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自分でも建てる〜カナダの家づくり_6

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いろいろ見てきたわけですが、きょう紹介するのはカナダのホームセンター。広大な店内には「え、こんなものまであるの」っていう感じで、なんでもあります。そんななかでも日本じゃないよなぁというのが、写真左の屋根材料のコーナー。アスファルトシングルという一般的に多く使われる屋根素材です。でっかくディスプレイされている「屋根の葺き方」みたいな説明でおわかりいただけるように、建て主自身が、自分で屋根を葺くんです。その部分の労賃が安くなって、家づくりがローコストになるメリットもあるし、「ここは俺がやった」という達成感を建て主が持つことで、家への愛着が深まる、メンテナンスへの自己責任意識が高まるなどのメリットがあると思います。
いっぽう写真右側は家の塗装の塗料コーナー。塗装も建て主が自分でできる大きな工事の部分ですよね。ここではいろいろな色の塗料をブレンドしてくれて、しかもその色をコンピュータで管理していて、何年後でもおなじブレンドの色を購入できるように考えてあるんです。屋根工事とおなじようなメリットがありますね。
戦後以降、高度成長期を境として、わたしたちの社会では職業的な分業が凝り固まりすぎた部分があります。
むかしの建築・古民家などをみると、構造的な精度が大事な部分、基礎であるとか、土台・1階部分の柱・梁といった「基本構造」については大工などの専門職が多く携わっているのですが、たとえば茅で屋根を葺く、といった単純作業では素人が参加してやるのがどうも一般的だったようなんです。たとえば飛騨の合掌造りの屋根の葺き替え作業がテレビなどで放送される機会もありますから、そういう作業の様子を、見られたことがあるかも知れませんね。
ああいうのが一般的だったんですよ。
どう考えても、コスト的には合理的ですよね。
もちろんオプションではありますが、そういうのが、日本以外では現代でも家づくりのプロセスに残っているんですね。
逆に言えば、素人でもできるような工程がきちんと残されている、ということなのでしょうか。こんなかたちで自分でやる工程があれば、いやがうえでも建て主の「主体的参加意識」が、高まるのは当然ですよね。
住宅雑誌やってて、最近のユーザー意識でちょっとイヤな部分っていうのがあって、それって、いびつな権利意識に基づいて、ちょっとした不具合がすべて、なんでもかんでも欠陥住宅みたいな大騒ぎになるところ。もちろんとんでもないケースもあるわけで、全否定するわけではありませんが、やはり家づくりの本質は、他人任せではなく、「自分が建てる」という意識がしっかりあるかどうかだと思うんです。
建築中一度も建築現場を見に行くこともなく、家ができあがってから些末な点をとりあげて大騒ぎして、あわよくば値引きの材料にしようとする、なんて最低のことも散見されるんですよ。
家づくりが、商取引みたいなものだけになっちゃっている部分があるんですね。
そういうのを変えるのに、こういう建て主参加の工事って、大切ななにかを思い出させるんじゃないかと思うんです。
ハートの部分に、こういうのがちゃんと残っている家づくり文化、やっぱ自然ですよね。

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