲気です。
だんだん、家のまわりのことには無頓着になってきておりまして
かろうじて、アオキのほうには薦被りをかぶせましたが、
ツツジには、雪の備えをしておりません(汗)。
でもツツジの下には、緑の下草もまだ見えております。
このまま、積もる雪が、断熱材の役目も果たすようなんですね。
だから、春になって雪が消えるとすぐに緑が甦ってくる。
この時期の北海道だから感じられる光景でしょうか。

オーニングか、エアコンか

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先日の宮城県石巻市近郊の住宅にて、オーニングを発見。
オーニングって、日射の制御には大変有効といわれるものです。
室内のカーテンなどでは、熱を取り入れてしまってから
伝導を少し緩和させる、くらいの効果しか期待できないのですが、
オーニングでは、強すぎる日射熱を遮るので、室内への伝導熱を抑えることが出来ます。
まぁ、エアコンをガンガン使うよりは省エネルギーであることは明確。
ところが、なかなかデザイン的に、取り入れるっていうビルダーさんは少ない。
エアコンの室外機は、しょううがないと考えるのに
どうしてなんでしょうかね。
それと、オーニングのメーカーなんかも、もっと工夫して
マンション用とか、ビル用とかいろいろ開発すべきなんでゃないでしょうか。
地球温暖化防止の、省エネルギーという面では、効果は高いと思われるのですが・・・。
北海道などの雪国では、積雪加重の問題もあるので、
普及しにくいと思いますが、
本州の温暖地域では、大いに地球温暖化対策にいいのではないでしょうかね。
コスト的には、確か、エアコンとほぼ同じくらいの負担になります。
このあたりが心理的に、エアコンならば暖房にも使える、という
心理を刺激して、2の足を踏ませるのかも知れませんね。
でも、この家でもそうでしたが、ウッドデッキが増えてきているので
それへの屋根かけ、と考えればコスト面でもけっこう有用性は高い。
大いに普及して欲しいオーニングって、
少し語呂かけにもなりますが、いかがなものでしょうかね。

外を見る窓、開ける窓

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高断熱高気密が一般的な家の作り方になって、
その重要性が増してくるのが、換気の必要性です。
そのために24時間計画換気が導入されるのですが、
窓の開閉の仕方なども、いろいろな工夫が凝らされるようになります。
日本の伝統的な窓の開閉の仕方といえば、引き違い窓が一般的ですが、
北方圏仕様では、低気密でとても似合わない。
金物を工夫した北欧製の回転窓などが使われるケースも増えてきます。
そして、そういうなかには、窓の機能をふたつに分けたようなタイプも
増えてきているんですね。
ごらんの窓は、高い天井空間で2枚の窓を上下に二つ並べるほどの大きさです。
そして、それぞれの左右に、
「換気用の開閉窓」がセットになっています。
こちらの窓は、網戸がセットアップされていて、
必要な時期、夏場などには常時開けはなしておくことが可能です。
回転式の窓(このケースで言えば、大きい窓自体が開けられるようになっている)
の場合には、いったん開けてから網戸をセットするひと手間が避けられません。
そういう面倒さが、この様式ではありません。
明確に、窓の用途がふたつに、
外を見るための窓と、外気のさわやかさを取り入れるための窓に
機能として分離しているのですね。
そのように機能としての明確さがあらわされた窓なのですが、
一方でインテリアの表情としてみたときには、
窓枠の幅広さ、というようにも見ることができます。
それが豊かな表情を見せる木質である、ということで、
堅牢性や、重厚感といった印象をもたらせてくれていると感じます。
そして、ほかの壁や床の素材・質感と合わせて、
いろいろな表情を持たせることが可能でしょうね。
木製窓は、たとえて言えば外の風景という絵の額縁。
その額縁のバラエティと考えれば、いろいろに変化があるのもいいもの。
やはり、プラスチックやアルミという素材よりは
木製の窓という方が、より質感に満ちた空間演出が可能でしょうね。
もちろん、性能的にも高いものです。
まぁ、塗装したりしなければならないという、メンテナンスの必要性はありますが、
家の表情に風格を与えてもくれます。
北方圏住宅らしい、ひとつの空間バリエーションだと思います。

上りやすい階段

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階段って、その家によっていろいろあります。
毎日のように取材している側からすると、
必然的に、上りやすい階段っていうことに興味を持つようになるもの。
写真は、つい先日ふたたび伺った、建築家・ヒココニシさんの自邸。
多くの住宅のプロのみなさんの見学会だったのですが、
この家の階段は、まちがいなく上りやすさ、折り紙を付けられます。
っていうことを言ったら、ちゃんと上がりの踏み段の高さや、
踏み板の寸法などをさっそくチェックした方もいました、
この家の場合、主要な居室は2階にある関係から、
とくに階段には入念な計画性が凝らされている、とも聞きました。
最後は寸法にまで至るわけですが、
まずは、左側のポリカーボネートの開口部からの採光がいい。
明るく、開放感に満ちているから、浮き立ってくる。
一本型で、すっきりとしたプロポーション。
デザイン的には、その明るい背景の中で、
厚い針葉樹合板の表面に渋い色合いで塗装仕上げしていて、
視覚や皮膚感覚にもここちよい。
また、踏み段の1段目が大きな床面になっていて、安心感をもたらす。
そのうえで、一本の野太くてシャープな鋼鉄が力強く支えてくれる。
踏み板はシャープな印象なんだけれど、板の厚みがけっこうなので、
これも繊細さと言うよりも、安心感を与えてくれている。
さらに聞いたら、踏み板の奥行きは通常よりも大きめにしているそうです。
こういうさまざまなディテールが動員されて、
使う側に、使いやすい階段、上りやすい階段、という印象を与えるのですね。
毎日毎日、体が叩き込まれるように使うものだから、
絶対に重要性が高いのです。
こういう部分、デリケートな感受性を持った作り手と巡り会いたいものですよね。

汽車の旅

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前の日に札幌で夕刻から会議があって、抜けられず
翌日1時には、青森県六ヶ所村に行かなければならない、
というスケジュールになりまして、
久しぶりに早朝、あさ7時からの列車による移動ということになりました。
北海道内での移動では、大体が車による移動になるので、
列車利用って、まずないんですね。
思い起こすと、学生の頃は東京の大学だったので、
よく汽車に乗っていましたね。
当時は、確か青函連絡船乗船を含めて、一昼夜かかっていたように思います。
いまは函館で乗り換えで、2本の特急列車での旅。
ひさしぶりに地面をひたすら走り続ける風景の連続を味わいました。
ただし、今の汽車は速いですよね。
八戸までだと、朝7時から札幌を出て、午後2時前には着く。
そこから新幹線に乗れば、夕方5時には東京駅に到着する。
都合、10時間くらいで札幌から東京に着くんですね。
これが新幹線が開通すると、5〜6時間に短縮するのかなぁ。
それでも飛行機を利用するだろうけれど、
東北への移動なら、新幹線も増えそうですね。
うちの仕事も、北海道内の高速道が整備されて、
北海道全域に広がったものなんですが、
新幹線が通ったら、東北と北海道の経済交流、広域化は
必然的に進むだろうし、期待できるでしょうね。
メリットは双方にあるでしょうけれど、
より、北海道の経済人にとって、メリットは多いと思います。
北海道からの進出を考えたら、現状では一気に東京、っていうほうが
交通的にはいまはむしろやりやすいのですが、
それだといろいろ、他の条件的に中小企業では難しい。
そう考えると、交通条件が東北に対して良くなるメリットは大きい。
っていうようなことばかり考えていると、
風景はどんどんと移っていって、昔は感動した
駒ヶ岳の偉容も、そうは感じなくなってきています。
よる年並みとともに、感受性の鈍磨は進行する一方ですね。
でも、たまの列車移動、らくちんで、楽しめました。やっぱいいね。

正直な換気ダクト

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国土交通省の住宅性能誘導策の結果、
高断熱高気密住宅が推奨されて、その当然の帰結として
換気の義務化、がされるようになっています。
計画換気の手法としては、吸気は自然吸気で排出を機械で行う
「第3種換気」が一般的に多く採用されています。
その場合、多くのケースでは天井の隙間に蛇腹ホース上の
換気経路を家中、巡らせるという手法がとられています。
弱点としては、メンテナンスがしにくいことと、
コスト高になりやすいという点が上げられると思います。
写真はきのうもご紹介した設計者の自邸の様子。
ここでは実験的に、一番安価な直行管を、片流れの屋根頂部に沿うように
配管しています。ごらんのようにその上、正直に露出。
右端に吸気用の吸い込み口が付いています。
このように配管して、屋根面に向かって上昇させて、
排出口付近で、排気用の換気扇を装置させているわけ。
換気扇も一番安価と思われる低電力消費タイプを採用しています。
ここまで、正直にあらわしていると大変清々しい印象を持ちます。
それに、別段不細工とも一概には言えない。
鉄板製の素材感も本物の質感が感じられて、
むしろ、インテリアの一部分として、調和もしています。
もちろん、こうやって装置させる一番のメリットはメンテナンスの容易さ。
可動式の蛇腹の場合、建て主が自分でなかを掃除するというのは
ちょっと考えにくい。
その点、こういう装置ならば、
なによりも、毎日目に触れるから、換気ということの大切さを
日々、教えてくれているかのようだし、
簡易にメンテナンスしようという気分も起こさせてくれます。
なにより、装置全体が、大変安価で出来上がるというのも大きい。
どうなんでしょうか?
こういう風にしてあると、けっこうメリットは大きいと思うのですが。

オモシロお風呂拝見

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きのうは、青森県南部地域のビルダーさんたち12人が
札幌で建築家住宅視察研修に来られて駆け足視察。
おとといはリプランオフィスでスライドレビューを行っていました。
地道な積み重ねではありますが、
北海道の寒冷地住宅としての性能・デザインレベルを
本州地域のみなさんに、広げていくために、不可欠な営為だと思っています。
こういう視察を積み重ねてきていますが、
その参加者の中から、けっこう性能向上への取り組み努力を
聞くことが多くなってきました。
北海道と東北、さらに日本全域で、ビルダーレベルの技術交流が
盛んになっていくように、願っている次第です。
北海道は、厳しい自然条件の中から、伝統的な束縛から自由に
合理的な家づくりが育っているアジア有数の先進地域。
このコンテンツは、北海道にとっても、環境の時代を迎えている
日本全域にとっても、大変有用性が高まってきているものだと思います。
ということなんですが、
まぁ、住宅の面白いディテールを発見できる機会にもなっています。
きのうの研修でも、何回かうかがっている小樽市の建築家・奥村晃司さんの
職住一体型住宅でのお風呂で、ディテールを再発見。
眺望を楽しむお風呂の配置的な面白さに、これまで目を奪われていたのですが
参加者の方からの質問から、壁天井の造作に
感嘆させられた次第。
ふつう、ユニットでない造作のお風呂の場合、
相当念入りに内装下地の防水は行われるのですが、
この建築家の自邸では、実験的に挑戦していて、
なんと、下地には壁天井部分では、特段の防水処理をしていないということ。
そのうえ、使用している壁の素材も、一般的で安価な木材を使っています。
他の居室でも、内装の仕上げに使っているものです。
お風呂なのに! という驚きなのですが、
このお風呂にはしっかり床暖房が敷設されていて、
しかも換気は24時間連続運転でなされています。
湿気が滞留する要素がなくなれば、
お風呂の丹念な防水は、そこまでは必要ないのではないか、
という実験なんですね。
で、それは4年間以上の居住経験に踏まえると、成功しているということ。
というような会話に、みんな感嘆していました。
もちろん、この家は建築家の自邸なので、メンテナンスなど、
プロであり、その内容をすべて把握している人間が自分で毎日チェックしている、
という特殊条件の下での実験であり、
そのまま、一般化できるものではありませんが、
ひとつのおもしろい成果ではあると思います。
もしこういう考え方が可能になってくれば、
お風呂の内装の可能性は大変大きくふくらんできますね。
今後の展開が面白いなぁ、と感じられるひとつのディテールでした。

昔の台所

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写真はきのうから紹介の青山家本邸の台所です。
どうもこういう写真を撮るのが、好きみたいなんですね。
というか、こういう写真からは、具体的な食生活のことが浮かび上がってくるから
いろいろな想念がふくらんできます。
右側のステンレス製の流し。
住宅としての建築年代は明治初期にさかのぼる建物ながら、
ステンレスで造作されているということは
ごく近年まで、この家が実際の住まいとして使われていたことを
想起させてくれます。
やはりすぐそばに海が迫っている立地なのですが、
こういう流しを見ていると、食生活の基本は魚料理だったんだろうな、と
思えてきますね。そういう耐久性を考えてステンレスにしたのだろうし。
窓側一面には調味料の瓶が整然と並べられ、
左側にはかまどが二つ、配置されています。
なかなか、合理的な配置で、作業性は高かったように思えますね。
流しは作業面が大きくて、魚をさばくのにも
相当の大型の魚まで、料理していたのでしょうね。
床も、磨き込んだようになっていますから、
流しと、かまどを往復しながら、
瓶や桶に汲まれた水を大量に使いながら、
忙しく立ち居振る舞いしながら、料理する様子も浮かんできます。
こういう人間生活の様子が、やっぱり面白い。
今日のシステムキッチンの変化のありようとかと、考え合わせながら
むかしの合理的な台所のことを見ていると、
日本的な食文化も、いろいろにふくらんだ思いで考えられると思います。
こういう中から、伝えられてきている郷土料理なんかは、
作られ続けてきたんですね。
しばし、そういう雑感に浸っていた暮らしのたたずまいでした。

青山家本邸

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山形県庄内地方、酒田の北方に遊佐町があります。
ここには、江戸から明治の時期に「北海の漁業王」といわれた青山留吉が
残した本家の青山家住宅があります。
かれは、24才で、この地から北海道に渡り、
折から空前の豊漁に沸いていた
北海道西岸地域での漁業で大成功を収めたのです。
かれが、どうして「北海の漁業王」になれたのか、
素人としては、わかりませんし、この家の見学でも、
その辺りの消息は記載がありませんでした。
漁の方法が、大量化していく段階にあって、その時流の中で、
資本投下と、その運用、回収といった事業家としての部分での
先見性がすぐれていたのでしょうか?
ともあれ、かれは少なくとも3つの建築を残していっています。
ひとつは小樽市祝津にある、「青山家別邸」。
そして現在は、北海道開拓の村に移築保存されている青山家漁家。
さらに、ここ遊佐町にある「青山家本邸」というわけです。
にしんなどの、活況を呈した北海道漁業の最盛期を語る建築を残したのですね。
前記の2つとも、見て感銘を受けてきていたので、
残されていた最後の本邸を見る機会を探しておりまして、
たまたま、取材があったので、早朝から訪問してみたというわけです。
前の二つの、北海道に残された建築のイメージが強烈すぎるのでしょうか。
「別邸」は、かれの最愛の娘さんのために建築した、
という明確なポリシーがあって、まさに贅を尽くしたしつらいになっていました。
当時の最先端建築、日本橋の百貨店をその予算で上回っていた、
という絢爛豪華の世界です。
客間だったかの天井には、屋久杉の無垢板が張り渡されるほど。
一方、青山家漁家はまさに生業のありようを
まざまざと伝えてくれる迫力満点の建築。
ヤンシュウと呼ばれた出稼ぎ労働者のための空間など、
その機能性と、合理精神の高さに、打たれるようなものがありました。
それに対して、この本邸は建築としてみると、用途が住宅に限定されていて、
しかもライフスタイルというのが、明確に伝わってくるものではありませんでした。
退隠後の、落ち着きのある風格のある住まい、といった印象でしょうか。
事実、北海道での事業活動後の、引退してからの住まいなので、
そういう迫力には欠けるような建物なのだと思います。
古民家としてみる住宅は、ほとんどが生業のなりわいを色濃く投影していて、
生活感が匂い立ってくる部分があり、
どうも、わたしはそういう部分に強く惹かれているのだなぁ、と
腑に落ちたような印象を抱いた次第です。

目の不自由なひとのための家

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仙台市で、視覚がだんだん衰えていき、全盲も覚悟しなければならない
そういう方のために、住宅はどうあるべきなのか、
こういう問題意識に基づいて建築された住宅を見る機会がありました。
ご存知のように、白内障などの目の病は広く発症するもので、
成人の多くが視覚障害の可能性をもっているのが現実。
しかし、この問題を建築的問題として考えるというのは、
ほとんど聞いたことがありませんでした。
設計にあたった本間総合計画・本間貴史さんに聞くと、
いろいろな文献や、資料などを探してみたけれど、
その範囲では、有効な先人の業績を探し当てることは出来なかった、といいます。
そこで、この家では、福祉の専門家と相談しながら、
有効と考えられる方法を、試行するアプローチを取っています。
建築設計って、表面的なデザインという面がクローズアップされますが、
そのデザインっていうのも、人間の暮らしのためのもの。
暮らしやすい、という本然のかたちを考えれば、
こうしたアプローチこそ、建築設計の核心的なものがあると思います。
しかし、デザインの要素って、やはり基本的には「窓をどう開くか」というのが
与えられた敷地の中に、住宅という装置を作る最大のもの。
そういう意味では、視覚的な要素というのがやはり一番ではあるでしょう。
あらかじめ、そういう手法からアプローチできない中で、
いったいどういう建築的な手法があるのか、
大いに考えさせられる家づくりになりますね。
この住宅作りは、試行しながらのものだったので、
目的に至るための「試みの要素が大きいです」と控えめに語っていましたが、
有効と考えた手法のひとつが、
床材の素材・張り方・仕上げなどの変化の付け方。
基本的には、1階だけでの生活をイメージして、
視覚障害の方が、そのなかで生活が完結できるように考えています。
足の裏からの触覚的な、あるいは温度感知能力などに訴求する方法。
その考えから、間取り的には家の真ん中に動線空間としての廊下を配置し、
そこから左右に各空間を仕分けています。
その空間ごとに、床材が張り替えられています。
実際にスリッパなしで、皮膚感覚を通して感じてみれば、
あまり繊細とは言えないわたしでも、空間認識はできそうな気がいたしました。
主に暮らされる個室は、杉の板が使われ、ほかの材質とは明確な違いを感じます。
暖かさも、杉が一番感じられるのだそうです。
ほかにも居間はパインの無垢材など、微妙な皮膚感覚が
たしかに違いとして認識可能だと思いました。
写真のように、居間には防音壁も設置され、
今度は聴覚からの空間認識へのアプローチも試みていました。
こうした皮膚感覚を、住宅性能面から阻害しないように、
床面が基本的に一体的な温度感覚が得られるように、断熱気密が配慮され、
そのうえ、暖房配置で温度に変化が出ないように
床面一体の温熱環境が得られる「土壌蓄熱型」暖房方式が取り入れられています。
いろいろな人がいて、いろいろな家づくりがある。
その原点のような部分を強く感じさせられた住宅取材でした。