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【中小建設業の人手不足・事業承継の困難】

写真は外壁左官仕上げの江戸期から存続する古民家。
先日、函館まで遠出した帰り道、
ニセコの道の駅でひと休み&野菜買いだしした後、クルマを走らせたら
ちょうど前方を「左官屋」さんのトラックが走っていて、ずっと追走していた。
ニセコから札幌までは約100kmくらいはある。
結局途中何回か、見失ったりはしたけれど、渋滞などもあって、
最終的にはほぼ同じ道程を走っていたのです。
トラックに書かれた住所を確認すると、札幌市西区の左官屋さん。
要するにかなりの遠距離だけれどニセコ周辺の現場からの日帰りということ。
知人の旭川の左官屋さんもかなり広域に、たとえば札幌周辺や帯広などでも
頼まれれば日帰り日程で仕事しているのだという。
そういえば小樽の工務店さんの葬儀でかれと会って、
その日は小樽に泊まってあしたはニセコ方面で現場仕事すると言っていた。
旭川からニセコ、片道250kmくらいにはなる。
新建材による家づくりが一般化して左官業が衰退しているけれど、
それでも仕事はあり、対応する業者さんは過酷な労働環境を余儀なくされている。
そんな知人に聞いたら、こんな現実と言う。
「旭川では左官の職業訓練校がなくなって一気に人手不足が加速した。」

以下、先日の建設業界の状況ヒアリングより。
「60才過ぎてから職業訓練校に入ってくるようになっている。」
「リフォームなどで仕事があったとしても地方では行けない構造・状況になってきた。
地方では工務店すら存続できなくなってきて、街にしか工務店がなくなる。
で、地方で仕事があってもだれも仕事に行きたいとは思わない。」
「地方では公共事業でも入札不調が常態化してきている。」
北海道は人口減少速度も速く、「課題の先進地」の状況がある。
しかしこういった現実はたぶん、全国で同時進行している。
このような人手不足で建設業周辺の事業存続は危機的状況になっている。
それこそ70代の職人さんが屋根板金作業にあたっているのが現実。
頼む側、工務店経営者の方が工事事故を心配せざるをえない状況。
職人さんがいざ仕事を辞めてしまえば、即、地域製造業が立ち行かなくなる。
そもそも後継者のなり手がいないという悲鳴があちこちで聞かれる。
であるのに、事業継承にはさまざまな規制による困難がある。
地元銀行調査では北海道の8割の中小企業で後継者がいない、対策がないという。

きのうの読売新聞朝刊で、与党の政策方針決定として、
中小零細企業の事業承継について、18年度から10年間の時限で
事業承継優遇政策を緊急避難的にはじめるというアナウンスがあった。
現状のバカげた税制などを見直し、事業承継をしやすくするとの趣旨。
制度が変化すれば、経済現場からも呼応する動きがでてくる可能性がある。
これは半歩前進ではあると思う。経済の現場は中小零細企業が支えているのだ。
政治はこういう論議をまじめにやってほしい。
経済の構造が現場で機能しなくなる前に、しっかりと現状を見つめた施策を
大いに打ち出して欲しいと思う次第です。
よく「宰相」の宰というのは民に食物を切り分ける意味と言われる。
政治の要諦は、国民が将来どうやって暮らしていけるか、
「経済をどのように運営するのか」が、まずは第1なのだと思う。
いま必要なのは古色蒼然の「保守・革新」対立イデオロギー選択ではない。

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