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絵巻絵画の描写力

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ことしは伊勢神宮と出雲大社の「式年遷宮」にあたります。
それもきょう10日が、伊勢の方はクライマックスなんだとか。
まぁ死ぬまでに一度は伊勢には行ってみたいのですが、
まだ、霊験あらたかな伊勢には行けておりません(泣)。
なんですが、その神社の年にあたって、
上野の国立博物館で、「大神社展」というエスニックな催事が行われているので、
今回出張の貴重な勉強機会として、見て参りました。

先日、真言宗でも偉い位階をお持ちのわが家のお坊さんと
宗教談義で盛り上がっていたのですが、
そのとき、お坊さんなのに
「いやはぁ、神社って面白いんですよ」と笑って話されていましたが、
この展示で見られる「神宝」の数々は、
まさに歴史のワンダーランドであります。
わたしたち民族のなにごとかに深く触れてくるのは間違いがない。
なにを見ても、深く啓発されるものばかりなんですが、
ひときわわたしの心に突き刺さってくるのは
「縁起」という絵巻物の類であります。
まぁ以前から大好きで、死ぬまでに一枚でもいいから手元に欲しいほどなんですが、
今回は、藤原氏が造営したという春日権現さんの絵巻物と、
やや時代を下った豊国社祭礼の屏風図にまったくノックアウトされました。
写真はインターネットで探したその絵巻物写真(一部)ですが、
まことに一瞬の切り取り方の中に
その時代が醸していた空気感が凝縮して表現されていて
まことに生き生きと伝わって参ります。
掻かれている人物が、それぞれにその瞬間になにを為そうとしていたか、
そういうものが観るものにありありと見えてくる。
春日権現のほうの解題を読んでみると、
こういう絵巻物の製作発願は有力者による文化的営為であり、
スポンサーになって、今日で言えば映画を制作したようなものだと
思い至りました。
どんな人物にもみごとにキャスティングが為されていて、
それぞれのドラマがきちんと「取材」「表現」されている様子がわかる。
わたし自身も、現代日本でそういう類の仕事をしているので
なにか、こういった表現者たちに感動を覚える部分がある次第です。
それも昔人の肉筆感が伝わってくる迫力は
圧倒的な臨場感でこっちを刺激して止みません。う〜〜〜む。
やはり、歴史はこういう伝播力が必要ですね。
こういうことが感受できると
人間社会、またまったく見方が変わってくる部分がある。
まことにいい体験をさせていただきました。

さて、本日はいよいよ、東大工学部での講義であります。
なんとか、なにかのお役に立てられるものかどうか、
一生懸命がんばりたいと思います。ではでは。

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