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鳥獣戯画への憧憬

1921

東京にいるといいなと思うのは
第1に美術館の数がハンパでなく多くて
どこかここかで面白い展示が行われていることです。
地方では、これはどうしようもない「格差」。
とはいっても、人口集積の違いが圧倒的なのですから仕方ない。
で、今回も上野の国立博物館で「国宝展」開催。
これは見るしかない、ということで行ってみましたが、
今回は特に宗教性に絞った展示。
否応なく、芸術のパトロンとしての宗教ということを考えさせられました。
西洋絵画にも、こういった傾向は色濃くあって
日本人にはどうしても理解出来ないキリスト教の絶対場面などが
主なテーマとして描かれた絵画などに名作が多い。
しかしマリアさんがキリストを生んだ瞬間など、
仏教徒としては、まず基本的に興味を覚えるわけがない。
しかしそういう文化圏にいれば、宗教的恍惚感を
わかりやすく信仰者に伝えるメディアが不可欠だっただろうと理解出来る。
同じ要因が、日本社会での仏教信仰への
膨大な作品群、絵画・書画・仏具・仏像などを生んだことはわかる。
今回の「国宝展」では、「祈り」ということにテーマを持ってきたので
最後のクライマックス展示でも、仏教寺院の国宝などが
これでもかと、集中的に展示されていました。
・・・どうもわたし、こういうベタなの、ダメであります。

しかし、日本では宗教施設でそこにまつわる芸術コレクションが
継続的に創作もされてきている。
風神雷神・信貴山縁起などと並ぶ、そういう国宝の名品として、
「鳥獣戯画」があると思います。
これは高山寺というお寺に納められているもの。
はじめて教科書でこの絵柄を見て、
その奔放さに驚愕した記憶が強く残っている。
国立博物館で宗教をテーマとするのであれば、
こういった、日本民族的な「猥雑感」がたっぷりとある
そういう民族性を伝える展示が欲しいなぁと強く思いました。
ただ、いまは鳥獣戯画は平成の修復を終えて
京都国立博物館・平成知新館で展示中なんだとか。
こちらは11月24日までで展示が終わるのだそうで、
残念ながら、実物を見るチャンスはなさそうです(泣)。
この写真はある美術館でカレンダーとして販売されていたもの。
マンガ表現人の端くれとしては、これを神のような存在と崇めております。
よくもまぁ、こんな表現が宗教寺院のなかで存在してきたものと
いつも崇敬の念を抱かせられる次第。 
まさに合掌、であります。

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