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住まいを「編む」

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写真はある古民家で見た、住まいの「編み針」。
古民家では屋根の仕上げには萱などの自然素材が使われた。
その萱などの自然繊維は、一抱え程度の束にしてあり、
それを屋根に葺いていったのですが、それらの束を固定させるために
これも自然素材の「縄」で、屋根の構造材に縛り付けていった。
こういう自然繊維素材は、内部に中空を持っていて
ちょうど現代の断熱材・グラスウールがその内部に保持する
「静止空気」をもって断熱の用を果たしているのと同様なんですね。
で、それらを室内〜外部と「縫い付ける」には、それを加工する「針」が必要。
この写真は、その針なんですね。
以前にアイヌチセの取材をしたときにも、
そういった用途を果たす用具を見ましたが、
この日本列島社会では、こうした屋根作り技術が一般的だった。
日本側では、屋根だけが茅葺きだったのですが、
アイヌ社会では、壁もこの「萱束」で構成されている。
先日見学して来た韓国の河回村でも、集落の周辺・川辺には
「茅場」と想定できるエリアが確認できましたが、
こういう建築材料が容易に得られるという条件も、
アジア全域、いや、広く普遍的に見て
人間環境選択の大きな要素だったのでしょう。
で、こうした「萱束」ワンセットを作って行くのですが、
アイヌの方に取材したところ、熟練した人で1日に完成できる束は30。
アイヌチセの場合には、壁・屋根全体で、おおむね700束ほどが必要とのこと。
チセは平屋なので、たぶん屋根の方が分量は多いくらいでしょう。
ざっと計算すると屋根には400-500束程度が必要でしょうね。
まぁ、家の大きさもいろいろあるでしょうが、一般的サイズで。
そういった萱束を、こういう縫い針で文字通り、結束させていく。
糸は、縄やなめした柔らかい木などが使われる。
アイヌの場合は、シナの木の皮が適していると聞かされました。

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で、日本民族の側では、
アイヌの壁面とは違って、床面仕上げの方が畳文化になっていく。
アイヌの側でも、ムシロ敷きが一般的だったようだし、
さらにはクマの毛皮などのすばらしい絨毯も使われていた(笑)。
ヒグマのような大型毛皮に恵まれなかった日本側では、
床も丹念に「編み上げる」文化が熟成していったのですね。
この「畳表」についても、日本各地で編む文化の違いがあるようです。
ときどき、その編み上げ方をじっくりと観察したりします。
人の足下を見させていただいている(笑)。
こういう畳文化、日本民族が大勢になった北海道で、
いまや、板敷き主流になって廃れて行っている。
なにやら住文化にも輪廻転生、通じるのかも知れませんね。

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