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【北国の都市住宅 熟成のための緑計画は?】

きのうはアース21例会恒例のテーマ講演。
今回は「緑・植栽・ガーデニング」テーマで十勝地区での実践例を学習。
北海道では一般的にはなんとか住宅を建てるまでが精一杯で
冬期の積雪寒冷、暖房費用など維持経費上の問題の方が大きく、
なかなか「外構」まで予算を考えるゆとりがないとされてきた。
実際に北海道で戸建て住宅を維持管理するためには、
暖房費用は15-20万円程度負担が当然であり、
そこに重機除雪で運搬排雪を行えば1回5万円程度の費用が飛ぶ。
除排雪と「庭・植栽の維持管理」の相互関係の調整って、
「言うはやすく行うは難い」という典型。
大雪の年には家の敷地内での「堆雪スペース」維持はなかなかキビシイ。
とくに集住として「都市景観」が重視されるべき
名のある住宅地・高密度敷地地域でこそ、こうした問題が大きく立ちはだかる。
公共街路樹にしても大雪のときの除排雪も考えると維持管理の問題はやっかい。
10数年前の北海道では珍しい「台風被害」で道庁周辺の並木が倒壊したとき、
嘆かわしいけれど内心、厄介者が消えたと喜んだ公共職員心理も聞いた事がある。
せっかく外構・植栽しても、冬期の堆雪スペースとの兼ね合いが難しいのですね。
せっかく費用を掛けて植栽したのに、大雪で傷めてしまう心配もある。
そしてそもそも北海道の気候風土に似合う樹種などの知識が
本州地域ほどの常識普及がなく、枯らしてしまうことも多い。
北海道ではハナミズキなどは育ちがたく
類縁のヤマボウシしか育たないみたいな常識がまだ育っていない。
やはり他地域と比べての生活文化密度が150年ほどと
圧倒的に短いので、こういった部分の「積層」に乏しい。
そういったことで街並みに積層感がとぼしく、
本州地域の住宅地のような「重厚感・奥行き」が感じられない結果になる。

・・・まぁ、困難を挙げていったらキリがありませんね(笑)。
そう言われつつも、150年の積層が重なってきて
住む側の意識でも変化がようやく見られるようになって来ている。
とくに住宅の性能的飛躍が大いに進んできて、
暖房費などの冬の費用の低減化が実現するようになって
ようやく戸外の充実と言うことを考えられるようになって来たのかも知れません。
写真はわが家の27年前新築当時の様子。
「1本でもいいから木を植えましょう」と言われてシンボルツリーを植栽した。
義父が造園業を営んでいたので、すばらしい明月楓を植えてもらった。
北入りの狭小敷地という条件に、ギリギリの植栽だった。
この風情を数年は楽しむことができたけれど、
やがて増築せざるを得なくなり、このシンボルツリーも諦めた。
そういった「職住一体」という兼用住宅の絶対的条件変化は避けられない。
けれど、やはりこういうシンボルツリー体験は、
「戸建て住宅」という文化を体験するのに大いに意味があった。
なにより高断熱高気密住宅になると、外気気候が室内からは感受しにくい。
それに対して外構植栽は、明瞭な気候条件を視覚的に伝えてくれる。
そのように「見続ける」ことで暮らしの起承転結の彩りが生まれ、
日本人的な「花鳥風月」意識が自然に体感できていく。
北国らしい困難はあるけれど、克服する方向性も明瞭になってきた。
これからの世代に、この地にいい住環境を遺していくためにも、
北海道らしい都市の緑環境を作っていかなければならないと思いますね。

【北国の都市住宅 熟成のための緑計画は?】

きのうはアース21例会恒例のテーマ講演。
今回は「緑・植栽・ガーデニング」テーマで十勝地区での実践例を学習。
北海道ではこれまで住宅を建てるまでが精一杯で
冬期の積雪寒冷、暖房費用を考えなければならないなど、
維持経費上の問題の方が大きくて、なかなか「外構計画」まで
予算を考えるゆとりがないとされてきた。
実際に北海道で戸建て住宅を維持管理して行くには、
暖房費用は10-20万円は負担が当然であり、
そこに除排雪などの費用、1回重機と運搬除雪を行えば5万円程度の費用が飛ぶ。
除排雪と「庭・植栽の維持管理」の相互関係のアタマのなかでの調整って、
言うはやすく、行うは難いという典型ではないかと思います。
大雪の年には家の敷地内での「堆雪スペース」維持はなかなかキビシイ。
とくに集住として「都市景観」が重視されるべき地域でも
こうした問題が大きく立ちはだかる。
街路樹にしても大雪のときの除排雪も考えると維持管理の問題はやっかい。
10数年前の北海道では珍しい「台風被害」で道庁周辺の並木が倒壊したとき、
内心で厄介者が消えたと喜んだという公共職員心理も聞いた事がある(泣)。
さらに外構を考えて植栽しても、冬期の堆雪スペースとの兼ね合いが難しい。
せっかく費用を掛けて植栽したのに、大雪で傷めてしまう心配もある。
そしてそもそも北海道の気候風土に似合う樹種などの知識が
本州地域ほどの知識の普及がなく、枯らしてしまうことも多い。
やはり他地域と比べての生活文化密度が150年ほどと
圧倒的に短いので、こういった部分の「積層」に乏しいのが現実。
そういったことで街並みに積層感がとぼしく、
本州地域の住宅地のような「重厚感・奥行き」が感じられない結果になる。

・・・まぁ、困難を挙げていったらキリがない(笑)。
そう言われつつも、150年の積層が重なってきて
住む側の意識でも変化がようやく見られるようになって来ている。
とくに住宅の性能的飛躍が大いに進んできて、
暖房費などの冬の費用の低減化が実現するようになって来て
ようやく戸外の充実と言うことを考えられるようになって来たのかも知れません。
写真はわが家の27年前新築当時の様子。
設計者から「1本でもいいから木を植えましょう」と言われて
シンボルツリーを植栽した。
義父が造園業を営んでいたので、すばらしい明月楓を植えてもらった。
北入り敷地の狭小敷地という条件に、ギリギリの植栽だった。
この風情を数年は楽しむことができたけれど、
やがて増築せざるを得なくなり、このシンボルツリーも諦めた。
そういった「職住一体」という兼用住宅の条件の問題は避けられない。
けれど、やはりこういうシンボルツリー体験は、
「戸建て住宅」という文化を体験するのに大いに意味があったと思っている。
なにより高断熱高気密住宅になると、外気気候が室内からは感受しにくい。
それに対して外構植栽は、明瞭な気候条件を視覚的に伝えてくれる。
そのように「見続ける」ことで暮らしの起承転結感、
日本人的な「花鳥風月」意識が自然に体感できていく。
北国らしい困難はあるけれど、克服する方向性も明瞭になってきた。
これからの世代にいい住環境を遺していくためにも、
いま、北海道らしい都市の緑環境を作っていかなければならないと思いますね。

【工務店の個性と市場認知 十勝住宅視察にて】

きのうは大雨の中、朝札幌を出て十勝へ。
地域工務店グループ・アース21の例会出席であります。
おおむね2カ月に一度、全道の工務店がお互いの家づくりの現場を確認し合い、
デザインと性能、マーケティングなどのテーマに沿って
研鑽を重ねている組織であります。
いわゆる地域工務店の継続的研鑽組織としては、
北海道でも有数の組織。ただ、北海道ではこうしたグループ活動は、
他地域と比べて格段に組織と頻度が多いと思います。
勢い、工務店組織の継続性、進化スピードがきわめて高い。

写真はそういう見学の中の一件の住宅で見とれたインテリア。
十勝でもひときわ個性的という評価の「広岡建設」さんの現場。
多くの見学者がその個性表現の強さに驚かされていましたが、
この洗面鏡に至っては、まさに独壇場的。
もちろんこういう鏡は既製品であろうハズがない。
それこそ一品一品、手作りで丹念に細かいタイルを嵌め込んで造作している。
カタチにしても、基本には既製品があるのだろうけれど、
それを大胆にカットして、外形も大きく手作り的に変容させて
まさに不定形で、同じモノは二度と出来ないような造形になっている。
広岡建設さんとの家づくりを考えたユーザーはいわば予定調和的に
こういったオリジナリティを期待してワクワクしていると言えます。
「わたしの家づくりイメージは欧米住宅のふつうの家」という
広岡さんですが、欧米的インテリア感覚でもひときわDIY的なこだわり領域まで
こうして地域工務店のひとつの魅力としてカタチにしている。
それにしても、このようなタイル造作作品は、
継続的なインテリアイメージの集積、「広岡建設らしさ」として
ユーザーにも雰囲気が共有されていることではじめて「納得」して
了解が成立する世界だと思います。
こういった造作作品をいちいち「ここをこうします」みたいにして
ユーザーの了解を得ながら作ることは出来ない。
「広岡さんだから」という地域ブランド的な作品了解がきちんと成立していて
ユーザーも満足度高く、それを楽しみにして受容している。
だから、けっして高額な費用がそこでかかるというものでもない。

これは確かに「デザイン」に属する領域でしょうが、
このような「手作り」への了解、リスペクトが
地域レベルで十分に市場成立していることが、非常に面白い。
工務店組織でしかなしえないひとつの魅力的戦略だと思わされました。
それにしても、こういうデザイン的独創性が、地域で共有されている
そのことに奥深さを感じさせられますね。

【道内家具作家展示も in きた住まいる南幌】


全国から注目される「北海道のイマドキ」という住宅展示に
図らずもなった今回の「きた住まいるin南幌」ですが、
わたしたち北海道の人間にとっても久しぶりの地域総力的展示。
わが社がスタートしたころ、同時期に「美しが丘」という地域で
清水建設さんが広大な土地を販売するために、
建築家による「建て売り」という試みを行ったことがあります。
ふつうは手慣れた大手ハウスメーカー主体というのが全国の常識ですが、
圓山彬雄、倉本龍彦といった建築家たちがいくつかの住宅を建て、
そこから興味を持った建て主さんと家づくりを始めるという展開。
今回の南幌のような建築家の関与する家づくりとしては、
先導的な企画だったように思います。
しかし今回は、主導的な動きをしたのが北海道建設部建築指導課であり、
その提唱する家づくりの制度的指標をアピールするという
地域をあげたイベントであるという意味では、まことに画期的。
いちばん着目すべきなのは、地方公共団体自身がこういう企画を立て
それに作り手が積極的に関与するという地域の独自性でしょう。
北海道の住宅施策としては「北方型住宅」という
地域オリジナルの住宅性能基準を制定し、その普及を促進するという
方向性が長く続いてきたのですが、
そこからさらに一歩進んで、協働する地域の作り手、
工務店や設計事務所などの家づくりを支援するという方向性に
大きく進化してきたといえるでしょう。
こういった施策はその中身、参加主体でも地域らしさとして強く訴求している。
有力地域工務店と建築家グループがこの企画の参加主体であるという
わかりやすい地域「住宅運動」の意味合いは決して小さいものではない。
北海道らしい地域としての「住環境へのフロンティア精神」を感じます。

そういった地域の家づくりとともに、
この家々の空間密度をさらに高めているのが、道内作家による家具展示。
写真は上がブロックの家でのTHREEKさん、
下は平屋の家での高橋三太郎さん作品のそれぞれの展示。
基本的には地域の材料を活かし、地域の人間の手業で空間を彩っている。
北海道らしいライフスタイルへの共感をベースにした
作り手たちのコラボレーションによる「空気感」はなかなか密度が高い。
上の写真では、北国住宅らしいブロックの家での
日々の食卓テーブルの「雰囲気の底力」を感じさせられるし、
下の写真では、薪ストーブ回りのでいごこち品質というものの
北海道的共感力がハンパないと思われました。
ディテールまで地域らしさがあり、北海道っぽい空間構成だと思います。
多くのみなさんにそういった空気感も大いに感じて欲しいですね。

【きた住まいる南幌-5 北海道らしい平屋デザイン】




今回のきた住まいる南幌は、全国的にも大きな話題になっています。
7月には全国各地から建築関係者100名規模で大挙見学に来られるとか、
また新住協でも見学会が予定されているようです。
全国的なプロのみなさんからの住宅性能への関心の高まりを受けて、
各地で北海道のいまの住宅の状況について知りたいという欲求が高まっている。
ただ、イマドキの北海道はそういった本州地区の動向とはやや違いがある。
ドイツ式パッシブハウスの認証などへの無関心は北海道で顕著であり、
またZEHなどの国の施策についても、対応は全国最低レベル。
高断熱高気密などの技術要素はその拡散起動時点では
上記のようなことへの関心が高まるのでしょうが、
すでに初期からは世代的にも更新してきていて、住宅への関心レベルは
ユーザー的にも次のステージに移ってきているように感じます。
暖かさなどの基本性能では「ほぼ考えなくても良い」レベルが一般住宅で
実現してきていて、各企業としても競争優位要素にはなりにくい。
高断熱高気密住宅が常識の地域では、どういった発展要素があるのか、
テーマはそういうことになっていくし、その胎動が今回の南幌では顕著。
数値的な高断熱高気密だけではなく、いごこち、住みごこちの高性能化が
いろんなファクターを通して追究されていると思います。

そういった市場動向の中で「平屋」デザインで人気の設計者・小倉寬征さんと
よくペアリングしているキクザワさんのコラボ物件。
平屋というスタイルは、北海道のような土地にゆとりのある地域で、
なお少人数家族というケースではきわめて有用な設計手法だと思われます。
少子化という背景の中で、若い年代には平屋再評価が進んできている。
このコラボでは最近、千歳市内でコートハウス型の平屋物件があったのですが、
今回は、また違った直線的平面計画での取り組み。以下がコンセプト。
●オープン×クローズ「大きな屋根の小さな家」
南東角地にカーポートを備えた約100㎡の木造平屋。大きな屋根に
3つの小さな家的空間を配置し、屋内外を一体とさせることにより、
これからの田園ライフを提案。・・・というもの。
この家では玄関側から室内ではまっすぐに長い見通しが効いている。
平屋というと、平面計画はコンパクトというイメージが強いけれど、
いきなり「長い距離を歩く」室内空間を実現しています。
上下運動がなくフラットななかで動き回る仕掛けが込められている。
わたしも思わず吸い込まれるように一番奥まで行ってしまった。
こういう単純な間取り構成なのに、空間にふくらみが感じられる。
それは都合4箇所のウッドデッキスペースのせいだと気付きます。
さすがに南幌では敷地にもゆとりがあり、開放的な暮らしが実現できる。
オープンとクローズが融通無碍に行き来する暮らしようが見えてきます。
そういえば平屋って住む人はきわめてアクティブになれますね、
わたし自身、強く実感しているところでもあります。
いかにも北海道・南幌的ないごこち・住みごこちの提案だと思いました。

【きた住まいる南幌-4 自然志向+高断熱=北海道らしさ】




今回の有力地域工務店+建築家というペアリングのなかで、
いちばんピッタリとハマっていたのが、この武部建設+櫻井百子の組み合わせ。
武部さんは「簡素・無意匠」といった志向性の強いビルダーさん。
まぁ無意匠というのは比喩で、ゴテゴテしたり押しつけっぽいデザインではない、
というような意味合いの家づくりの特徴を感じます。
今回の住宅でも「芯材」とでもいえる柱には古材を使っていますが、
こういう古材へのこだわりのような志向性が一種の「雰囲気・空気感」を醸し出してくれる。
たぶん日本人的なもの、古民家のもつ民族的郷愁に通じる部分。
北海道の高断熱高気密住宅進化の中で、こうした武部さんの感覚は
ある「標準」に近しい傾向を生み出したように思われます。
「和」とか、わびさび、といった「きれい」に異常なこだわりを持つ感覚とは違う、
もっと日本のベーシックな庶民的「民家」生活文化の北海道的継承志向。
武部さんの本拠は空知・三笠と岩見沢市ですが、
この地域は日本各地からの移民のなかでも農業的先進地域からの移住が多かった。
囚人労働が集中投下されて基盤整備された農地であり、
明治政府としての地域農業振興への期待がもっとも高い地域だった。
わたしの母の実家はこの三笠なのですが、
農業先進地であった「美濃」地方からの移民であり、
明治初期から北海道農業開拓の最有力地域という特性を持っていた。
そうした農業熟成地域の日本住宅文化が北海道に根付いたとわたしには感じられる。
いわば、日本ベーシックといった住意識がみえるのです。
設計者の櫻井さんも、こういう大地に根付いた暮らしようへの
志向性を強く感じさせられます。
女性設計者ながら、作られる建物はけっこう武骨で、
なにより普段着の暮らしようへの温かい視線が感じられます。
今回の住宅でも、腕白なこどもの暮らし行動に添ったような動線配置を
説明されて、わたしも思わず共感させられた(笑)。
こういった作る志向性のペアリングの結果、
なんとも地域標準っぽい、北海道版「新・民家」とでもいえるような住宅になった。

間取り的にも、いわゆる玄関という様式的スタイルではなく、
日本古民家の土間空間のような場所から入っていくスタイル。
そこに仕切りとしてブロックの壁があって、室内側に据えられた薪ストーブからの
蓄熱的暖気が冷えたカラダを迎え入れてくれる。
ブロック壁から左右に動線を分けていて、右は薪ストーブと太陽の暖かさを受け入れる
大きな開口をもつリビング空間になる。一方左側は「ただいま」と言って
帰ってきた腕白坊主が、まずトイレに入り手を洗い服を脱ぎ換えて
その先で母さんの作ってくれた食べ物にまっすぐ向かっていくような、
にぎやかなニッポン人スタンダードな屈託のない暮らしがデザインされている。
リビング側大開口からは外のデッキにも回遊でき、
2階のテラスからは夕焼けの眺望が空いっぱいに感じられる外部空間もある。
・・・そんな「この場所らしい暮らし」が意図されている住宅。
いかにも「北海道らしい」というありようを感じた家でした。

【きた住まいる南幌-3 北の太陽光導入&制御デザイン】




今週はきた住まいる南幌探訪記シリーズ展開になっております。
わたし自身も北海道の住宅をこれだけまとめてみるのは久しぶり。
やはり日頃、北海道の人間として全国のみなさんと対話していて、
彼我の違いに気付く部分があり、改めて北海道の住宅を見て共感する部分が多い。

今回の住宅展示でとくに面白いなと思ったのは、設計者と施工者のタッグぶり。
設計者ばかりでなく施工者についても多くの住宅事例を見てきているので、
「AさんとB社か、さてどんな展開になることやら」とワクワクしたりする(笑)。
この住宅ではまさにド・パッシブという山本亜耕さんの設計に対して
キメの細かいディテールの女性社長・柳さんのアシスト企画さんタッグで
どんな住宅に仕上がるのかと、ドキドキしていました。
山本さんは太陽光取得制御に対して、北海道の設計者の中でも特徴的に
ドストライクな路線を走っている。パッシブと言えば太陽光だ、みたいな
真っ正直な路線でしょう。高緯度な北海道らしくどちらかといえば
取得優先みたいな潔さ。一目瞭然、太陽光に対してまことに正面から向き合っていて、
この家の家族とお日様との「対話」がこの家の基本テーマであることは明瞭。
そして一方で太陽光の制御についてはちょうど京都町家のような格子が
いくつかのグラデーションを持ってデザイン構成されている。
この両者のバランスについて、立地条件を踏まえ計画されたことが明らか。
残念ながら山本さんに話を聞くことはできなかったので、
日射取得面である建物正面の反射板を構成する面の角度とか、方向、
さらに制御側での軒の出と反射板面とのバランスをどう取ったのか。
縦方向でいくつかの制御段階に分けられている格子ルーバーの寸法意図など
詳しく伺うことは出来なかったのですが、意図はきわめて明確ですね。
太陽光の取得と制御という基本に沿ったデザインだと思います。
さらにディテールでは素材についてその魅力を十分に引き出す丹念さが随所にあります。
決して値の張る素材ではなく一般的な合板などの使用ですが、
その層をなしている小口側を建具などの各所で上手に見せて
統一感のある仕上げ。また、造作建具の面材に床フロア素材を利用したり、
全体としてインテリア空間の質の高さ、ていねいさが強く感じられました。
格子のルーバーデザインから、このディテールの仕上げまで
デザインの一貫性を強く感じさせられておりました。
ヒアリングしていないので想像ですが、この設計と施工のペアリングが
生み出した素晴らしい雰囲気ではないかなと感じさせられたのです。
わたし的にはこの組み合わせ、ありだなと思わされた次第。
作り手側からの「コンセプト」は以下。
●新 北方型住宅2018「南幌まちなかの家」
南幌の四季の眺望や夕陽を取り入れた眺めの良い2階をLDKとし、
1階は家庭菜園など南幌の自然、土と触れ合う楽しみを味わうための
仕掛けを備えた住まい
施工/(株)アシスト企画 設計/山本亜耕建築設計事務所

【きた住まいる南幌-2 グランピング気分を味わう家】




北海道ではいわゆる建築家の住宅性能への関心度、
そういった技術への理解、咀嚼度が他地域とは格段の違いがある。
アルミサッシ全盛の時代に、開口部の性能向上とデザイン性向上のため
いちはやく「木製3重ガラス入り」を積極的に採用したのが、建築家たちだった。
自らのデザインに大きな飛躍力を持たせるために、
むしろ住宅性能に対して先導的に対応してきたと言えます。
わたしが雑誌を創刊し「いい家」をふつうに考えたとき、こうした動きは
きわめてわかりやすい流れだと思ったものでした。
そう考えたとき、比較的に「バリア」があった工務店と建築家の垣根を
意識的に取り外していきたいとも考えた次第です。
誌面では積極的にそうした動きを掲載し、読者ユーザーに「垣根」感を
払拭させるように意図的に仕掛けていたともいえます。
建築家という存在を一般化して工務店もデザイン力を向上させていった。
きのうご紹介した山之内裕一さんは60代の設計者。
それに対して若い世代のユニークな設計者たちもどんどん育ってきている。
いろいろな感受性がのびのびと表現を切り開いていくことは素晴らしい。

こちらの住宅設計の大杉崇さんはいまや北海道でも中軸的な建築家。
昨年の建築作品発表会でも、いい作品を発表されていた。
わたしもこのブログでも何度か、住宅をご紹介しています。
施工のアクト工房・松澤さんとは今回のコラボが初めてだったようですが、
作られる住宅には両者にある通底する部分があると思っています。
ただし、今回のプロジェクトでは相当に激論を交わしながら
作ってきたというような情報を受けておりました(笑)。
そういう意味でも見学が楽しみだった住宅です。コンセプトは、
●都会の脇でお洒落に暮らすGlamping-House 「Inside-Out」
新省エネ基準に向けた超高性能コンパクトハウス。全天候型の
半屋外ガレージテラスを中心として、リビングに居ながら
グランピング気分を味わえる斬新な提案〜というもの。
北海道の住宅というと、窓が小さくてひたすら防御的なイメージというのを
本州地域のひとから言われることがありますが、
むしろ北海道人はもっとも自然環境が豊かな風土の中で、
冬の寒さについては、ダウンジャケットなどで衣類についてもほぼ克服した。
そして住宅についても住宅性能を向上させて家の中は全国一暖かい。
基本的に雪質もドライなので、冬の暮らし方も重く堪え忍ぶ感覚は少ない。
また、夏場の自然の豊かさは語る必要もないほどなので、
自然環境に対して基本的には能動的な生活態度があると思います。
この住宅ではそういったイマドキの北海道暮らしのありようが伝わってくる。
「おお、きょうはすごいブリザードだな。すげーきれいだわ」みたいな
家の中の気候環境が四季を通して安定することで、
外の自然に対してアクティブな感覚を持つことが可能になっていると思います。
キビシイ冬の気候も含めてそれを楽しむライフスタイル。

むしろこういったライフスタイル提案の中身の方が
イマドキの北海道では住宅づくりの最大関心事になって来ている。
喜ばしい「当たり前化」だと思われます。
本州地域での住宅性能向上への関心の高まりは大変喜ばしいことですが、
いま北海道は住宅性能の向上の先で、こういったライフスタイルへの
興味関心が強くなってきているのではないかと思っています。
内部環境の高性能住宅が実現することで、自ずと住み手の関心は
より楽しい生き方の方向に向かって、開放されていくのではないでしょうか?

【きた住まいる南幌取材-1 ブロック外断熱の家】



きのうは当社スタッフによる南幌モデル住宅群の写真撮影。
それにあわせて、住宅取材についての学習会、現地ゼミ的にスタッフと見学。
住宅雑誌というのは住宅の写真を押さえるのが仕事ですが、
「どう撮るか」がいちばんポイントになってくる。
写真はただ撮るだけでもつたわるモノはあるけれど、
やはり正確に「ある企画性」のようなものを画面に仕込んでいく必要がある。
もちろん被写体の持っている力のようなもの、
その美しさというようなものを感受して引き出すのは大前提。
っていうような写真撮影に当たって考えることについて、
若いスタッフといっしょに語り合っていました。

このブログでも既報ですが、
南幌のこのモデル住宅群は、北海道建設部建築指導課が企画展開する
「きた住まいる」事業をわかりやすく一般に伝える趣旨。
展示主体になった地域工務店+地元建築家はほぼわたしどもの誌面でも
常連的なみなさんたちばかりの顔ぶれ。
高断熱高気密を技術的な基本セオリーとしてベースに据えて
その建てられる場所での暮らしの豊かさを徹底追究する、
いわばオーソドックスなイマドキ北海道の家づくりを素で表現している。
昨日一気に全部見学して来たのですが、
徐々にこの欄でご紹介したいと思います。
まずはわたし的にもっとも興味を持っていた「ブロック外断熱」の住宅です。
施工は晃和住宅さんで、設計は山之内裕一氏。
きのうは山之内さんが現場でご案内いただきました。
わたしもブロック外断熱の家に住んでおり、山之内さんとは、
「ブロック住宅ルネッサンス」という思いを共有する同志であります。
域内火山がときとしてカルデラ級噴火を繰り返した北海道に豊富に存在する
火山灰をコンクリート成形したブロックはそれ自体で歴史を体現する素材。
その素材がアメリカ合理主義精神で発案されたもの(鎌田紀彦先生談)。
地域の先史素材にアメリカ的合理主義というのは、いかにも北海道を象徴する。
今回の南幌プロジェクトでも、このブロック住宅が参加したことで、
いかにも北海道らしい住宅展示になったと思います。
ほかの木造住宅に比べて、素材感を訴求されるので印象は「簡素」。
素材が正直に積み上げられている表情がそのままで情感がある。
ブロックはコンクリートとも違って1箇1箇がざらつきのある質感を持っているので
光を受けての反射が意識下でのグラデーションをもたらしてくれる。
そして、固いスポンジのような素材なので、温湿度を蓄える性能を持つ。
これが長期にわたっての「室内温熱環境」を保証する。
さらに、山之内さんはこの建物で高窓ラインでリズミカルな破調をデザインした。
屋根面の交差に微妙な軸線を加えて生み出されたこの高窓で
太陽光とブロック構造との対話を仕掛けているといえる。
日中の太陽角度、その変化につれて室内に微妙な採光コントラスト、
グラデーションが生み出されています。
ブロックは四角い面を見せている存在なので、規格的形状が
まるで障子の格子にも似ていて、その上をいったんバウンドさせた光が
さまざまに表情を見せてくれる様子というのは、
室内での暮らしのバックグランドとして、日本人文化的だと思います。

このプロジェクト参加のメンバーでも最高齢かも知れない
山之内さんですが、若い見学メンバーからも、
建築的若さ、ダイナミックさを感じたという声が聞かれました(笑)。
ブロック住宅ルネッサンス、若いみなさんにぜひ届いて欲しいと願っています。

【緑・住環境と健康の「科学的」関係】



先般取材した近畿大学・岩前篤先生の講演からの情報です。
岩前先生は健康と住宅といった視点から研究を進められていて
建築と医学の接点のような情報について、いつもさまざまな知見を伺えます。
今回の講演でもさまざまなエビデンスの発表があったのですが、
そのなかでも表題のテーマについて強く興味を持ちました。
「緑に囲まれて暮らす女性は長生き」
アメリカ・ハーバード大学公衆衛生校などの研究チームが全米108,000人を対象に
自宅周辺の緑の多寡と死亡率との因果関係を調査した結果、
こうした結果が得られた、としている。

これまで経験的に緑・植生が豊かな環境ほど
「いごこち」はいいという経験則は自然にあると思われたけれど、
このような実証というのは、思わず目を開かされた思いがしました。
健康というポイントではこれまで住環境というものは
エビデンスのないもの、あるいは科学的ではないものと
医学の側からは見られてきたと思われます。
人間の健康というよりも、病気に対してそれを「治療する」のが科学的立場。
その立場からは健康というものはあいまいな概念とされてきた。
そういった領域にさまざまな科学的なメスが入れられてきているのですね。
先生の発表では、人の死亡にかかわる原因として
自然的要因(気象や災害など)、遺伝的要因、医療的要因、生活習慣要因が
挙げられていましたが、そのうち関与比率は
「生活習慣」要因がもっとも大きく、全体の43%を占めるとされていました。
生活習慣とは食生活ももちろんだけれど、より大きくは
住宅の環境がどうであるか、ということの比率もきわめて大きいことは自明。
緑が豊かな環境、という科学の仕分けが難しいとされてきた
環境要因もこういうエビデンスの積み重ねが可能になってきたのだと。
従来、住宅室内の「温熱環境」には明瞭な因果関係が指摘されてきたけれど、
より幅広い「住環境」領域が、人間の健やかさに大きく与っていることが、
かなり明らかになってきたと言えるのでしょうね。

こういった知見の探究は、より有用な住宅環境への指針、
大きな道しるべになる可能性が高いと思います。
人間が健やかに生きるために、住環境「技術」は大きく貢献することが出来る。
そうだとすれば、科学的知見とセットで住環境改善の大きな動機になり得る。
この部分、今後とも大いに注目していきたいと思っています。