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新潟県村上の家

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仙台から、はるばるとやって参りました、新潟県村上市。
でも緯度的には仙台と村上ほぼおなじで、ひたすら西に向かった先にあるのが村上。
約200km。
リタイヤされて、ついの住処〜すみか〜として建てられたお住まいを取材。
品のいい端正な外観たたずまいで、古くからの農家らしく、庭の植栽もみごと。
室内にはいると、縦横に走る軸組の構造がそのままあらわれています。
この構造に使われた木は、このお宅の所有される山林から切り出された木材なんだとか。
と、なにげないひとこと。
・・・はぁ〜、豊かですね〜。
自分の敷地にあった材料で、家が建てられるんですか?
聞くと、山道を作るときに必然的に伐採された木材を3年間、天日乾燥させていたのだそうです。
それを地元の製材所で木割りしてもらって使ったわけです。
精度を高めるのが大変なので、床材だけはあらたに購入されたものですが、その他、外壁から天井の仕上げ材にいたるまで、この家一軒まるごと自前。
さすが、大国新潟、奥行きを感じるお話に呆然。
新潟の農家集落って、数軒単位で集合して建てられています。
それと、屋根勾配がみなほぼいっしょ。 なもんで、きれいな統一感を感じます。
このふたつのこと、どちらも「雪国」という条件からうまれたものかなぁと思いました。
雪処理しやすい屋根角度って、おのずと経験的に定まるだろうし、また、大雪の中で隣近所、たすけあって暮らして行くには、集合形態が有益なのでは、ということ。
軒先の木に、ざくろの実、発見。
北海道人のわたし、はじめて見ました。
「すっぱくって、うまいもんじゃぁないよ」ということですが、温暖さが違うんですね。
ものなり豊かで、おおらかさと奥行きを感じる新潟での取材でした。
東北版リプランで、1〜2号以内に掲載予定です。ぜひごらんください。
きょうはこれから、朝1番の新幹線で、東京に移動。
さ、がんばりませう・・・、ふうぅ〜。

住宅性能向上と北海道

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10月のはじめにサッポロファクトリーで、「北方型住宅フェア」という催しが行われました。イベントでは、「北方型住宅」クイズ、なんてのまでやっていて、なんとわたし、引っかけ問題で無惨に脱落しちゃいました。
だって、写真にあるマスコットは、リスかどうか、なんていう問題で、正解は「エゾモモンガ」だって。
そんなの、知るわけあっか!
ってことですが、主催者の道の建築担当者もやられていました(笑)。
なんだおい、それって。まぁ、ご愛嬌だけど。あぁくやしい・・。
国の基準とはまったく別に、北海道は独自の住宅性能基準を策定しています。
「北方型住宅」というのがそれなんですね。。
厳しい風土条件、多くの先人たちの苦労の積み重ねの上、さらにこうした基準設定などで全国大手ハウスメーカーまで含め、地域に似合った性能を持つ住宅が増えてきたといえます。
北海道では戦後の田中知事の時代に「三角屋根ブロック住宅」という地域住宅運動を展開した歴史までありました。これは、断熱性や気密性の高い住宅建築を目的に、地元で大量に産出する火山灰をコンクリート成形したブロックを積み上げる高性能な企画住宅を北海道民に提供しようとした大プロジェクトだったのです。
政治家としての知事が、「日本建築学会賞」を受賞したこともあるほど。
それだけ、暖かい家というのは官民上げた北海道全体の共通問題だったのですね。
こうした北海道の取り組みは、紆余曲折を経ながらこんにちまで続いていて、その現在形態がこうしたイベントなわけ。
東北や関東以南地区の、住宅業界と行政との関わりにこういう有機的な関係は少ない。
こうした住宅性能向上にむけた運動の水準は、国全体の取り組みとはまったく違った意味で、非常に実践的で、民間の技術の底上げも誘導してきました。
こうした点が、もっとただしく評価される必要があります。
同時にそろそろ北海道という地域限定ではなく、よりひろい「寒い日本全体」への技術情報の提供、という方向性が志向されてもおかしくはないのでは、と考えます。
縮小ばかりを優先する現在の公務員制度改革に、別の視点を持つことにもつながりますね。
いいと思うんです、べつに国土交通省ばかりが全国の住宅産業を一元的に「指導・監督」しなくても。官の世界にも「競争原理」を導入して、すぐれた自治体がその枠を超えて、ひろい影響力を持つ、って、ホントの改革という気がします。
いろいろなパンフレットや資料をちょっと、手にしてみたら、みなさん、きっとびっくりします。
とくに東北以南のみなさんは、行政の偏りのない情報として、ここまでわかりやすく住宅性能を開示している、ということに驚かれることと思います。
一度ご覧ください。 道庁(建設部建築指導課)HPは、
http://www.pref.hokkaido.jp/kensetu/kn-ksido/kanri/index.html

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ウチの事務所の様子です。
出版という仕事は、やはり資料など個人ごとに多くの書棚が必要です。
それにたいして、家具などでの対応を考えたら、すごく高くつく。
また、現場造作でやってもらっても、同様に労賃が当然反映してくる。
そこで考えたのが、断熱の仕方を工夫して、外張り断熱にして、構造を内部にあらわして、この構造の柱・間柱に横に棚板を渡せば、もっとも安価に大量の書庫が造作できる、というものでした。
ポイントは棚板を受ける金物をカンタンにすませること。
わが社では、ダボ金物だけですませています。おかげでダボ金物だけで1000近い数に上りましたんで
「こんなに、ダボ金物、つけれってか!」と大工さんには、悲鳴をあげられちゃいましたけれど。
ごめんなさい。ケチでたいへんすいませんでした。
でもおかげで、ごらんのような大量の書棚が、大変ローコストに、っていうか
構造工事に毛が生えたくらいの作業手間で、完成できたんです。
基本をしっかりわきまえていれば、断熱の方法はいろいろに、デザイン要素を織り込んで選択できます。
なにごとも「ばっかり」はよくない、適材適所が一番だと思います。

本日、仙台と石巻で夫婦別々に講演

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本日、朝1で札幌から仙台へ移動。
わたしは宮城県石巻で「東北フォーラム」一般ユーザー向けセミナーの講演。カミさんは、仙台メディアテークで仙台デザインフォーラム・日本建築家協会セミナーで「建築家との家づくり」というテーマの進行役。
最近は、いろいろなところでこういう依頼があり、こちらも雑誌の宣伝にもつながるということから基本的にありがたくお受けしているので、スケジュールが重なってしまうこともあるんです。でも、今回はさすがに、先約の方にわたしが行って、あとからのほうにカミさんが行く、という綱渡りのようなことになりました。彼女はアナウンサー志望だったということもあって、けっこう話が出来るようなんです。って、心配なんで、直接わたしが聞いたことはないんですが・・・。札幌ではときどきテレビにも出演させてもらっています。 まぁ夫婦で一緒の仕事をしていて、こういうときはよかったと思えますかね。
で、本当はわたしたちふたりとも、札幌できょうはそれぞれ高校の同窓会が開かれているので、そっちも行きたかった。(カミさんはトンボ帰りで10時過ぎくらいからの2次会出ると張り切っておりました) わたしは明日以降も取材が東北・東京であるので、残念ながらそっちはパス。
北海道以外での仕事の機会が増えてくるので、スケジュール的にはきつくなってきますが、でもそういう活動が、北海道の家づくりの現在を東北以南のみなさんにお伝えできる貴重なチャンスでもありますよね。
けっこう、高断熱高気密の家づくりへの誤解や、場合によっては中傷に近いようなおかしな情報がまかり通っているのも、本州地区の住宅業界の現実。 北海道でおおくのみなさんが積み重ねてきた「高性能住宅」のそのままの姿を、もっと多くの本州地区のユーザー、建築関係のみなさんにお伝えしたいと思っています。
機会がありましたら、直接、多くのみなさんにお会いしたいですね。
<写真は、リプラン事務所のエントランスです>

iPodって、はまるね。

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出張先ではどうしても移動時間が多くなるので、最近iPodゲットしました。
iTunes Music Storeが日本でもオープンしたので、とても使いやすくなったこともありますね。 まぁ中年男って、すこし世間の流れとは遅れたタイミングで行動するものなんで、こんな時期に入手することになったのですが。
ずっと人生の時間、仕事と家族中心になって、自分自身の音楽生活なんて、ほとんど顧みる時間がなかった、っていうのが多くの同年代なんじゃないでしょうか。 わたしは完璧でして、iPodプラスiTunes Music Storeに出会って、久しぶりに「音楽を楽しむ」暮らしが戻ってきました。それもチョー快適・便利になって。
iTunes Music Storeって、左の写真が開いた状態ですが、音楽のブラウジングに使いやすさを考えた設計で、しかもワンクリックで楽曲を購入できる。って、忙しくて音楽ショップなんかにぜったい行けない中年男には福音。
音楽をデジタル化するっていうのは技術の問題だけれど、「音楽を楽しむ暮らし」をデジタル化しちゃったというマーケティング計画に拍手。やっぱAppleって、「世界を変えた」集団だと率直に思います。
だって、使いやすくコンパクトなデバイス(IPod)と、ベースになるコンピュータ、そしてソフトウェア(iTunes とiTunes Music Store)、さらに音楽業界全体をまとめられただけの企業信頼性、全部が一体となって提供されているわけなんだよね。かなわない「仕事」ぶりだなぁと。
ということはさておき、ほぼハマっておりまして、毎日1曲150円から200円というワンクリックを繰り返しております。
最新のヒットおねえさんの曲から、自分たち年代の懐かしいサウンド、クラシック・ジャズと幅広く楽しんでいます。移動というとすぐにイヤホンなので、声が大きくなったりしてまして、迷惑掛けないように注意しなきゃなりません。
うれしいなぁ、なんか時間を取り戻しつつあるっていう、不思議な感じを味わっている毎日です。

学生の匠リフォーム、工事完了

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さてこのブログでずっと紹介していた、学生の匠によるリフォームの工事も完了しました。
きのう、施工に当たった沢井建築工房・沢井さんと現地見学。
思わず、目を見張るほどにすばらしい住まいに一新していました。まずは、大変お疲れさまでした。
わたしたちのような、現場をよく見ているものが、足を踏み入れれば、だいたいの標準的な建築コストが体感的に感覚出来るのですが、ズバリ感じた工事費用は、最低2,500万円。(って、実際には約半額の予算になっているんですが)
まず、現在の基準レベルからいえば、耐震性・構造耐力・断熱・気密という基本的住宅性能の点で、既存の建物はまったくの不適格物件。とくに、鉄骨造の土台がなんと塗装だけで、外部にさらされていた、という恐ろしさ。これでは、明確に外気温を室内にヒートブリッジしてきます。
さらに、そこから立ち上がる鉄骨の柱や梁は、ボルトナットによる締め付けだけで持たせていた、というもの。だから「揺れる」んです・・・。本来であれば、外壁材もすべてはずすべきところ、構造耐力維持の点で、外壁材にもかなり依存していることが確実に推定され、外壁材をはずせば、崩壊の危険が高かった。そこで、
・・・というようなことをそのまま書き続けると、問題も出るかも知れないのでこの辺で。
解体してみてから明確に特定できた、こうした既存建物の現状に合わせて、行うべき建築的処置を不足なく行っています。 そういう性能面のケアがまずは基本。とくに床面が異常に寒かった、というオーナーの基本的な要望については、その原因の完全な特定と、この建物の条件に合致した適切な処理ができました。
デザインの面でも、学生の匠によるコンセプトを随所に活かした空間構成になっています。
とくに、写真右側の2階のインナーテラスは、さまざまな使い方を想起させてくれるユニークな空間。未来的で、北国の暮らしに大変おもしろい提案になっていると思います。
階段も、蹴込みをはずしてデザイン的に軽快感を表現して、玄関からはいってすぐ、この建物のデザインコンセプトを明確にしています。
以前のこまごまとした間取り計画は一新され、落ち着きのあるモダンデザインに。ひろびろとした伸びやかな夫婦ふたり暮らしの、ちょっと素敵な空間装置ができあがりました。
この週末、23日・24日の日月、一般公開を予定しています。
ぜひ多くのみなさん、住宅リフォームの可能性を、体験してみてください。
申し込みは、リプランの窓口、電話011-641-7855まで。
工事の様子や、入居後の様子など、またここでふれてみる予定です。きょうは取り急ぎ報告まで。

ラーメン大好き

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そろそろ寒くなってきました、さっぽろ。19日には北海道各地零下の気温が予想されています。
朝夕は一定時間、暖房も入れるようになってきています。お〜寒!
ということで、きのうは自宅で子供のリクエストに応えて特製ラーメンをつくりました。
わたしは実家がもやし製造業でして、小さいときは毎日、札幌ラーメンの草分けといえる「味の三平」の大宮守人さんがウチに、メイン食材のもやしを買いに来ていたのを対応したりしていたんです。
自動車免許を取得した学生の頃は、よくラーメン屋さんへのもやしの配達に行っておりました。
そんなことで、けっこう縁もあり、大好きです。
でも最近のさっぽろの有名店とかは、パス。 なんていうか、商売の仕方も含めて、なんもかも「濃いすぎ」。
脂ギトギトのスープ見ると、いーかげんにせーよって、思います。
確かに大宮さんは、それまでの常識的駅前ラーメンとは違って、ラードを使って栄養分のバランスを高めて、それだけで1食分になるラーメンにしたのですが、いまどきのこれでもか、というものはあきらかにおかしい。
三平さんのラーメンは、しっかりとした野菜の甘みをスープに引き出した上でのコクなので、基本的に「あっさり」していてあきがこないのがポイントだった。(しばらくご主人他界後の店には行っていませんが)
で、札幌では、自分でつくるのが一番なんです。こどもたちがうれしがってくれるのが楽しい。
ベースに使う挽肉のやわらかい風合いが、さっぽろの基本だと思うんですけどね。って、まぁいいや。好みもあるし。
いまでも行っていいなと思う店は、ほぼこの挽肉を使った店。
最近は、仙台などのほそい麺で、ごくあっさりしたシンプルな味が、好きになっています。 でもあれだと、すこしパワーが弱いのが・・・、もうすこし・・・。
先日、岩手県久慈市の近郊の大野町に昼どき移動途中、ちょっとよさげな雰囲気だった「ふるさと物産館」に立ち寄り。
そこで食べた写真の「赤鶏ラーメン」がおいしかった。600円。
三平の味の基本に近くて、大宮さんも「できれば基本で使いたかった」キャベツ・もやし・薄切り大根といった野菜がほどよく甘みを引き出し、挽肉の代わりに使っている地元の赤鶏の肉が、いいダシと食感でハーモニーしています。味付けは、すこし薄目の赤みそ仕立て。 田舎風も感じられて、センスもわるくない。
麺も最近のわたし好みの、ちょい細め。 スープの柔らかさと、いい相性で絡んでいました。
具、麺、スープと口に運ぶのに、なーんにも考えない。
一気にどんぶりが空になっちゃいました。
ごちそうさまでした。
おなかが減っていたので、つい「キビ入りおにぎり」も先に頼んでいましたが、この1杯で十分以上満足。おにぎりはラップしてあったので、そのままテイクアウトできて、無駄にもならず。そこまで考えてラップしてあったのなら、ホントすばらしいんですが、どうなのかは不明。
田舎の主婦パートさんとおぼしき店員さんたち、サービスの身ごなし、受け答えの印象のやわらかさも、合格点。
というラーメン談義でした。  きょうは住宅テーマ、すいません、おやすみ!

茶髪のわかい大工さん

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いま、わたしが住んでいるわが家は、以前は事務所兼用。
新築が1991年でしたが、仕事やスタッフが増えていくので、5年ほどで増築に踏み切りました。そのまえの外観や内部空間など、すごく好きだったのですが、仕事と家庭生活、ギリギリのなかでの選択としてやむを得ませんでした。 工事としては、地下を作ったり、そのうえに2階建ての変形スペースを増築したり、吹き抜けをつぶして床を広げたりと、とにかく仕事のスペースを確保させるのが目的。
その工事、土工事や構造工事が一段落して、木工事の仕上げ工事になって、やってきたんです。一発でそれとわかる大きな音のする車に乗った茶髪の青年が、工事現場のわが家に。 リフォームなもんですから、仕事や生活しながらの工事で近隣のみなさんへの配慮も必要。 こっちとしても、「おい、大丈夫なのか」と、気がかりだったですが、まぁ、人間、なりだけでは判断は出来ない。 って、見ていると、工事にはいるとけっこう身ごなしもよく、カンの良さそうな仕事ぶり。
施工の工務店の責任者の方に聞いたら、「わかくて、格好はどもこもならんけど、筋はいい仕事できるんですよ」という評価なんだとか。 わが家はちょっと変わった家ですから、仕事としては難しく、大工職人としての現場対応力やセンスのようなものが必要とされる工事。 どうも話しぶりから、ハラハラしながらもこの茶髪の青年の成長を期待しているんだな、って感じました。事実、ここはこうしようみたいな判断力や、仕上げの修まりが瞬間的に目にみえている様子で、作業に無駄が感じられず、仕事中は私語も少ない。
やっぱ、見かけだけじゃわかりません。
さて、工事も順調に進んで佳境になってきた、ある晴れて天気のいい朝、かれがこない。 電話連絡もない、仕事に完璧に穴が空いた。チーム制でやっている大工さんたちからすると、その日の工程の組み替えや段取りが大狂い。四苦八苦の様子でした。
で、翌朝、なにごともなさそうに明るく登場したかれ。
「すいません、きのう彼女と海、行っちゃって・・・」
「バカやろー」と、いうのも、なんか気が抜けてしまうような明るいあっけらかんぶり。 ま、しょがない、ついにやったか。みたいなヘンなあきらめも感じられて、見ているこっちも楽しく感じるやりとり。
きのうの分を取り返すからな、ということで、注意処分。
ということも折り混ざりながら、突貫工事のリフォーム工事も完成。
大工さんたちも、もう現場に来ることもありません。ようやく静かな環境が訪れたな、と思っていたある夜。
あのけたたましい音の車が家の前に停まりました。
「おう、どした?」って、ちょっとなつかしくて扉を開いたら、
「すいません、彼女に、俺のやった仕事、見させてもらっていいっすか?」
というお願いだったのです。
茶髪の青年からこんなまじめな、自分の仕事への誇りが感じられるセリフが聞けるとは、びっくり。
いっしょに海に行ってた彼女をエスコートして、おもに自分が担当した右側写真の3階を説明しながら案内してました。
「ありがとうございました」って、あの屈託のない笑顔で帰りにいわれたとき、
いいやつなんだな、って納得。
「おう、彼女とうまくやれよ」。
いまごろ、どうしているんだろうか。

アル中の電気配線工おぢさん

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ってタイトルを書いちゃうと決めつけですね。
事実は、このおぢさんの会社のかたから、そういうように、たぶん冗談交じりとは思うのですが、紹介されたからなんです。
まぁブログなんでそのあたりの真偽の解明まではご容赦いただき、おもしろそうかなぁというノリでご理解ください。
きのう書いたわが事務所の「オール電化」のデザイン表現第2弾です。
で、ご登場いただいたおぢさんは、たいへんな職人技術のまぎれもない継承者。まぁ、写真が出ているから、わかりますよね。要するに、電気配線の専門工なんです。 
ただし、体得している技術が、残念ながら時代にそぐわなくなったのです。
いまは、電気配線というのは、めったなことでは「露出配線」ということは行いません。
インテリア的に邪魔者扱いで、ほとんど壁の中で、必要なところにコンセントボックスや、照明配線として、その一部が現れるくらい。 当然の流れといえましょう。ただ、おぢさんが元気な現役バリバリだったころは、まだ電気をはじめて建物の中に入れるという、初期の電気導入期と同様の「既存建物」への配電工事という需要が存在していたのですね。そういうときには、いかに美しく配線するのか、という「職人芸」が存在していたのですよ。その仕事領域のなかで、このおぢさんは他の追随を許さない方だったということです。
が、いま、そういう需要はついにほぼ消滅。
かれを雇っている会社のなかでも、惜しいけれど腕の振るわせ用がない、戦力になっていたのです。
冗談交じりに「アル中」といって紹介されたのは、そういう背景のなかから出た言葉だったのだと思います。
さて、わたしの事務所建築では、きのうのような「レトロな時代の電気」というデザイン表現を模索していました。でも、外部のデザインで資金も底をついた。まぁ、しょがない、内部での「レトロな時代の電気」表現は、あきらめっか〜 となる寸前だったのです。 そんなときに、電気工事屋さんが、このおぢさんのことを話してくれました。
一気に、プランに灯りがともった!  そうか電気工事か。
そうです、電気の配線も露出にして、むかしの懐かしい配線を美しくみせよう、デザインにしてもらおう、となったのです。そのうえ、電気工事屋さんからは、お金は、その分のアップ分なんかはいりません、といってくれました。 「あのおぢさんに、もいっかい腕を振るわせたい」という会社の方の暖かい心くばりから出たことなんですね。 露出配線の場合は、碍子というセラミック製品が必要になります。 これもほぼ流通していない。それっ、と買い付けてもらいましたが、北海道には在庫がなくて、なんでも横浜の方から取り寄せたとか聞きました。
はじめての工事現場での打合せ。
設計事務所と、電気工事屋さん、わたしの3社打合せに来たおぢさん。
「アル中」などと聞いていたはなしとは、まったく豹変の元気の良さ。なんと工事現場の外部足場を、足取り軽やかに2階にスイスイ上ってきます。 しかも目がキラキラしている!
若い私たちの方が、あぶなっかしいくらい。
あとで聞いたら、現場が近づくにつれむかしの様子を取り戻したんだとか。
露出の配線工事って、時間がかかっても、ひとりで作業するんです。なぜかというと、スイッチとの連絡を計算しながら、仕上がりの美しさ(たわんだりせず、ピンと過不足なく整然と電線が張られる)のには、けっこう複雑な現場的計算が必要であるからなんですね。それと、はじめに決めた配線計画を途中で変更したりしないこと。こうした複雑なおぢさんの頭の中の作業マッピングが、すべて狂っちゃうんだそうです。 でもホントは、1カ所だけ、変更をお願いしました。 おぢさん、親切に「・・大丈夫です!」と言ってくれましたが、よくやってくれたものだと思っています。
時間がかかって、おぢさんに付き添っていてもなにも手出しできない電気工事屋さんのコンビを見ていて、なんともほほえましいなぁ、と思ったりしていました。
電線は、赤と白2種類を用意して、なんとなく電気が入ってくる回路と、出て行く回路、というイメージを表現しましたが、実際はそこまでの厳密性はありません。 しかし、作業が進行していくと、どんどんノリがよくなってきて、当初は壁の中での配線を予定していた場所も、「全部、露出でやってみますから」という申し出をいただいて、結局ほとんどが、美しい碍子による、露出配線となりました。
完成後、多くの北海道電力や東北電力社員のみなさんが来社されましたが、社歴の古いみなさんは一様に、感激の面持ち。 電力社員さんたちは、この露出配線工事が、仕事生活の原点のようなものだったのですね。「いやー、なつかしいなぁ」って、うっとりしたような表情で、見て行かれます。
多くの建築家のみなさんも、この電気配線にいたく感激したようで、「そうか、この手があったか」という言葉が聞かれました。最近はログハウスや、構造素地あらわしの建物も増えてきていますね。そういう建物では、ひとつのデザイン手法に取り入れられるな、ということから、くだんの電気工事屋さんに、「こんど、見積もり欲しいんだけど・・・」という注文もでたりしていました。 なんかこっちもうれしく、誇らしかったです。
いい職人仕事と出会えたら、なんか、気持ちがよくなるものです。
こんな記憶こそが、建物への愛着のよすがになるものなんだなぁって、思い至った次第。
おぢさん、ありがとう。 わが社の電気は元気いっぱい、配線のなかを走り回っていますよ。

古電柱の再生利用

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事務所は、オール電化で建てました。
設計者といっしょにそのことをどういうようにデザイン表現しようか、考えました。
内部でもいろいろなことを考えたのですが、事務所でしかもミニイベントなどの施設としても使いたいという希望もあったので、けっこうファサード表現も重要。
そこで考えついたのが、古い木製電柱の再利用。北海道電力さんに聞いたら「なんも、協力しまっせ」とありがたい言葉。
電気が果たしているやわらかく暖かな雰囲気を、古電柱を外部照明として再利用することで表現できないかと思ったわけなんです。
以前の三内丸山の話題のときにも書きましたが、日本の掘っ立て技術というのは世界有数なんだとか。実はそれ、この工事の時に、教えてもらったのです。
右側は工事途中のものですが、実物の古電柱を半分に切ってもらったものを6本立ててもらいました。いまは、コンクリートで基礎の枠を固めてから立てます。むかしは一生懸命、立てる場所の土を付き固めたんだそうですが。 
そこに立ててから、土で脇を固めて、しっかり付き固めるわけですね。いまは天圧機で作業できますが、むかしはひたすら人力での作業でしょうね。仕上げに砕石を敷いて完了。
むかし、というかいまでもどこかにはあると思いますが、街頭照明の、あのランプシェードを探してきて、ごらんのようにつけた次第。 って、これがけっこう大変だったみたいで、品番の確認からして大変だったと思います。 「え、あんなもの、何で今頃、注文すんのさぁ?」と、信じてもらえなかったのだろうと思います。
仕上げに、電線のたわみ具合にもこだわって、電気工事屋さんにお願いして、やわらかい曲線にしてもらいました。
電気が人間の社会に登場して、家に届けられるようになったレトロな時代のたたずまいを意識したデザイン。
ベースになった古電柱、表面炭化の具合もいい味わいを見せてくれています。
こんな、おかしな計画に大まじめに取り組んで、しかも笑いながらもそれぞれ真剣に、真摯に尽力していただいたみなさんに感謝しています。ちょっと大げさかなとは思うんですが、こういう職業的良心・誠実さが、地域に残していくべき「製造業」というものの一部分かと思う次第。
みなさん、どんなふうに感じられるででしょうか?