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龍雲閣_ディテール

さて、きのうまでご紹介してきた龍雲閣、本日はディテール。
まずはメインルームを飾っていたこれです。
狩野派の屏風なんだそうであります。
って、こういう金屏風というのは、
やはり室内に独特の華やかさ、光の反射光をもたらして、
中間色なんだけれど、独特の精彩を放つ装置なんですね。
それ自身が装飾であるのと同時に、
一種の照明装置としても機能するのだなぁと思わせられます。
狩野派というのは、よくこんなに続くものだなぁと思う、伝統的絵師軍団。
権力に取り入る術と、人脈形成で日本の装飾絵画の世界を蹂躙してきた一派。
なんですが、そうであるだけに、
才能の発掘など、今日で言えばジャニーズ事務所に近いようだと思います。

こちらは主室の天井を欄間越しに見たところ。
天井は格天井という、格式を踏まえた構成で、
羽目板には、ヤチダモの「縮み木目」の板が使われております。
ふだん使いの居室では柾目の板が使われるのだそうですが、
こういった行啓のときに使用される建築では、
このようなスタイルが採用されるのですね。
ほかの、たとえば、ニシン漁で財を成した「青山別邸」のメイン客室では
こうした用途の部屋の天井に、屋久杉の複雑な木目模様が使われています。
正に対する破、とでも言えるようなデザイン選択なのでしょうね。

こちらは、畳の縁であります。
普通は黒地に模様が入れられるのが多いと思うのですが、
ここでは白地にこのような模様が入れられておりました。
この模様が何をデザインしたモノであるのか、
質問も致しましたが、お答えは得られませんでした。
きっとなにか、やんごとなきデザイン表現であるには違いないと思いますが、
よくわかりませんでした。宿題にしておこうと思います。

照明装置です。
2階の主室と「次の間」に使用されていたモノです。
カーペット敷きとはいえ、和室ですから
そういった雰囲気も考慮したデザインのようですね。
こちらも、デザインの由来、制作者名ともお答えいただけませんでした。
こういったディテールの情報は、どうも失われているようであります。
この建築の永続的な保存運動もあるようですが、
そうであるならば、少なくともこのような情報は把握しておく必要性があると思います。
ぜひよろしくお願いしたいと思う次第。

美しく、見事な装飾の施された襖の引き手。
引き手、というのはドアの取っ手に対する引き戸の対語なのでしょうね。
まぁ、そういう言葉のことはどうでもいいのですが
各室で、この引き手は微妙に使い分けられていました。
それぞれの部屋の格式に合わせてデザインも変えているのでしょう。
この引き手は主室の襖のモノであります。
たぶん、一番格式の高いものとして作られたには違いがない。
例によって情報は不足しております。

この掲額は、当初、「凌雲閣」と名付けられたこの貴賓館を
龍雲閣と改名したときに、伊東博文の女婿である人物が揮毫したものだそうです。
この人物もよく知らないのですが、
なんでも宮内省の主馬頭という官職を受けていたということで、
貴族的な教養に造詣の深い人物だったようです。
能筆であるというのは、一級の人物評価につながるものだったそうですから、
こうした揮毫をしたものと思われます。
以前、函館の旧家「相馬家」で、幕末明治期の政治史に登場するような人物の
書などを見たことがありますが、
幕末から戦前までにかけての権力層を形成していた人間たちというのは
こういった文化世界にいたのだということを伝えてくれます。

まぁこのほかにも、
いろいろなポイントがあったのですが、
わたしの個人的な資料として、保存しておこうと思います。
繰り返しますが、この建物、
北海道でも稀有な「歴史的建造物」であるのは間違いがないので、
一見される価値は高いものと思われました。

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